第37話 勇者一行のサポート再開
なんやかんやで家族ができた。
新たな拠点も手に入れた。
もともと拠点はほしいって思っていたけど……。
まさか俺の拠点が城になるとは。
いやまぁ、みんなを守りやすそうだから不満があるとかではない。
ここは居心地がとても良い。
ずっとここにいたい。
この場所を守りたい。
家族を大切にしたい。
でも、俺には家族と同じくらい大切な存在がいる。
幼馴染のルークスとレイラ。
それからアドルフとセリシアだ。
アドルフやセリシアとはまだ二年くらいの付き合いだけど、生死を共にしてきたのだからその絆は強い。俺の行動のせいで仲間から外されはしたが、あんないい奴らを魔王軍なんかに殺されたくない。
俺には彼らを陰ながら支えるという使命がある。
本当の事をいえば、この幸せ空間でずっと微睡んでいたい。そんな欲望を打ち破り、俺は身体を起こした。
「んっ。ふわぁ……。ケイト?」
俺に抱き着いていたフリーダが起きた。
眠そうに目を擦っている姿が可愛らしい。
「おはよ、フリーダ。朝だよ」
「うん、おはよう」
「もう、あさぁ?」
俺の身体の右側で寝ていたフリーダ。彼女とは反対側で俺にくっついていたクルフィンも目を覚ました。
「クルフィンもおはよー」
俺とフリーダはふたりで寝ていたはずだが、いつの間にかエルフのクルフィンがベッドに侵入してきたようだ。ちなみに侵入者は彼だけではなかった。
「ケイトさん」
「お姉ちゃん」
「「おはようございます」」
「ふたりとも、おはよ」
「お、お前たち、また……」
「「えへへっ。来ちゃった!」」
悪戯っぽく笑う双子のエルフ。
彼女らの姉であるフリーダは少し怒った素振りを見せるが、シスタとステラに抱き着かれて文句を言えなくなった。
「すまない、ケイト。また妹たちが」
「大丈夫。こうしてみんなで寝るの、俺は好きだよ」
俺とフリーダの寝室は子どもたちの部屋とは別にある。だけどほぼ毎日、子どもたちの誰かが俺たちの寝室に夜な夜なやってくるようになった。
俺の奥さんになってくれたフリーダとふたりっきりで寝たいっていう気持ちはある。でもこうして俺たちに眩しいくらいの笑顔を見せてくれる子どもたちと一緒に寝られるのも幸せ。
それに十日に一回は誰も来ない日がある。たぶんだけど、テルーとミィが止めてくれてるんだろうな。そのおかげで俺はフリーダと朝までふたりでイチャつくこともできるから、そんなに不満はない。
「さ、みんな起きるよ。今日からパパは、勇者様のお手伝いを再開します」
自分自身に言い聞かせるようにそう宣言した。
「そうか。再開するんだな……。ここ数か月、私たちのために時間を作ってくれてありがとう」
俺はしばらく勇者パーティーの支援をお休みしていた。ルークスたちがそんなに危険な場所には行っていないようだったし、出来たばかりの家族の生活を安定させたかったからだ。
子どもたちは家事を覚え、フリーダの商売の手伝いしてくれるようになった。新しく拠点となった城の庭では野菜などが育てられ、食糧庫に備蓄もある。俺がフリーダの商売を少し手伝ったら、彼女はたった一日で金貨百枚を稼いでみせた。今後我が家が資金難になることはなさそうだな。
いろんなことが順調だった。
だから俺は、勇者ルークスが魔王を倒すための手伝いを再開することにした。
「勇者様のお手伝い? それって、僕にも何かできることある?」
「ケイトさん、私たちにも」
「何か手伝えることはないですか?」
クルフィンやシスタ、ステラも手伝ってくれるらしい。きっと他の子どもたちもそうしてくれる。みんな凄くいい子たちだから。
「もちろんあるよ! みんなに手伝ってもらいたい」
危険なことをやらせるつもりはない。
子どもでもできること。
人手が必要なことをやってくれればいい。
やらなきゃいけないことは数えきれないくらいたくさんあるんだ。
「それじゃまずは、勇者様のために家族みんなで
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