星河学園高校
また2人で
私は周りの人たちがいたおかげで何とか総合政策コースに入学する事が出来た。
家から学校まで片道1時間で終始発で慣れるまで大変だろうなと感じていた。
勉強するのに必死すぎて私立だから制服がどうこうなと考えていなかったが改めて見ると星河というだけあって水色のセーラー服やスカートには星がいたるところに散りばめられていてホントにかわいい。推薦の話をもらった後に勉強しなかったら学力不足で入学出来ず他の学校に行っていたお思うとゾッとする。全く勉強の出来なかった私に根気よく教えてくれた莉沙、未菜ちゃん、琴波ちゃんの3人がいなかったら間違いなくここにいなかった。
総合政策コースでの最初の授業は主に中学校の復習がメインで小学校、中学校時代と違い全く分からず授業を受けていた時とは違って今は面白いように授業が分かる。テストが楽しみだなと思う日が来るとは考えてもいなかった。
授業後、合唱部に行くために音楽室に向かった。まさかそこである人と再開するとは思わなかった。
綾咲ちゃん〜、久しぶり。星河高校に入ったならせめてラインで教えてよ〜。
私のことを綾咲ちゃんと呼ぶ京都にいる同級生は美乃里ちゃんしかいない。そう思い振り向くと美乃里ちゃんで私は忙しくて返信出来なくてゴメンね。美乃里ちゃんってどこのクラスなの?
美乃里は総合政策コースで1年3組だよ。綾咲ちゃんは?
私は同じく総合政策コース1年2組だよ。隣のクラスだとは思いもしなかった。でもさ、小学生時代美乃里ちゃんって賢かった記憶あるけれどどうしてまた総合政策コースなの?
美乃里はそんな賢くないよ。たしかにスポーツ・文化コースの偏差値をちょっと超えているから受けてもよかったけれど併願で受験するとお金もかかるしギリギリのところで受験するくらいなら確実に合格する総合政策コースにしようかなって思ってね。綾咲ちゃんは滋賀からまた京都の星河学園に来たの?
2年生の冬に星河学園高校の先生から推薦入試を受けませんかって言われたけれど当時は小学校の問題もまともに解けない状況でこれではダメだと思って莉沙や友達に教えてもらってやっと総合政策コースの推薦入試で受験出来るレベルまでいって何とか合格出来たよ。勉強を教えて貰っていなかったら私はどうなっていたのかと考えると怖くて想像も出来ないよ。
そっか、理由はどうであれまた綾咲ちゃんと同じ学校で同じ合唱部の仲間として活動出来ることは嬉しいよ。杜端に帰ってってなると時間かかるけれど学校帰りにどこか行けたり出来たらいいな。
私は笑顔でそうだね、この辺の土地勘ないから美乃里ちゃん色々と教えてよ。
綾咲ちゃん、任せておいて欲しいと練習に向かった。
部活が終わり美乃里ちゃんが声をかけてきた。
学校近くにあるお肉屋さんのコロッケが絶品だけど食べに行かない?
星河駅から杜端駅まで電車で1時間、家に着く頃にはお腹が鳴って家に帰ることもあり、学校の近くなら1度行ってみようと思い美乃里ちゃん連れて行って。
美乃里ちゃんはお肉屋さんに連れて行ってくれた。
ここのお肉屋さんは全国各地からお肉を仕入れていてコロッケでも何種類もあって食べていて飽きないよ。私はお肉屋さんのコロッケがまずい訳が無いと勝手に決めつけてコロッケを1つ注文した。
ある程度美味しいとは思っていたが私が想像していた以上に美味しくてこれがお肉屋さんのコロッケなのか通いたくなる味だねと美乃里ちゃんと話していた。美味しすぎてメンチカツをもう1つ注文した。
店員さんからお姉ちゃん食べっぷりがいいね、そうやって美味しそうな顔を見るとお店をしている方としてはとても嬉しいよ。
その言葉を聞いて私もこのお店を通おうと思った。
中間テスト
私は総合政策コースで始めてのテストを受けた。授業でここが出るよと先生が言っていたこともあり、中学生時代とは違ってテストの問題がすらすらと解けて楽しかった。実は私が寝ていただけで中学生時代もこうやって先生がここの問題が出るよと教えてくれていたのかもと考えられる程余裕があった。
中間テストが終わって掲示板に貼り出されている成績を見ると最下位じゃない、それも下からではなく上から数えた方が早い。あまりにも驚き、過去の自分が見たらカンニングしたと勘違いをするほどだった。そして1位は美乃里ちゃんで満点という成績で元々スポーツ・文化コースの偏差値を超えるぐらいだから1位になっても何も驚かなかった。
私は美乃里ちゃんと共に音楽室に入って名門星河学園高校合唱部の門出を切った。
まず1つ、今までと大きく異なることがあってそれは中学時代に近畿大会や全国大会で名を馳せた学校の選手が沢山いて部員も1学年20人を超える人数を数える程で全国大会高校生合唱コンクールの舞台に立つにはハードルが高い。今まで以上に本腰を入れて合唱に力を入れないと予選すら出場することは厳しいと感じていた。
高校も合唱に捧げることを誓った。しかし小学校や中学校時代とは違い全く勉強が出来ずに合唱に捧げるのとある程度勉強が分かっている状況では状況が全く違う。いい意味でも悪い意味でも総合政策コースに進学してよかった。
部活後に私は美乃里ちゃんにカフェに行こうよと誘った。だが何も知らないので場所は美乃里ちゃんに委ねるしかなかった。美乃里ちゃんは誘うなら調べてから誘ってよと笑いながらいいつつも星河駅の近くにあるカフェに向かった。
私は美乃里ちゃんにこんな大人数の合唱部に入るの始めて。部内競争に勝てるか不安だなと明かした。
すると美乃里ちゃんはそれは私も不安だよ。だからといってこのまま埋もれる訳にはいかない。私は将来オペラ歌手になりたい。そしてその夢の途中で綾咲ちゃんと一緒に部員競争に勝って一緒に全国大会高校生合唱コンクールで金賞を取るのがいまの目標かな。勝手に目標決めてゴメンね。
その話を聞いて私と一緒にって言ってくれて嬉しい。厳しい戦いになると思うけれど1年生から2人とも上級生に割って入って全国大会出ようと2人で話し合っていた。
その前に自分がどうすれば合唱コンクールのメンバーに入れるのか、入れたとしてもみんながみんなその舞台に出られるのか考えていた。
新入生歓迎会
星河学園合唱部の方針として主に全国大会のコンクールに出場するAチーム、吹奏楽部と帯同して運動部の応援するBチーム、そして学校見学会や地域貢献で 老人ホームや小学校に出向いて歌うCチームと分かれている。それは全部員の競争意識を高めるのもあるがコンクールに出場出来ない部員が多くいるためにモチベーションを下げないために誰にでも上にいけるチャンスがあるというシステムになっている。
私と美乃里ちゃんはまずCチームからのスタートで新入生なのにも関わらず新入生歓迎会に向けて練習していた。私たちはまず星河学園高校の校歌と誰もが知るようなポップスを歌って披露することになった。
1つ疑問に思った。私は推薦や特待生で入部した生徒だけでも数十人いるのにも関わらずそうではない生徒が果たして何人入ってくるのだろうか。私たち新入生の披露することに必要はあると思うがこれ以上入部させる必要があるのかなと感じていた。
新入生歓迎会が終わり、週末に私たちは町内のイベント行われてそこで交流館に集まり歌うと盛大な拍手をもらってとても嬉しかった。コンクールで金賞を取るのが目標だが、合唱の原点である人の心に感動を与えられるのはこういった地元の人に歌を届けて相手に感動させることも必要だなと感じた。人数が多いからこそAチームの合唱コンクールを目指すところから地域貢献として地域の人に歌を届けるために3チームに分けて行う星河学園合唱部のやり方には素晴らしいと実感した。
帰りに私は美乃里ちゃんと交流館の近くにある商店街に立ち寄って食べ歩きをしていた。美乃里はここの商店街はカニクリームコロッケが美味しいよ。
私はそれならばとカニクリームコロッケを食べることにした。中はサクッとクリームの量も多すぎずとても食べやすく今度来た時には別の物を食べようと考えていた。
私は美乃里ちゃんに星河学園中学校合唱部ってどんな感じで活動していた?
どんな感じね……。星河学園高校のやり方と同じだよ。Aチーム、Bチーム、Cチームと分かれていてコンクールに出場するメンバーから今日の私たちのように交流館で歌うCチームまであって今までそれが当たり前だと思っていたよ。綾咲ちゃんは違う?
私は杜端小学校だったり中学校も1学年の人数が少なくその中でコンクールで歌う部員を決めていたから最後の冬でも出場出来ない人もいて心苦しかった。特に中学2年生の冬はこれから後輩たちの経験を積ませるために前部長の莉沙から3年生は全員出ないことで一致したと言われた時はホントにそれでいいのだろうかと葛藤していたよ。その冬に行われた合唱コンクールの近畿大会で星河学園高校の先生に声をかけてもらったって感じかな。
美乃里は綾咲ちゃんも大変だったね。とはいえ2年生の冬に声がかかるってだいぶ早いね。私なんてエスカレーター式で上がったけれど話が来たのは夏のコンクールが終わってからだよ。
美乃里ちゃん、次はBチームに上がってAチームに上がろう。今は基礎をしっかりやって上のチームでもやっていけるってことを証明しようよ、
2人で次のステップに進もうとしていた。
春季大会
5月に行われる野球部の春季高等学校野球京都府大会出場することが決まり、その話は私たち合唱部にも話が来てそれに伴いCチームとBチームの入れ替えが行われて私と美乃里ちゃんはBチーム昇格となり、Bチームにいた同じ1年生がCチームに降格となった。
私はこの部内で3チームに分けて昇降することは決して悪いものではないと思っていた。昇格したら嬉しいし、目標である合唱コンクールの舞台に立てるし降格となったら悔しい思いはするが合唱の原点ともいえる人々に感動させることを改めて感じさせるという気持ちにもなる。何よりも全部員が何かしらの場所で歌うことは練習してきたことが生かされる。
改めて中学の時から星河学園に行ってもよかったのではないかなとすら思っていた。
野手部の大会が行われて私たち合唱部は吹奏楽部帯同し、チアリーディング部の姿もあって精一杯応援を行った。1回戦、2回戦と順当に勝ち上がり決勝まで勝ち上がった。決勝戦も危なげなく優勝を果たして夏の大会に行われる府大会において第1シードを取ることが出来た。
私たちの応援のおかげで優勝することが出来て野球の知らない私と美乃里ちゃんは感動のあまり涙を流していた。これから他の部活でも応援に行って勝利に貢献出来たらいいなと考えていた。
夏の合唱コンクール
私と美乃里ちゃんはAチームに昇格し、1年生だが合唱コンクールに出場する可能性が出てきた。2人でAチームに入れて嬉しいがまだ出場が決まった訳ではなくメンバー登録されるまで気が抜けない。気持ちの部分ではしんどいがAチームにいる上級生もみんな合唱コンクールに出場したい気持ちは変わりなく、1年生でそこに割って入るとなると大変だがチャンスがないわけではないとモチベーションを上げていた。私と美乃里ちゃんはコンクールに出場するという思いで必死に練習していた。
7月のある日、メンバー発表がされて私と美乃里ちゃんは1年生で合唱コンクールのメンバーに選ばれて安堵は思いでいた。合唱コンクールに出るからにはまず地区大会、そして近畿大会、全国大会で金賞を取るのが目標だが上ばかり見つめていると足をすくわれてしまうのでまずは地区大会を勝ち上がることを考えていた。
夏休みになり、地区大会は1位で危なげなく近畿大会に出場した。私は未菜ちゃんと琴波ちゃんに近畿大会出場を決めたことを伝えると2人とも地区大会で勝ち上がることは出来なかったから星河学園高校の応援に行くとラインが届いた。
私は2人とも悔しい思いをしているのにも関わらず私たちの応援に来てくれるってありがたいな。近畿大会を勝ち上がることはもちろんのこと、応援に来てくれる未菜ちゃんや琴波ちゃんのためにも全国大会出場を決めてお礼を言いたい。そして会場に足を運びに来てくれた人たちに気持ちを届けたいと思っていた。
星河学園は近畿大会で1位となり、全国大会出場を決めた。私はふと東京にいる莉沙のことを思い出してまた会えるかもしれないと胸を膨らませていた。
莉沙にラインで全国大会出場を決めたことを伝えると私たちも全国大会出場を決めたから終わってから久しぶりに会おうということになった。
この年、全国大会は私たち京都府代表星河学園高校の地元京都で行われることになった。私は小学生、中学生時代は莉沙がいて連れてきてもらった立場だったが今回は自分のおかげだけではないがみんなで力を合わせてこの舞台に立つことになる。全国各地から集まった精鋭が集まる中、特に莉沙の京町高校には負けたいないという思いは人一倍あった。
私たち星河学園高校は1番最後の順番で他の学校を聞いた上で最後に歌うことになる。嬉しいような緊張するような複雑な気持ちで私は足が震えていた。
美乃里ちゃんは私の手を握って綾咲ちゃん緊張している?大丈夫、私たちが今までやってきたことを出し切れば歌う順番なんて関係ない。いい緊張感をもって舞台に挑もう。
その言葉を聞いて私は1年生でAチームに入れたこと、ホントなら他の先輩や同級生が立ちたいと必死にやってきたことを考えると自分のため、そしてみんなのために恥ずかしくないよう歌わなくてはならないと振り切って最後の順番が周ってきて歌いきった。後は結果を待つだけだと客席に座っていた。
東京都代表 京町高校 銀賞
京都府代表 星河学園高校 金賞
この言葉を聞いて私は美乃里ちゃんに抱きついた。部長は盾を受け取って帰ろうとしていた。
綾咲、久しぶり。おめでとうと声をかけてきた。
莉沙、ありがとう。あ、美乃里久しぶりだね。私のこと覚えている?
美乃里は莉沙のこと覚えていますよ。この後どうされる予定ですか?
夏休みで京都まで来たからみんなで観光しようと2泊3日でみんなホテルに戻るだけだから綾咲に京都を案内してもらおうかなって。
私、京都のこと詳しくないよ。だから美乃里ちゃん一緒に来てもらえるかな?
美乃里ちゃんからいいけれど、最初から私を頼りにしているなら予め莉沙さんとあって京都を巡るから空けて欲しいって連絡してよ。もし時間がなくて案内出来ないって答えたらどうするつもりだったの?
私はその時はその時でスマホで調べて行くつもりだったよ。スマホで調べていくっていうとある程度メジャーなところばかりになるから美乃里ちゃんなら隠れた名店とか地元民しか知らない名所とか知っているかなって、
美乃里はそういうことね。私も久しぶりに莉沙さんに会えたし3人でどこか行こうよ。
私と美乃里ちゃんは部長に頼み先に帰って3人で出かけることにした。
3人で会場を出て、電車に乗って京都の街並みを歩いていた。駅近くに浴衣レンタルして歩くというのがあり、私と美乃里ちゃん、莉沙はせっかくなら浴衣着ようという話になった。私はレモン色、美乃里ちゃんは赤色、莉沙は水色の浴衣を着てスマホをスタッフさんに渡して3人で写真を撮った。しばらく歩いていると甘味処があり、京都は抹茶が有名だと美乃里ちゃんがいうと抹茶あんみつを頼み、3人で今に至る経緯について話していた。
莉沙は綾咲が推薦とはいえホントに星河学園高校入学出来るとは思わなかったよ。学力だけでいったら小学生と変わらない、いやそれよりも劣るくらいだったのに1年という短い期間でよく学力を伸ばしたと思うよ。
私は自分1人だったらここにはいないよ。莉沙や未菜ちゃん、琴波ちゃんが勉強が出来ない私を見捨てず根気よく教えてくれたおかげだよ。感謝してもしきれないよ、莉沙ありがとう。
かわいい後輩が高校に行けるかどうかかかっているなら少しでも協力したいなと思っただけだよ。実際に推薦入試の試験を受けたのは私じゃなくて綾咲でしよ。よく頑張ったね。それで今は勉強で困っていない?
私はうん、今ところ大丈夫だよ。今通っている総合政策コースは主に中学校の復習をメインにやっていてそれにプラスアルファでやっている感じだからそこまで苦にしていることはないよ。
莉沙はそれならよかった。美乃里はどういう経緯で星河学園に?
美乃里は小学生の時に中学受験して高校はエスカレーター式でスポーツ・文化コースでも偏差値的にはギリギリ足りるくらいだったからそれならムリに攻めるよりも確実に受かる綾咲ちゃんと同じ総合政策コースにいる感じです。莉沙さんが元気そうでよかったです。
莉沙は美乃里、敬語じゃなくてタメ口でいいよ。歳も1つしか変わらないしそっちの方が親近感湧くからさ。偉そうにする様な人はよくないと思うからさ。
美乃里はそういうことならタメ口で話すことにして莉沙と連絡先を交換してまた会いましょうとこの日は解散した。
久しぶりの再会
私は夏の合唱コンクールが終わり、次は冬の合唱コンクールに向けて練習をしていたがAチームにはいたがメンバーには選ばれずサポートに接していたが近畿大会大会では4位で夏冬連続の合唱コンクール出場とはならなかった。ずっとAチームにいられたことは嬉しく、今の位置をキープすることがいかに大変なのかと改めて気がついた。
2年生になる前の春、特待生で入学予定の新入部員がやってきてどうなるのか不安を感じていた。そして2年生に上がれば推薦入試で入ってくるメンバーも入部するのか、どんな逸材が入って来ても先輩風を吹かせずちゃんとお姉ちゃんとしてやっていかないとって感じていた。
始業式の日にある先生が赴任してきた。
「今年度から音楽の先生を担当していただく河端先生です」
この河端先生に見覚えがある。そう、私が小学生時代に一緒にファストフードに行って帰りに家まで送り届けてくれた河端先生に間違いない。
私は河端先生が再びまた会えるとは思ってもいなかったしきっと私は恨まれているに違いないと授業後、美乃里ちゃんと共に音楽室に向かっていた。
河端先生は勅使河原、ちょっと話がある。すぐに終わるからちょっといいか?
私は美乃里ちゃんに音楽室先に行くように伝えた。
河端先生、お久しぶりです。名前を聞いた時にまさかと思っていましたが先生になられてよかったと思いましたがまさかこの星河学園高校に赴任されるとは思いませんでした。その節はすみませんでした。
河端先生はどうして勅使河原が謝るの?被害者である勅使河原が
遅ばせながらあの時は助けてくれてホントにありがとう。合唱部で頑張っているみたいだね。部活行っていいよ、また何かあったらその時呼ぶからさ。
河端先生は怒るどころか感謝の言葉をくれてホントはあの後、保健室登校していて辛かったことは話さないでおこうと決めた。
部活が終わったあとに私は美乃里ちゃんに進路はどうするのか尋ねた。
私は特にこれをいってやりたいことがないから大学に進学しようと思うけれど綾咲ちゃんはどうする予定?
まだ何も決めてなくて……。美乃里ちゃんは決めたのかなって聞きたくてさ。
美乃里はそういうことね。まだ2年生の春だから今すぐ急いで決める必要はないと思うよ。その話を聞いて合唱のことしか考えていなかったためこれからのことを何も考えていなかったと改めて感じた。
1枚のパンフレット
6月になり、2度目の合唱コンクールに向けて私は練習をしていた。ある日、日直で職員室に行くと河端先生が事務仕事をしていた。そこにあるものが目に入った。河端先生の机に置いてあるパンフレットって何ですか?
勅使河原、これは来春から出来る星河学園大学教育学部のパンフレットが届いてな。勅使河原興味あるなら1枚渡すけれどどうする?
河端先生、今の私でも星河学園大学教育学部に受験出来ると思われますか?
まだ開校していないから偏差値が出ているわけじゃないから一概にどうこう言えないかな。もし受験するなら勉強を教えるぞ。
私は総合政策コースで偏差値が高いわけではないが今からでも間に合うだろうか。仮に教育学部に行くとしてもその先に何の先生になるのか、そもそも人に教えられるものなんて音楽以外あるのかとここはそんなにも悩まなかった。だが音楽の先生になるといって何も問題がないわけではない。私は主に合唱をメインにやっているが伴奏を含めて楽器をやってこなかったためまるっきり出来ない。ホントにこんな状況で音楽の先生を目指せるのか不安でしかなかった。
私は部活の練習を終えて1人で伴奏を弾く練習をしていた。すると河端先生が音楽室にやって来て今日はもう遅いから帰るように。部活終わった後、短い間だが伴奏の練習をしようと言ってくれた。
私は河端先生とともに伴奏の練習を始めたがそんなにすぐに出来るとは思っていなかったがどれだけやっても上手くいかない。こんな状況で果たして出来るのだうかと感じていた。
勅使河原、投げやりにならずに根気よくすれば出来るよ。俺も最初から伴奏が弾けた訳じゃなくて何度も何度もやってそのうちに感覚を掴んで出来るようになったからその感覚を掴めるようになるまで練習をしよう。困ったら俺でも合唱部の人に手伝ってもらえばいい。自分1人でやろうとしたら出来ないことも周りに頼ってお願いしてやれば出来ることが1つずつ増えていくからな。勅使河原には大事な仲間が沢山いることを忘れないように。
今まで私は出来ないことから逃げてきたが音楽の先生になろうと思ったら0からだが伴奏を弾けるようにならないと思って頑張ろうと思った。
私に出来ること
Aチームにいる私はこれからの進路も含めてどうしようかと悩んでいた。合唱部に入ったのは合唱コンクールを目指す為でもあるしそれを求められて推薦してもらい入学したこともあり自ら合唱コンクールに出ないという選択肢は取りたくなかった。しかし今は全くピアノを弾けなく、音楽の先生にはなれないとなるとホントに路頭に迷うことになる。私は腹をくくり、部長にAチームからCチームにして欲しいと志願した。
理由を問われると私は音楽の先生になりたいがピアノを全く弾けなく、人前で披露したことないためCチームで交流館や老人ホーム等で経験を積みたいと考えています。そのことは美乃里ちゃんにも伝えた。
綾咲ちゃんスゴいね。将来目指すものがあって今出来ないから練習してってことなんて私には出来ないよ。何かあれば手伝うから何でも言ってね。
私は美乃里ちゃんと河端先生という2人がいてとても心強いなと感じていた。
Cチームに志願した私は交流館にあるピアノ、老人ホームでは電子ピアノを持ち込み伴奏を持ち込みまずは慣れることをしていた。その他にも練習中にはCチームのリーダーに相談すると指揮をかって出てリーダーと共に指揮の振りの練習をしていた。
練習では伴奏や指揮は上手く出来るけれど交流館や老人ホームでは中々上手くいかない。ホントにこんな状態で音楽の先生が務まるのだろうか、そう考えていた。
綾咲ちゃん、困った時には私に言ってよ。廊下で河端先生とばったり会ったから一緒に練習しよう。
私は河端先生の教えのもと伴奏を弾いて美乃里ちゃんが歌う。河端先生の伴奏に合わせて指揮を振って美乃里ちゃんに歌ってもらう練習を行っていて夜も遅いからとこの日は練習を終えて河端先生からある提案がされた。
土日に勅使河原と谷川はコンクールや交流館、老人ホームで終わったあとに学校に戻ってくるように。3人で練習をしよう。勅使河原に出来ることは何でもやろうかなって思っているよ。まだ1年少しあるから伴奏や指揮も含めて頑張っていこうな。勉強の方は大丈夫か?
私は中学生レベルなのでまず受験出来るだけの学力を付ける必要があると思います。美乃里ちゃんや河端先生が私のために練習に付き合ってくれていますがそもそも勉強で星河学園大学教育学部に合格しないことには元も子もないので。
勅使河原、数年経って考え方が変わったね。小学生の時は勉強でも分からない所が分からないという感じだったけれど今は自分の学力がどれくらいでどうしたらいいのかっていうのをちゃんと客観視出来てるね。科目の多い一般受験ではなく、科目の少ない推薦入試で受けてみるのはどうだ?俺も星河学園高校に来たばかり系列の星河学園大学の推薦入試でとんなテストが出るのか、それとも面接だけなのかまだ分からないから調べてみるわ。勉強が必要ならば科目を絞ってやる方が大学に合格する確率は上がるよ。決めるのは勅使河原自身だけどね。
私は高校2年生の夏に星河学園大学教育学部の推薦入試を受けることを決めた。
対策
夏休みになり、午前中に合唱部の練習して午後に残って私は美乃里ちゃんと河端先生の3人で練習する日々が過ぎていた。
今年度行われる星河学園大学教育学部の受験に必要なのは面接と小論文と記載されていた。
面接は高校時代に何をしてきたのか喋ればいいが小論文という言葉に聞き覚えがない。どうやって書いたらいいのか分からない。私が受験する時にも小論文が出るかも知れないから練習しておかないと。分からないのならば聞くしかないと河端先生に聞いてみた。
すみません、小論文ってどうやって書いたらよろしいですか?
すると河端先生は原稿用紙を1枚取り出した。
テーマ「エネルギーと地球環境問題について」
勅使河原、この問題を原稿用紙に書くように。時間は60分、タイマー設定しておくから。
私は小論文の書き方を何も教わらずいきなり書かせるってどうなのかなと思いつつも原稿用紙を書き進めていた。だが自分の考えがまとまらず時間だけが過ぎていくような感じでタイマーが鳴った。
私は河端先生に提出すると愕然とされた。勅使河原、分からないにしてもせめて原稿用紙の半分は書かないと。これじゃあダメだな。実際のテストでは最低でも8割は埋めなきゃダメだぞ。ある程度自分の意見をまとめて書いていかなきゃあっという間に時間は過ぎちゃうからな。
私、こんな感じで小論文書けるようになりますか?
今は書けなくてもいい。実際のテストで小論文として何を聞かれていて何を答えなきゃいけないかってことが大事だからね。
小論文、面接の練習、伴奏、指揮とやることが沢山あると思うけれど俺が勅使河原にしてあげられることは何でもするからな。
私は過去にあんなことがあったのにも関わらずまた同じようなことになるかもしれないのに私に接してくれる河端先生はホントに信頼出来るし、今度こそ何かあった時に疑われないようにしていかないようにしようと考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます