ありがとう

彼女はある勘違いをしていたようだ。

彼女は彼のことを猫かぶりだととらえていなかった。

人には関心のあるふりをして、実は心の内でどうでもいいと思っている。

あたかも心配しているふりをして、実は心の内で見下している。

そんな冷めた人間だと思っていた。

いや、冷めた人間なのは自分だったのだ。

ただ、彼は自分のことを気にかけていてくれたのに。

それに気づかない自分はとんだ勘違い野郎で、

歪んだ心がまっすぐな彼の視線を受けて軋むように思われて、

自分で自分を嘲笑した。

でも、彼女はもう一つ勘違いをしていたようだ。


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彼はある勘違いをしていたようだ。

彼は彼女のことを心の弱い人だととらえていた。

人に傷つけられるのが嫌で、

自分の殻にこもっている弱い人。

でも、そんな彼女を放っておくことは自分が許せなかった。

彼女が殻にこもっているならばその殻を砕いてやろうと思った。

いや、本当に殻にこもっているのは自分だったのだ。

自分は人気者で、弱い彼女に手を差し伸べてあげることのできる、

まるで物語の主人公のような、

そんな殻をかぶっていたのだ。

少なくとも彼女は自分と接するときには自然体でいてくれた。

でも、彼女に自分の殻の中身を見られるのが怖くて、

いつか、それがばれてしまうとしても、

できればこのまま永遠に殻に閉じこもって、

自然体でいられる彼女の姿が自分の殻にひびを入れるように思われて、

自分で自分を嘲笑した。

でも、彼はもう一つ勘違いをしていたようだ。


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懐かしい学校のチャイム

彼・彼女と過ごした教室

埃の被った机

あの日の日直の札

誰かの上履き

割れたチョーク

がらんどうの教室


失ってそのありがたみに気付くとはこのことだと彼・彼女は

自分で自分を嘲笑した。

でも、彼が彼女の机に目をやると

彼女が彼の机に目をやると

そこには小さな付箋が貼ってあって


そこには、、、

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