受験

成果

夏の合唱コンクール出場よりも音楽の先生になることを決めた私は伴奏、指揮の他に小論文の練習をしていた。1度全国大会が出場したからこの先は他のメンバーにチャンスを譲っていいのかとずっと葛藤していた。では今の自分の成績で合唱コンクールと勉強の両立が出来るかと聞かれると難しい。自分のため、仲間のためにも私は卒業までCチームにいることを決めた。

伴奏も指揮も人より圧倒的に経験が少ないため多く経験を積む必要があり、少しずつだが合唱は歌うだけではなくて伴奏や指揮の大切さを知ってやっているうちに楽しくなってきた。もっともっと上手くなりたい、指揮は交流館や老人ホームなどの現地に行った時にしか出来ないが伴奏の場合は音楽室のピアノや電子ピアノを家に持って帰って練習することも出来る。音楽が好きだからやれば出来るとなんとなく思っていたが勉強の小論文に関しては中々そうはいかない。

昔からだいの勉強嫌いで避けてきて中学生時代に頑張って高校に入学出来たものの中学生レベルより少し出来るレベルで残り1年しかない。小論文はホントに死にものぐるいでやらないとダメだなと感じていた。

1人で伴奏の練習をしていると河端先生が音楽室に入ってきた。

勅使河原、頑張っているな。半年前に比べたら驚くほど上手くなったな。合唱も含めてホントに音楽が好きだなっていうのが分かるよ。それで小論文の方はどうだ?

私は小論文の方は中々……。自分の考えを原稿用紙1枚に書くのがこんな大変だったとは思いませんでした。先生、何かいい方法ありませんか?

もしかしたら今もやっているかもしれないがテレビや新聞で気になるテーマを1つ決めて問題についてどう思うのか、賛否の意見、そして自分は賛否でどっちなのか側でどういう意見など書いてみてもいいかもね。前にも言ったが小論文は最低でも8割は書かなきゃいけないからね。

勅使河原、最近気になっている問題はないかあるか?

森林破壊と動物の生態ですかね?

よし、じゃあそれについて原稿用紙2枚で制限時間はこの前より少し短い40分で挑戦してみよう。

私はテーマを書いて問題にとりかかった。

まず、どうして森林破壊が起きているのかを考えた。背景としては森林を切り拓いて街を作ったり、商業施設を作って人を取り込もうとして森林破壊が加速するようになった。それによって本来二酸化炭素を吸収してくれる森林が少なくなると伴い、地球が温暖化することにより年々自然災害が増えていった。それにより北極の氷が解けてホッキョクグマの住む場所が少なくなっている。

それにより私たちが出来ることから行っていき少しでも地球温暖化についてより考えて行動していくことが必要だと考えています。

時間を終わって私は河端先生に原稿用紙を提出した。

何も知らずに書いていた時に比べたらだいぶよくなったな。でも勅使河原のいう私たちが出来ることをやって地球温暖化について行動するって具体的にどんなこと?この文章にはそこが書かれていない。

どんなことか……。当たり前のことだと思いますがゴミの分別をしたり出された料理はしっかり食べきること。バイキング形式の場所ではたべきれない量を取ること、欲張らないことだと考えます。

河端先生はたしかにそうだな。その大事なことを実行することと今回の問題がテストだった場合、勅使河原が今いったことを書かないとテストでは点数は上がるどころか下がることもあるからそれを考えて小論文を書いてみてほしい。

やることは多いが私には美乃里ちゃんや河端先生がいるから頑張れていると実感した。


共に目指すことに

私は3年生になり、同じクラスには美乃里ちゃんも一緒だった。美乃里ちゃんに進路はどうするのか尋ねるとなんと星河学園大学教育学部に進学しようと考えていた。美乃里ちゃんが傍にいて勉強が出来るなら今まで以上に勉強が捗(はかど)ると考えていた。残り1年を切って勉強に集中したいが伴奏や指揮を怠って出来なくなるようでは今までの努力が水の泡だと考えて今まで通り両立することを決めた。

美乃里ちゃんは綾咲ちゃんは音楽の先生になるために伴奏や指揮だけでなく小論文もやっていてスゴいね。私なんて教育学部を決めただけでそれ以降何も決めていないよ。

私は美乃里ちゃんは暫定で何の先生になりたいとかあるの?

国語の先生になろうかなって思うよ。理由としては他の科目には1つの決まった答えがあるけれど国語の場合は1つだけでなくて色々な角度から物事を見られるからそういった点では勉強をしていて面白いかなって思っていてね。綾咲ちゃん、私に小論文の書き方を教えてよ。

私は河端先生の聞いたことをそのまま伝えるような感じで伝えて授業後に2人で小論文の書く練習をしていた。美乃里ちゃんの解答を見ると始めて書いたとは思えないほど文章がまとまっていてとてもわかりやすい。同じ土俵に立ってどちらか1人と言われ場合負けてしまうと実感し、私も頑張らなきゃと思わされた。

受験までお互いに頑張ろうと励ましあっていた。

私は電車に乗るため駅に向かっていると莉沙からラインが届いた。

綾咲は進路どうする予定?

私は星河学園大学教育学部に行きたいと考えているよ。莉沙はどうしているの?

今は星河学園大学教育学部で久しぶりに杜端に戻ってきている感じだよ。今まで都会のごちゃごちゃした感じで教育学部に行くなら自然豊かな所がいいなと思っていて調べたら星河学園大学杜端キャンパスだった感じかな。来年一緒になれるといいね。分からないことあったらいつでも電話でもラインでもいいからしてきてね。

私はうん、ありがとうと返信すると電車が入ってきた。

自分が望んで進学したとはいえ片道1時間かけて通うのは3年経っても大変だなと思っていた。唯一の救いは杜端駅も学園前駅も終始発いうことだ。半年間で指揮、伴奏、小論文とやることが沢山あって寝る時間は電車の中で寝るという習慣となっていた。たまに終点であることを気がつかなった場合は起こしてくれるのでホントにありがたいなと感じていた。

杜端駅に着いて定期券を通して家に帰ろうとするとそこには莉沙がいた。綾咲、会うの久しぶりだね。全国大会見に行って星河学園高校に綾咲がいなかったけれどどうして?

私、音楽の先生になりたいと思っていたけれど指揮も出来ないし伴奏も出来なかったから全国大会を目指すよりも地域の交流館や老人ホームで指揮をしたり、伴奏する経験を積もうと思っていてね。仮に困らないくらい出来ていたら合唱コンクールで全国大会を目指していたと思うよ。後は推薦入試を受けようと考えているから小論文の練習も併せてやっているよ。音楽は好きだからどうにかしようってなるけれど昔からだいの勉強嫌いで避けてきたから小論文書くのがホントに大変で……。

綾咲、頑張っているね。小論文で困っているならいつでも言って。私がお題出してそれについて答えて添削しようか?

莉沙は杜端小学校にいた河端先生って覚えている?

うん、覚えているよ。河端先生がどうしたの?

今ね、その河端先生が星河学園高校にいて指揮や伴奏、小論文について見てもらっているよ。莉沙の迷惑にならない程度でいいからお題と添削お願いしてもいいかな?

もちろんだよ。かわいい後輩が困っているならいつだって手伝うよ。また合否が分かったら教えてね。

家に着いて莉沙からラインが届いた。

「日本で結婚出来るのは男性満18歳以上、女性満16歳以上だが男女共に満18歳にするべきか、それとも現状のままでいいか。どちらか選びあなたの考えを解答せよ」

中々難しいお題が届いてよく成人式で幼稚園児くらいの子どもを連れてくる人もいるとニュースで見たことがある。どちらがいいか考えたこともなかった。

私としては結婚は男女共に満18歳以上にするべきだと考える。なぜならば男女で差を作ってはならないからだ。

賛成理由として今までは満16歳で結婚出来たが途中で妊娠が分かった場合、基本的に学校を辞めるのは女子学生で学歴が中学卒業でその後が大変で公平性が保たれない。

反対理由として今まで16歳で結婚出来たのにも関わらず法改正することにより高校には進学せずに家庭に入ることを決めているのにそれが認められず、年上の人と永遠の愛を誓っているのにすぐに結婚することは出来ない。

従って私は男女の結婚は満18歳以上の結婚するべきで男女で学力の差を作らず、その上で要項に高校卒業後に婚姻を認めるなどを加えた方がいいと考える。私はラインで送信した。

しばらくすると莉沙から短い文章でしっかり自分の意見が書けているね。賛成反対の理由も書いてあるし後は時間と分量だけかな。そこをクリア出来れば問題ないと思うよ。

私は莉沙にそこが難しくてね。同じことを河端先生にも言われたけれど時間内に書くようにと再三言われていてね。

別の日、私は莉沙に再び出会って最近出来た洋菓子屋行ったことある?そこのシュークリームがホントに美味しくて。

洋菓子屋?何か最近出来たみたいだけど家と学校の往復でどこも寄っていないから行ったことないよ。そんなに美味しいのなら私も行ってみようかな。私は莉沙と共に洋菓子屋に行くことにした。

すると莉沙はシュークリームをご馳走してくれてとても美味しく、クリームも多くもなく少なくもなくでとても食べやすい。今度美乃里ちゃんにも教えてあげようと考えていた。

美乃里ちゃんも小論文で困っていると言っていたため莉沙から送られてきたテーマを送信した。

美乃里ちゃんは時間はどれくらいかと聞かれ、私は1時間と伝えた。

1時間後、テーマについての解答が返ってきて読んでみると私よりも長くてこと細く説明されていた。やはり国語の先生を目指すだけあって誰が読んでも分かりやすくかつ分量も私とは歴然の差がある。美乃里ちゃんからこんな感じでどうかと聞かれ、私では判断出来ないからと文章を莉沙に送信して添削してもらうことにした。

莉沙からは特に直すところなしと返信が来たため、私も美乃里ちゃんにそのまま返信した。

半年間、必死に小論文をやって来た私と数回しかやっていない美乃里ちゃんでこんなにも違うのか。改めて小論文の回数をもっとこなさなきゃいけないと感じた。

この夏に行われる合唱コンクールは私と美乃里ちゃんは出場せず、受験に向けて小論文や面接に向けて練習をしていた。

夏休みはいつも通り交流館や老人ホームの訪問で伴奏や指揮をして終わったら学校に戻り小論文の練習をしていたがその他にも面接の練習も始めた。

私と美乃里ちゃんはお互いに面接官と受験者と分けて練習して受け答えをして受験当日まで行っていた。


受験

私は推薦で星河学園大学教育学部1本、美乃里ちゃんら同じく推薦で受けつつも他の学校と併願受験をすると伝えられた。

美乃里ちゃんは賢いからスゴいなと思いつつも今日ばかりは他人のことを考えてなどいられない。美乃里ちゃんは併願だが、私は推薦1本だから落ちたら一般受験しなくてはならずそれでは受かる確率は低い。小論文では私でも解ける問題が来ますようにと祈っていた。

私の戦いが始まった。

小論文の問題は「地球温暖化と生態系に関して自分の考えを800文字以内で書くように」

これは前に河端先生と一緒にやった問題だ、やったと心の中でガッツポーズをしていた。試験時間は1時間の予定だが半分の30分で終わり誤字脱字が綿密に確認をしていた。小論文のテストが終わり背伸びをしているとふとこれで終わりじゃない。まだ面接が残っていると気を緩めずにいた。

面接の順番が周ってきて高校時代に何をしてきたか、大学を卒業後にどんな先生になりたいのか面接で聞かれてハキハキと答えることが出来た。私はやっと肩の重荷がおりたような感じでこのまま1人で帰るのもなと思い美乃里ちゃんと一緒に考えた。

私は美乃里ちゃんにラインをして近くにある食堂で待っていると伝えた。5分後、美乃里ちゃんがやって来た。

杜端駅で前に莉沙と会って美味しいシュークリームを売っている洋菓子屋を紹介してもらったけれど今から一緒に行かない?

美乃里ちゃんは目を輝かせて行きたいと言っていて星河駅から杜端駅に向かった。駅を降りると行列が出来ていてなんだろうとスマホで行列の方角を調べると洋菓子屋店で私たちも行列に並ぶことにした。行列に並ぶこと30分、やっと中に入れた。

行列の理由はこの日限定のハート型のイチゴシュークリームが販売されていて私たちもハート型のシュークリームを買うことにした。

私と美乃里ちゃんはハート型のシュークリームなんてかわいいねとスマホで写真を撮影して小論文と面接の手応えについて話をしていた。

後日、私の元に合格通知が届いて美乃里ちゃんにラインすると私も星河学園大学教育学部に合格したよ。併願の学校受けるけれどあまり自信ないからとりあえず合格通知が来てよかった。また併願の方の結果も伝えるねと返信が来た。

美乃里ちゃんに続いて莉沙にも合格通知を報告した。

綾咲おめでとう。何か分からないことがあれば何でも相談してきてね。今、合唱サークル入っているからよかったら入ってくれると嬉しいな。

私はサークルについてはまた考えることにするよ。それよりも残り少ない高校生活を謳歌しようかなと思っているよ。

莉沙はそうだよね、冬の合唱コンクールとか色々あるし高校生活を楽しむようにねと返信が来た。

翌日、学校に行き合唱部のメンバーや河端先生にその旨を伝えるとお疲れ様、おめでとうございますとみんなが祝ってくれた。これで合唱に集中出来るし、後は伴奏や指揮のレベルを上げるだけだった。

後日、美乃里ちゃんは併願している別の大学を受けたと知らされて残念なことに併願の方は不合格という結果だと知らされた。

私と美乃里ちゃんの進路先は星河学園大学教育学部に進路先が決まった。

私は大学では1人ではなく同級生に美乃里ちゃん、先輩に莉沙と心強い味方がいると思うと嬉しいなと思った。

私は美乃里ちゃんと合格祝いをしようと計画していた。美乃里ちゃんはどこに行きたいかなとラインで聞いてみた。

するといつものお肉屋さんのコロッケと前に行った洋菓子屋に行きたいということになり、行先は決まった。

部活帰りにお肉屋さんに行って店員さんに私と美乃里ちゃん、来春から星河学園大学教育学部の進学が決まりましたと報告した。

すると店員さんから少しばかりの気持ちとして私たちに牛肉コロッケ、メンチカツ、カニクリームコロッケ、かぼちゃコロッケをそれぞれ渡してくれた。

私は料金はいくらになりますか?

いつもなら600円だけど今日は2人の合格祝いでタダであげるよ。こんなことくらいしか2人にお祝いしてあげられないからね。

美乃里ちゃんは笑顔でありがとうございますと受け取ってその様子を見て私も笑顔で受け取った。

コロッケを食べて電車に乗って杜端駅に向かい、洋菓子屋でシュークリームを食べて帰って行った。


最後の合唱コンクール

受験が終わった私と美乃里ちゃんは冬の合唱コンクールに向けて練習していた。私としてはこれまで通りCチームで星河学園高校合唱部での生活を終えると考えていた。

部長から私と美乃里ちゃんは呼ばれた。

最後の合唱コンクールだけどAチームに入って2人に伴奏と指揮をお願いしたいけれどどうかな?

私と美乃里ちゃんはお互いに顔を見合っていた。

美乃里ちゃんは部長に私たちでいいの?

部長からはAチームにいる下級生には説明するから2人には結果はどうであれ合唱コンクールに参加して欲しい。

私と美乃里ちゃんは合唱コンクールに参加することを表明した。

そして私と美乃里ちゃんはどちらが伴奏して指揮をするか話し合っていた。私はどっちも出来るから綾咲ちゃんどっちがやりたいとかある?

私は伴奏したいと伝えて美乃里ちゃんに指揮をお願いをした。

練習で伴奏勅使河原綾咲、指揮谷川美乃里で挑むことを決めて部長や部員には伴奏や指揮に何かあれば遠慮なく言って欲しいとお願いをした。

受験間近の時はピアノを触っていなくてちゃんと伴奏を弾けるか心配だったが、指揮には美乃里ちゃんがいる。美乃里ちゃんを信じて弾いていた。

伴奏をしていると部長は手を叩いた。私はヤバい、間違えたかなとドキッとしたが綾咲と美乃里の息が合っているのに歌う方が息があっていない。最初からやり直し。綾咲、最初から弾いて。

私は始めから弾き始めた。歌うことも楽しいが伴奏しているのも楽しい。指揮は自分のタイミングで伴奏や歌う人たちをコントロールすることが出来る。泣いても笑っても最後の合唱コンクールでは結果を求めつつもみんなでひとつになって楽しめたらいいなと思っていた。

そう考えているうちに地区大会が行われた。

星河学園高校は金賞で危なげなく近畿大会出場を決め、莉沙に時間があれぼ近畿大会に見に行って欲しいとラインで送った。莉沙からはもちろんだよ。全国大会出場するところをこの目で見届けるよ。

翌週、近畿大会が行われて私たち星河学園は金賞を勝ち取って全国大会出場を決めた、私の伴奏でまさか全国大会出場を決めるとは思わなかった。いや、私の伴奏というよりも美乃里ちゃんの指揮がよかったから、そしてそれに従って歌っていたみんなの力ではないか。伴奏の私を気持ちよく弾かせてくれたのは他でもない美乃里ちゃんだと考えていた。

私は美乃里ちゃんと共に帰ろうとしていると莉沙が外で待っていた。2人ともお疲れ様、この後時間ある?私と美乃里ちゃんは時間と答えた。

莉沙は私たちを近くにあるカフェに行こうと誘ってくれてついて行った。今日は私がご馳走するから好きな物何でも食べていいよ。

莉沙、ありがとう。じゃあ私はバナナパフェにするけれど美乃里ちゃんはどうする?私は抹茶パフェにしようかな。莉沙さんはどうされますか?私はバニラパフェにしようかなとそれぞれ注文した。

3人でスリーショットとパフェの写真を撮って食べていた。すると莉沙は綾咲、伴奏上手いね。

美乃里ちゃんはそうなんです。受験で中々ピアノを触れない期間があったのにも関わらずそれを感じさせないような弾きでスゴいなと思っています。

私は仮に上手く弾けているならば美乃里ちゃんの指揮のおかげだよ。今日もみんなが楽しそうに歌っていたし私も気持ちよく弾かせて美乃里ちゃんのおかげだよ。ありがとうございます。

莉沙は今年の全国大会ってどこで行われるの?

美乃里ちゃんは今年は滋賀で行われます。杜端の沿線にあるホールで行われるので来てください。

私は全国大会で莉沙に恥ずかしくない音楽を届けなくてはならないと思っていた。

年末に行われた全国大会で演奏前に集められた。部長から3年生に取っては泣いても笑ってもこれが最後の合唱コンクールなので結果も大事だけどとにかく今日は楽しみましょう。その後1人ずつ一言いって士気を上げて臨むことになった。

私たちの順番が周ってきて私は最後の演奏を楽しく弾いた。私がここにいるのは美乃里ちゃんがいて導かれるように伴奏してみんなが歌った結果だと思っている。そして演奏を終えた。

最後の合唱コンクールで私たち星河学園高校は金賞を獲得してみんなで抱き合った。私は美乃里ちゃんがいたからここまで来れました。楽しく伴奏をさせてもらったのは指揮者谷川美乃里という人がいたからだよと泣きながら手を握った。

部長からみんなこの後打ち上げやろうとホールの近くにあるファミレスに向かいみんなで全国大会金賞を祝っていた。そして3年生は合唱部を引退となる。

私は美乃里ちゃんをお肉屋さんに誘った。理由としては3年間という短い間だったが美味しいコロッケを提供してくれた店員さんにどうしてもお礼が言いたいから。

美乃里ちゃんは快くいいよと言ってくれてお肉屋さんに向かった。私と美乃里ちゃんはコロッケを注文した。

私は店員さんに3年間美味しいコロッケを作って下さりありがとうございます。お世話になりました。今春から星河学園大学教育学部で滋賀県の杜端の方に行きます。

綾咲ちゃん、おめでとうございます。そんな寂しいこと言わないでくれよ。また近くに立ち寄ったらいつでもここに来てまたウチのコロッケ食べに来て欲しいな。美乃里ちゃんと2人で食べに来てね。


卒業間近の依頼

私は合唱部を引退して遊びに行きたい、オシャレもしたいなと思っていたがそれよりも今まで通り伴奏や指揮の練習をしたいと考えていた。

2月のある日、私は系列の中学校にある合唱部顧問ほ先生からスマホに連絡が来た。私は電話に出ると卒業生を送る会で指揮をやっていた子が急遽転校することになって合唱部の中から選ぼうと思いましたがどうも上手くいかず、系列校である星河学園高校に問い合わせしたら勅使河原さんという方がいいと聞いてお電話させてもらいました。急なお願いですが引き受けてもらいますか?

私はいきなりそんなことを言われてもと考えたが将来の夢は音楽の先生になることでそれも指揮の経験を積みたいと考えていたのでまさに渡りに船のような状況である。しばらく考えた上でそのお話引き受けます。いつから行ったらよろしいですか?

先生は出来れば今日からお願いします。

分かりました。授業後、音楽室に伺わせていただきます。私を指名したのは誰なのか考えたがまぁいいかと深く考えていなかった。

授業後に同じ構内にある星河学園中学校の音楽室に向かった。すみません遅くなりました星河学園高校の勅使河原綾咲です宜しくお願いします。

中学生からは拍手がおきてまるで私を待っていましたかのように出迎えてくれた。まず私は伴奏の子と挨拶をして楽譜を一通り読んでいた。

じゃあまずやってみましょうと指揮を振った。名門星河学園高校の系列だけあってレベルが高いなと感じていた。1曲終わり、顧問の先生に指揮はどうか尋ねた。

それは判断するのは私ではなくて生徒たちですよ。そう言われて歌っている生徒たちに指揮はどうだったか尋ねると歌いやすかった、伴奏が弾きやすかったとお世辞でも嬉しいことを言ってくれた。

この日の練習を終えて私は楽譜を2つもらってこれからは中学校に行こうかなと考えていた。

翌日から私は美乃里ちゃんを連れて音楽室の裏でお弁当を食べて終わった後に1つを美乃里ちゃんに渡して指揮を振って歌ってもらった。私はその都度美乃里ちゃんにどうか聞くと歌うだけじゃあ判断出来ないから伴奏を弾きながら歌うからもう1回お願いと頼まれた。

美乃里ちゃんはピアノに座って私は指揮を振った。

指揮を振りながら美乃里ちゃんを見て伴奏を弾きながら歌っているのに全くブレずに歌えていることに驚いた。やっぱりこの子スゴいな。私じゃなくて美乃里ちゃんを中学校に行ってもらった方がいいのではないかと考えていた。

美乃里ちゃん、私の代わりに中学校行ってもらえないかな?その方が中学校の先生や生徒もやりやすいと思うよ。

綾咲ちゃん、どうしてそんなこと言うの?言うべきかどうか迷ったけれど恩師でもある星河学園中学校の先生から今回の依頼を受けて私でもいいかなって思ったけれど綾咲ちゃんが音楽の先生になりたいこと、指揮や伴奏を頑張って練習していることを知っていたから推薦しておいたよ。勝手に連絡先を教えちゃったことに関してはゴメンね。

私はこの時なぜこの話が突然舞い込んで来たのかやっと理由が分かった。連絡先を教えるならば予め教えて欲しかったがそれよりも母校のかわいい後輩が困っているならば自分が行くべきところを敢えて私を推してくれて紹介してくれたことに感謝して全うする必要があるなと感じた。

授業後に中学校に行って顧問の先生に改めて美乃里ちゃんから話を聞きました、ありがとうございますと伝えた。先生からは礼を言うのはこちらの方です、突然だったのに引き受けてくれてありがとうございます。生徒たちも楽しそうに出来ているみたいなので私も嬉しいです。

卒業生を送る会まで私と星河学園中学校合唱部は一体となって頑張っていた。

毎日中学生と練習しているのが私も楽しく、生徒たちは綾咲お姉ちゃんと慕ってくれてその姿がホント愛おしくかわいくて仕方がなかった。先生になったらこんな風にかわいい生徒たちと触れ合って楽しい生活を送れるのかなと考えていた。

2月末、先に私たち星河学園高校の卒業式が行われてあっという間の3年間だったなと余韻(よいん)に浸っていた。みんなはそのまま帰るが私は中学校に向かった。

音楽室に入るとクラッカーが鳴った。綾咲お姉ちゃん高校卒業おめでとうございますと花束をもらった。それだけでも嬉しいが黒板を見ると私の似顔絵が描かれていて本人よりもかわいく描いてくれて思わずスマホで写真を撮った。

しばらく涙を流して練習どころではなかったので1度水道の蛇口で顔を洗って目薬をさして再び音楽室に戻って練習を行った。やはり何度聞いても綺麗な歌声で上手くて圧倒されていてこの中から何人かは星河学園高校に入って全国大会を目指すのかと1人で考えていた。

練習後、スマホを顧問の先生に渡して生徒みんなと写真を撮った。あともう1つ先生に質問した。

私、今春から星河学園大学教育学部に進学して音楽先生を目指そうと考えていますが先生になるにあたって必要なことはどういったことでしょうか?

顧問の先生は生徒に寄り添うことだよ。それは合唱部に来て練習をしているうちに出来ていると思うから心配しなくてもいいよ。後は生徒たちがかわいいからって甘やかしすぎないことかな。いいことをしたら褒める、間違えたことをしたら叱ることだよ。

私はありがとうございますと花束を持って家に帰った。

月日が流れて卒業を送る会当日を迎えた。私は指揮を振って伴奏の子が一生懸命弾いて歌う子たちが心を込めて歌った合唱は見ている人の心に届くもので卒業生だけでなく顧問の先生や他の先生たちも涙を流して1曲が終わった。これで終わるのがなんだが寂しい気持ちがしたが責務を終えた気がしてホットした気持ちだった。みんなで音楽室に行くと何故か私はみんなに胴上げの他に1人ずつ手紙を受け取ると涙が込み上げてきた。すると顧問の先生から是非とも終業式の日も来て指揮をお願いされて雰囲気に流されて引き受けた。

終業式も指揮を振ってホントの高校生活を終えた。

私のことを必要としてくれる人がこんなにもいてくれる事に関してスゴく嬉しいなと感じていた。

大学に入学してもどこかで音楽の依頼が来たら今回のように引き受けたらまた喜んでくれる人がいるのかとワクワクしていた。

卒業式後にお肉屋さんに行ってコロッケを注文した。綾咲ちゃん、卒業式終わってまで来てくれてホントにありがとう。美乃里ちゃんと綾咲ちゃんの美味しそうな顔を見るとこっちも癒されていたから中々来てもらえないと思うとちょっと寂しくなるな。大学の友達とか連れて来てもらえると嬉しいけどねと笑っていた。

私は最後に店員さんと写真を撮ってまた来ますと手を振って杜端に帰って行った。

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