第10話 万能薬の入手方法


 元仲間たちのために、万能薬エリクサーを手に入れることにした。そのエルクサーを入手する方法は大きく分けて三つある。


 ①購入する

 ②エルフ族から貰う

 ③素材を集め、自分でつくる


 エルクサーは極稀に、市場に流通することがある。しかし死人を蘇生することのできる万能薬は誰しもが欲する超レアアイテムだ。貴族やどこかの国の王族が高額で購入してしまうため、一般人は入手できない。魔王討伐のために旅をしているルーカスたち勇者パーティーなら、購入のための競りに参加する機会ぐらいは与えられそうだが……。俺は今、パーティーを追放された身だ。エリクサーを購入できる見込みは限りなく低い。


 エルフ族から貰うって方法もある。世界樹と言う巨木の付近で暮らす彼らは、常に何本かのエリクサーを保有するらしい。エルフ族の願い事を叶えることで、その保有しているエリクサーをもらうことができる。俺たちのようにかつて魔王討伐の旅をしていた勇者が、その方法で万能薬を入手したというお伽話は有名だ。


 最後の手段、自分でつくる。エリクサーの作り方は世間一般的に広く知られている。ただしレシピが分かっていても、素材の入手難度が高すぎて簡単にはつくれない。命を蘇らせる薬なので、紛いもののレシピも多い。教会は本当のレシピを把握してて、聖女セリシアと旅をしていた俺は本当のレシピを知っている。



「可能性があるのはエルフから貰うか、自作するかだな」


 どちらにしても俺はエルフの国であるサンクトゥスに行く必要がある。エリクサーの素材に世界樹の葉が必要だからだ。エルフから完成品をもらえないか確認して、ダメだったときは世界樹の葉をもらえるように交渉する。


 ただエルフにとって世界樹はとても神聖なものと言われているので、もし俺には世界樹の葉もくれないってなったらどうしよう……。


「ひとりで悩んでても仕方ない。とりあえず行ってみよう」


 俺は収納魔法を展開し、それに足を踏み入れた。



 ──***──


 無事サンクトゥスに到着した。

 眼前に巨木がそびえたつ。


 あれが世界樹か。

 直接見るのは初めてだ。


 本当にこれが木なのかと信じられなくなるくらい巨大だった。その幹の下部には無数の建造物が確認できる。光が灯っているので、あそこにエルフが住んでいるのだろう。


 ちなみに俺はサンクトゥスに来たことがない。今いる場所は世界樹を一望できる小高い丘の上だが、ここもはじめて来た場所だ。そんな場所に収納魔法の特殊機能で転移できたのは、以前出会ったエルフ族の女商人のおかげだった。


 ルークスたちと旅をしていた時、エルフの女商人から何度か商品を購入したことがある。その際に俺は、収納魔法の取り出し口をこっそり彼女に設定させてもらった。いつかエルフの国サンクトゥスに来るかもしれないって思っていたから。


「あの時の判断は正解だったな」


 女エルフに設定した取り出し口を利用して千里眼を発動させ、俺は定期的に彼女の動向をチェックしていた。そして彼女がサンクトゥスに帰郷した時、俺は一瞬だけ転移を使ってこの場所に取り出し口を設定したんだ。


 千里眼で定期的に彼女のことをチェックしていたもんだから、うっかり着替えや入浴を見てしまったこともある。それについては申し訳なく思っているが……仕方ない、事故だったんだ。


 過去のことを思い出して少し興奮した。

 彼女の身体は、とても美しかった。


 人族とは異なる圧倒的な美しさ。

 整った顔に、きめ細やかな肌。


 彼女は商人だったから、馬車に乗って砂埃を浴びながら移動していた。なのに女エルフの金髪はいつもサラサラで綺麗だった。


「もう一回、会いたいな」


 千里眼を使えば今でも彼女を見ることはできる。だが正当な目的もないのにそれをやってしまうのはただの覗きな気がしていた俺は、この場所に収納魔法の取り出し口を設定して以来、彼女を千里眼で見ていない。



「おや、こんな場所に人族が来るとは」

「えっ!?」


 急に後ろから声をかけられた。

 振り返るとそこには──



「ん? もしや君は、ケイトか?」


 かつて色々とお世話になった女商人、フリーダが立っていた。 

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