第36話 城の内部紹介


 こんにちは。

 僕、クルフィン。

 エルフ族で、今年七歳になったよ。


 エルフは五歳くらいまでは人族の子どもと同じくらいの早さで成長するんだけど、それ以降の成長はすごくゆっくりなんです。


 だから身長がなかなかおっきくならないのが僕の悩み。

 

 僕とほとんど歳が変わらない羊獣人のメイちゃんは、僕よりも背が高い。今後も僕はあんまり成長できないのに、メイちゃんはどんどんおっきくなっちゃうって思うとちょっと悲しい。


 種族が違うから、仕方ないのかな……。



 ──っと。

 こんな暗い話してもつまんないね。


 楽しいことをお話しよう。


 そうだね……。

 それじゃ、僕の新しいお家。

 このお城を案内するって言うのはどうかな?


 うん、興味がある?


 オッケー!

 なら、さっそく中に入ろう。


 ちなみにこのお城の周囲には僕のママの魔具で『にんしきそがいの魔法』ってのがかけられていて、僕たち家族じゃなきゃお城を見ることもできないんだ。凄いでしょ。


 お城は周りをぐるっと高い壁で囲われてて、敷地に入るための出入り口は正門と裏口がある。他にも秘密の出入り口があるんだけど、パパに家族以外には内緒だよって言われてるから君にはまだ教えてあげられないかな。


 壁の中に入るとシスタお姉ちゃんたちが育ててる野菜の畑がある。ここでできたお野菜は僕も食べれるよ。お姉ちゃんたちが頑張って育ててくれたのだからね。


 建物の中に入るよ。


 ……どう?

 びっくりするよね。


 僕も初めて入ったとき驚いたもん。

 ほんとにここが僕たちのお家になるの!? って。


 天井にあるおっきな照明はシャンデリアって言うらしい。ロビーの床に敷かれた真っ赤な絨毯はふかふかで、靴のまんまで歩いていいのか不安になる。でもクリーンって魔法がかけられてる高級品だから、汚れることがないんだ。この絨毯の上を歩くことで、お城の内部に土とかを入れないようにしているみたい。


 だから君も、ちょっとここを歩いて。

 

 うん。ありがとね。

 

 ロビーの正面にあるお部屋は応接室って言うんだけど、パパやママはあんまりお客さんを呼ぶつもりがないらしいからほとんど使われてない。


 左右にある大きく曲がった階段を上がっていくと二階だね。向かって右側が僕たち子どもが寝るお部屋。左側にはパパとママが寝るお部屋がある。寝るとき寂しいから、みんなでパパたちのお部屋に行っちゃうこともある。パパたちはちょっと困った顔をするときもあるけど、いつも僕らと一緒に寝てくれるんだ。パパもママも、大好き!!

 

 君も家族になったら、僕らと一緒に寝ようね。


 ん? 心配なの?


 大丈夫だよ。パパはすっごく優しいし、パパが良いよって言ってくれればママも許してくれる。だからそんな不安そうな顔をしないで。


 さ、お城の案内をつづけるよー。


 ロビーの左側に進んでいくと食堂がある。ここで家族みんなが集まってご飯を食べるの。みんなで食べるごはんって、すごく良いんだよ。ママやお姉ちゃんたちが作ってくれる料理もおいしいから期待してね。


 なんだか良いにおいがする。

 ちょっと行ってみようか。



 今日の料理当番はミィお姉ちゃんみたい。

 そう、あの猫獣人の女の人だよ。


 ミィお姉ちゃんはお魚料理が多いかな。

 自分でおっきなお魚を捕まえてきて料理してる。


 あれ? もしかして君、お腹空いてる?

 そっか。ちょっと待ってね。



「あっ! クルフィン! あんた、またつまみ食いして!!」


「あははは。ごめんなさーい」


 

 少しパンをもらってきたよ。

 夕飯はまだまだ先だから。


 ん? 僕が怒られないか?

 大丈夫だよ。いつものことだから。


 このパンはママが焼いてくれたやつで、みんな大好きなの。僕もお腹空いたから、半分こで良い? うん、ありがと。それじゃこっちが君のね。



 さて、食べ終わったしお城案内の続きだよ。

 ロビーの右側に進んでいくとお風呂とか倉庫がある。


 僕はパパやテルーにぃと一緒に入ってる。

 たまにママと一緒に入ることもあるかな。


 今日は僕が君を洗ってあげるね。



「クルフィン。それ、どうしたんだ?」


「パパ!」


 振り返ると僕のパパがいた。


「この子ね、お城の外で見つけたの。ひとりみたいで……」


「拾ってきちゃったのか。翼があるし、ただのトカゲじゃなさそうだが」


 パパの後ろにママもいた。


「この子、うちで飼っていい?」


「クルフィンがちゃんと面倒を見れるならいいぞ」

「お、おい。ケイト」


「やったぁぁぁあ! パパ、ありがと!!」


 良かった。

 これで君も僕の家族だよ。


「キュイ!」



「こいつ、竜の幼体じゃないのか?」


 ママが何か言っていたけど、僕は家族になったこの子の名前を考え始めていた。

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