消えた君

「おはよう。」


通学路で君は僕に挨拶をする。


「・・・。」


ごめん、まだ話す気力も湧かないよ。

緑深まる季節、他よりもひときわ輝いて見えた。

ただ、まだ現実を受け止めることのできていない自分にとって

その輝きは目の奥に突き刺さるもので、


「おはよう。」


いつものように通学路で君は僕に挨拶をする。


「・・・。」


ごめん、まだ現実を受け止めきれないんだ。

木々は赤く染まり、君の色に染まり、

ただ、いまだ現実を受け止めることのできていない自分にとって

その赤さは切ないもので、


「おはよう。」


まだ君は僕に挨拶をする。


「・・・。」


受け止めるべき現実は自分にとってあまりにも重く、

でも、目を背けることのできない現実。

泣いてばかりの僕をそっと慰めるように

冬空のもと、冷たい風と共に


「・・・。」


もう、君は僕に挨拶をしない。


「おはよう。」


だって、僕はもう受け止めたから。

君はいつだって僕の心の中に、

思い出の中に、


新緑の季節、

君の木は、うららかな春の陽気に照らし出され


・・・・・・


困ったなぁ、

もう泣かないって決めたのに。


でもこれで最後




この涙、君に捧ぐ

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