第9話 対魔王戦の準備


 魔王の姿を認識したので、今できるだけの対策を準備しようと思う。


 もちろん俺が魔王を倒す準備じゃない。

 勇者ルークスに魔王を倒させる準備だ。


 魔王を倒して世界に平和をもたらすのは勇者パーティーの荷物持ちをしていた俺なんかじゃなく、神託を受けた勇者様であるべきなんだ。


 ちなみに魔王の前に倒さなきゃいけない敵がたくさんいる。魔王軍四天王は三人残ってるし、なんか四天王より上位の存在もいるらしい。だけどまた同じ夢が見られるとは限らないから、記憶が新しいうちに行動を開始した方が良いと判断した。


「よし。やろう!」



 まずは魔王の姿を思い出す。


 ゴーストみたいな不定形ではなかった。ちゃんと実体があるタイプの魔族だ。武器は聖剣の代わりとしてルークスに渡したアレで大丈夫だろう。


 それから魔王の身体サイズは人族とそんなに変わらなかったな。ただしあの姿が第一形態で、一定以上のダメージを与えたら第二形態になるってことも考えられる。


 魔王軍四天王のヴァラクザードがそうだった。

 てかお前、魔王の部下でしょ?

 中ボス的な存在が第二形態持ちとかマジでやめて。


 魔王が巨大化した時のことを考えて、大型の敵にも有効な攻撃方法を検討しておくべきだと思う。主な対象は賢者のレイラかな。彼女の攻撃魔法を強化できるような、強い杖をこっそりプレゼントしよう。


 それから魔王の覇気? 瘴気? よくわからんけど、殺気みたいなやつもヤバかった。魔王を直視できないくらいの恐怖を感じてしまう。夢の中では魔王の息子であった俺ですら身動きが取れなくなるんだ。神託を受けたルークスやレイラなら何とかなるかもしれないが、そうじゃない戦士アドルフには恐怖に耐性を得られる装備を用意してあげるべきだ。


 魔王はその背に漆黒の翼を有していた。あれが見掛け倒しでなければ、飛行能力もあるということ。賢者レイラであっても飛行魔法は使えないから、対空戦闘が可能になる装備や魔法の習得が必要になるかもしれないな。空を飛ぶ強敵を倒す手段か……。今は何も思いつかない。これは後ほど、ゆっくり考えることにしよう。


 魔王が強そうだってのは間違いない。きっとみんなが戦う時に、無傷とはいかないだろう。ということはパーティーの回復役である聖女セリシアの装備も良いモノにしておかなくてはならない。また彼女は蘇生魔法が使えるが、それは対象がひとりだけであり、蘇生させた後にセリシアは疲労で動けなくなる。複数人を同時に蘇生できるようセリシアを補助する装備や、彼女の疲労を軽減させられる魔具を渡してあげたい。


 もしくはエリクサーを──


 あっ! 

 そうだ。万能薬エリクサーを手に入れよう。


 少人数で旅を続ける過程で回復は何より重要になる。今後ルークスたちは、強敵との連戦になる可能性だってある。魔王軍四天王のヴァラクザードを倒したのだから、残りの四天王たちが報復に来てもおかしくない。


 強敵との戦闘で満身創痍になったところに、次の強敵が来たら……。


 そんな時、瞬時に身体を万全の状態に戻すことのできるエリクサーがあれば、何とかなるかもしれないんだ。


 俺が次にやるべきことが決定した。



 万能薬エリクサーを手に入れること。

 それをルークスたちに、こっそり渡すことだ。

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