イケナイ恋

中学校

3校合同

杜端小学校、金川小学校、道谷小学校の3校が集まり杜端中学校に入学することになる。山奥にある中学校のために自宅から徒歩で30分を超える生徒はバス登校が許されている。このバスは民間のバスで杜端中学校のためにあるというよりも誰でも使えるものであくまても途中のバス停近くに杜端中学校がある。中学校入学前に申請をすればバスの定期券の一部を補助が出るため遠くから通おうとしている生徒にとっては有難い制度といえる。

私は家から杜端中学校から徒歩で15分なのでこの制度は使うことが出来なかった。晴れの日は自転車で通い雨の日は徒歩で行こうと考えていた。

入学式、クラスに行くと杜端小学校の人がいたらいいなと考えていたが周りには誰もいなかった。やはり3校の中で1番人の少ない杜端小学校だが、1クラスで何人くらいいてもいいのに誰もいないっていうのは逆にスゴかった。また1から友達を作らなきゃいけないことに不安と期待でいっぱいだった。

入学式が終わった後、1年3組のクラスに戻ると1人の生徒が私に声をかけてきた。勅使河原綾咲ちゃんだよねとポニーテールをした女の子が声をかけてきた。

私はこの時あのニュースのことについて聞かれると思った。イヤだなと思いつつ自分でまいた種だから仕方ないと覚悟していた。

うん、勅使河原は私だけどどうしたの？

私のこと覚えているかな？金川小学校で合唱部に入っていた鮎河未菜（あゆかわみな）だけど仲良くして欲しいな。

私はうん、いいよ。未菜ちゃん宜しくね。合唱部に入るの？

未菜は第1希望は合唱部だけど色々と見て決めようかな。綾咲ちゃんは何部に入るの？

私は合唱部しか考えていないけれど他に何部入るか考えようと思うから未菜ちゃん、部活一緒に周らない？

綾咲ちゃんがそう言ってくれてよかった。部活を周るにしても1人だと心細かったから綾咲ちゃんがいてくれてホント嬉しいよ。

私は同じ小学校から一緒の人いなくて友達が出来るか心配だったから未菜ちゃんから声をかけてきてくれて寧（むし）ろ嬉しかったよ。友達なんて言っちゃったけれど烏滸（おこ）がましかったかな？

とんてもない、綾咲ちゃんは友達だよ。

私は入学式初日に未菜ちゃんという友達が出来たが美乃里ちゃんの時みたいにいつ転校してもいいような心構えだけはしておこうと考えていた。

体験入部

私と未菜ちゃんは2人で第1希望の合唱部見学に行った。そこには杜端小学校で部長をしていた莉沙さんがいた。

綾咲ちゃん久しぶりだね、隣はお友達？

金川小学校出身の鮎河未菜ちゃんで合唱部に入っていて全国小学校合唱コンクールにもメンバーとして出場していたみたいです。

未菜は綾咲ちゃん、この方は？

紹介するね。杜端小学校で部長をされていた福満莉沙さんで私が5年生の時に事情があって保健室登校していて合唱部により戻してくれた恩人だよ。何があったかはまた後日話すけれど莉沙さんは頼りになるから困ったらなんでも相談するといいよ。

莉沙はちょっと綾咲ちゃん、そんなに持ち上げても何も出てこないよ。でもあの時は俯（うつむ）いた顔をしていて正直話しかけない方がいいのかなって思っていたけれどみんなが綾咲は合唱部の仲間だから少しでもいいから顔を出して欲しいって当時は言っていたから声をかけた感じだよ。迷惑だった？

私はそんな事ないよ。あの時に声をかけてくれなかったら今でも保健室登校しているしこうやって未菜ちゃんに出会えなかったから感謝しかないよ。

体験入部が終わり3人で話をしていた。

私は未菜ちゃんに明日は何部見に行く？

未菜は吹奏楽部行くにしても何か楽器が出来る訳じゃないし手先が器用かといわれると不器用だからパソコン部や家庭科部は難しいかな。そうなると他に見に行く部活あるのかな……。

文化部何があるか莉沙さんに聞いておけばよかったね。とりあえず明日また考えようとこの日は決めずにお互い家に帰っていった。

翌日、未菜は綾咲ちゃん今日は華道部に行ってみようよ。その次の日は茶道部って考えているけれどどうかな？

私はいいと思うよ。華道部や茶道部出来るか心配だけど出来たらカッコイイよね。向いてる向いていないあると思うけれどこの2日見てだね。

この日は華道部、翌日茶道部に体験入部をしてみて私と未菜ちゃんは顔を見合った。何か言うわけではないがなんとなく何を言いたいか汲（く）み取ることが出来た。

どちらが先に「合唱部入ろう」

この言葉を言うのかと私は少し待っていると未菜ちゃんは躊躇（ためら）っていたため私が切り出した。

未菜ちゃん、一緒に合唱部に入らない？

すると未菜は笑顔で宜しくね。私から言うべきなのか綾咲ちゃんから誘ってもらうの待つべきなのかずっと考えていたからさ。私には合唱しかないからさ、

それを言ったら私もそうだよ。未菜ちゃんと一緒に合唱部入ることが出来て嬉しいよ。他に金川小学校の子で合唱部入りたいって言っている子いないの？

未菜は金川小学校出身の合唱部の子は中学では別の部活やってみたいという子が多くいるから何人入ってくるか分からないな。とりあえず声はかけてみるけれど。

私は未菜ちゃんという友達は出来たものの早めにもっと沢山の友達を増やしておかないと小学生時代の二の舞になると考えていた。中学生の間に多くの友達を作ることを目標とした。

私は美乃里ちゃんの時みたいに未菜ちゃんの家に行けるような関係になれたらいいなと思っていておそるおそる聞いてみた。

ねぇ未菜ちゃん、今度お家に遊びに行ってもいい？

未菜ちゃんは微笑みもちろんだよ。ウチに来ても特にすることないから一緒にどこか行かない？

まさかお家にいくを超えて外で遊びに行く？これは友達ってことなのかと自問自答していた。

綾咲ちゃん深刻な顔をしているけど何かあった？

未菜ちゃん単刀直入に聞くけれど私たち友達だよね？

何言っているの？当然だよ。友達じゃない人と一緒に部活を周ろうなんて言わないよ。もしかしてそれって私の早とちりだったりした？そうだったらゴメンね。

そんなことないよ。ただ同級生の女の子が5年生になる前に転校してそれ以来いなくてどうなのかなって思っただけだよ。どうなのかなって思っただけだよ。私は未菜ちゃんのこと友達だと思っているよ。

それならよかった。今度バスで山を下った所にアミューズメント施設出来たみたいだから今度の土曜日一緒に行かない？

私は何時にどこで待ち合わせする？

とりあえず杜端バス停に午前9時にしよう。

こうして私は未菜ちゃんと出かける約束をした。

土曜日、私は青色のワンピースを着て集合場所の杜端バス停に向かった。

綾咲ちゃんおはよう。そのワンピースかわいいね。

未菜ちゃんの着ている白のセットアップもかわいいよ。バス来たからこれに乗ろう。

そして2人でバスに乗って山を下って麓（ふもと）のバス停で下りてアミューズメント施設に歩いて行った。

そこではボーリング、カラオケをしてお昼になると近くのカフェに行って未菜ちゃんのスマホで2ショットを撮って私は携帯を持っていなかったため、パソコンのアドレスを教えておくってもらうことにした。お昼ご飯を食べる前にボーリング場の近くにプリクラがあったことを思い出した。

未菜ちゃん、よかったら一緒にプリクラ撮らない？

うん、いいよ。じゃあ戻って2人でプリクラ撮ろうかといってプリクラを撮って加工しすぎて自分が自分じゃないような感じがしていた。そしてもう1回ボーリングをして陽が傾き始めてそろそろ帰ろうとなって再び杜端バス停に戻っていった。

未菜ちゃん、今日は楽しい1日だったよ。これからも友達でいてね。こちらこそ楽しかったよ。綾咲ちゃんとずっと仲良くしてねと話し合っていた。今度お家に行かせてもらうねとバイバイした。

合唱部入部

私と未菜ちゃんはまだ体験入部期間だが合唱部にいて3年生が部長を務めて2年生が副部長を務める形を取っており杜端小学校の合唱部に似たシステムを取っているなと感じていた。

1回終わる度に副部長からどこがよくてどこが悪いか指摘していた。では副部長お願いします。

莉沙さんは一礼してみんな声は出ているけれど音程がまだバラバラだから指揮者を見て合わせるようにと挨拶した。

私は話を聞きつつ副部長って莉沙さんってスゴいな。ということは次期部長候補なのかなと感じてい て私は部活が終わった後に莉沙さんに声をかけた。

莉沙さんお疲れ様です、副部長ってスゴいですね。

綾咲ちゃんありがとう。副部長としてまだまだだけど先輩たちも優しくしてくれてとてもやりやすいよ。2人も副部長ここはそうじゃなくてここはそうじゃないですよとかあれば遠慮なく言ってね。それ以外にも話があればいつでも聞くよ。

未菜はありがとうございます。歌のこと、それ以外でも困ったことあれば頼りにさせてもらいます。

お互いに紹介

部活が休みの日、私は未菜ちゃんの家に行った。

未菜ちゃんのお母さんに初めまして勅使河原綾咲と言います。未菜ちゃんとは同じクラスで同じ合唱部に入ろうと話し合っていていつも仲良くさせてもらっています。

未菜ちゃんに案内されて部屋に行ってクッキーとリンゴジュースを飲みつつ少女マンガを読んで過ごしていた。陽が傾き私はそろそろ帰ろうと思うからまた明日学校で会おうね、今度私の家にも来てね。

未菜はじゃあ部活が次の練習の日に行くねと私は家に帰っていった。

3日後、練習が休みの日に未菜ちゃんが声をかけてきて今日綾咲ちゃんの家に行ってもいいかな？

うん、いいよ。勉強分からないところあるから教えて欲しいな。

未菜は私が分かるところなら教えてあげるよ。そうはいっても勉強が自信あるかっていわれたら自信ないけれどね。

授業が終わってそのまま私の家に向かった。

未菜ちゃんは自転車を押しながら私の家に案内をして帰宅した。

ママ、帰ったよ〜。綾咲おかえり〜。

初めまして金川小学校出身の鮎河未菜です、宜しくお願いします。綾咲ちゃんとは同じクラスで合唱部として仲良くさせてもらっています。

綾咲、友達が出来てよかったね。

私もホントにそれは思うな。もし未菜ちゃんが声をかけてきてくれなかったら小学校の時みたいにひとりぼっちだったかも知れないと思うとね。中学生になったから迷惑をかけないようにするね。

ママは何かあったら言いなよ。バパやママはいつでも綾咲の味方だよ。

じゃあ未菜ちゃんに勉強教えてもらうから自分の部屋に行くね。2人で私の部屋に向かった。

全教科苦手だかその中でも苦手な数学を教えてもらいノートを見させてもらった。

未菜ちゃんのノートを見させてもらうと真ん中に線を引いてあり公式と答えを別々に書いてありとても分かりやすかった。自分のノートと見比べてきっと未菜ちゃんは勉強が出来る子だなと勝手に思っていた。すぐに中間テストがやってくる。

教えてもらっているのにも関わらず私のお腹が鳴った。勉強を開始してから2時間が経っていて未菜もお腹が鳴り、たしかにちょっと小腹が空いたね。

ちょっと待っていて何か軽く食べられるものあるか見てくるねと私は部屋を出た。

数分後、部屋に戻ってきて今家に軽く食べられるものないから何か食べに行かない？

うん、いいよ。じゃあ山の麓（ふもと）にあるファストフードに行こうよ。

2人で自転車に乗ってファストフード店に向かった。

私はあの事件以来久しぶりにファストフード店に行くなと考えつつ自転車を漕いでいた。

ファストフードに着くと混雑していて私はチーズバーガー、未菜ちゃんは野菜バーガーをそれぞれ注文して席を見渡すと1箇所しか空いておらず必然的にその場所に座ることになった。

私は席に座るって外の景色を見ると数年前のことを思い出した。それは河端先生と来た時も同じ席に座って話してたな。そう考えたら涙が出てきた。

未菜は綾咲ちゃん泣いているけれど何かあった？

私は未菜ちゃんに話すかどうか躊躇（ためら）いがあったが話すことにした。

私が小学校4年生の時、いつも一緒にいる友達が引越しで京都に転校しちゃって友達がいなくなってさ。そして5年生にの時に合唱部に入っていて部活に熱中しているその一方で勉強が全くといっていい程出来なくて部活が終わった後に顧問の先生に教えてもらってさ。それである日、今日の未菜ちゃんのように勉強を教えてもらっているのにも関わらず私のお腹が鳴ってここのファストフード店に連れてきてもらってちょうどこの席に座ってハンバーガーをたべたよ。帰りに家まで送り届けてもらったけれどそれが夕刊に載って次の日の朝刊やテレビに出て顧問の先生は起訴されて裁判を受けることになってね。信頼していた先生なのに私のせいで先生を辞めることになってホントに申し訳ない気がして保健室登校することになったよ。

綾咲ちゃん、辛かったね。でも話だけ聞いているとその先生が誘ってファストフード店に行ったのならそこまで負い目を感じる必要ないと思うよ。

たしかに誘ってくれたのは先生だけれどそこで断って私1人でファストフード店に行っていたらこんなことにはならなかったからさ。事情聴取とか色々されて顧問の先生を軽い刑にして欲しい。情状酌量（じょうじょうしゃくりょう）にして欲しいと必死にお願いしたら懲役3年、執行猶予（しっこうゆうよ）2年でその間は教員免許の更新は出来ないことになっていてね。

でもさ、その顧問の先生は綾咲ちゃんに感謝していると思うよ。情状酌量（じょうじょうしゃくりょう）を求めなかったら教員免許を剥奪されていたかも知れないけれどそうならなかったのは綾咲ちゃんの必死の訴えが通じたからだよ。

保健室の先生や莉沙さんも同じこと言っていたな。ずっと傍にいた友達がいなくなって頼れる人がいなくて顧問の先生に助けを求めたのが良くなかったなって今考えれば思うよ。そこで莉沙さんが合唱部に戻ってきなって言ってくれて戻るとみんなが心配していてくれてそれからは合唱部の人たちや莉沙さんに頼ろう。心を開いていなかったのは周りじゃなくて自分だと改めて気がついてね。保健室登校していたけれど徐々にクラスメイトの助けもあって普通にみんなと授業を受けて給食を食べ、部活に行くということが出来たよ。長々と喋ってゴメンね。

未菜は今の話を聞いて尚更私に何でも相談して欲しいな。まぁ頼りになるならない別にして。

私は未菜ちゃんに頼ることも多いと思うけれど宜しくね。他にも仲のいい子がいてくれたら紹介して欲しいな。

金川小学校の合唱部だった子を今度紹介するね。

私は未菜ちゃんの他の友達も欲しいと考えていた。

未菜ちゃんの紹介

翌日、私は未菜ちゃんと一緒に他のクラスに向かった。1組に行ってある名前を呼んだ。

琴波〜、ちょっと来てくれる？

どうしたの未菜？あれっ、隣の子初めましての感じがしない。どこかであったことありますか？

未菜は全国小学校合唱コンクールで2年連続の滋賀県予選を通過した杜端小学校の勅使河原綾咲ちゃんだよ。綾咲ちゃんが友達を紹介して欲しいって言われたから琴波を紹介しようと思ってね。

なるほどね。改めまして国友琴波（くにともことは）です。宜しくお願いします。

琴波ちゃんは端正な顔立ちでショートカットがとても綺麗で同じ女の子として憧れがあった。

こちらこそ初めまして勅使河原綾咲です。一様杜端小学校合唱部では部長を務めていました。

琴波は私に聞いた。綾咲ちゃんはどうしてお友達を増やそうと思ったの？

未菜は琴波に友達を増やすことは悪くないことでしょ？3人で仲良くしようよ。

琴波はそうだね。聞かれたくないこととかもあるだろうしいきなり心を開くなんて難しいもんね。

私は琴波ちゃんにも仲良くなったら包み隠さず言おうかなって思うよ。ことはちゃんってどういう字を書くの？

「音楽の琴に電波の波だよ」

私は琴波ちゃんってかわいい響きなのに字もかわいいね。名前負けしていないと思うよ。

逆に琴波も綾咲ちゃんって珍しくてかわいい名前だね。どういう字を書くの？

「綾織の綾に咲き誇るの咲だよ｣

かわいい漢字だねと私と琴波ちゃんは仲良くなった。すると未菜ちゃんは拗ねていた。

私は琴波や綾咲ちゃんみたいにかわいい名前でも漢字でもなくてゴメンなさいね。

琴波は何拗ねているの？未菜だってかわいい名前だしかわいい漢字だよ。もうすぐ授業始まるからもういいかな？

私は琴波ちゃんゴメンね。聞きたいことあるけれどまた後で聞きに来てもいいかな？

琴波は是非是非来て。1人の友達として宜しくね。

私は授業を受けて再び琴波ちゃんのもとにやって来た。

綾咲ちゃん、さっき聞きたかったことってなに？

私は琴波ちゃん部活って何部に入っている？

何部にも入ってないよ。綾咲ちゃんは合唱部に入っているの？

うん、そうだよ。未菜ちゃんと一緒に入っているから琴波ちゃんも入ろうよ。私の小学校の先輩で莉沙さんっていう人がいて優しくて頼りになる先輩もいるよ。どうしてもっていうのなら無理強いはしないけれど。

琴波はしばらく考えていた。中学では別の部活に入ろうと思っていたけれど結局何部に入ろうか戸惑っていたから1度合唱部に行こうかな。

私は授業後にじゃあ3人で合唱部に行こうと決めた。

3人で合唱部に行って部活後に私は琴波ちゃんを紹介した。莉沙さんすみません、未菜ちゃんの友達の琴波ちゃんです。

初めまして国友琴波です。綾咲ちゃんから優しくて頼りになる先輩がいるからと教えてもらったので今日は来させてもらいました。

莉沙さんは実際合唱部に来てみてどうだった？

琴波はとても皆さん優しくてやりやすいなと思い、中学校でも合唱部に入ることを決めました。

莉沙さんは小学校も合唱部に入部してたなら即戦力として期待しているよ。綾咲ちゃんあんまり期待値を高めるようなことを吹き込まないでよ。

私にとって莉沙さんは恩人なのでこれでもまだ足りないくらいです。ダメですか？

ダメじゃないけれどさ。よし、かわいい後輩のために今日は私が何でも買ってあげる。学校近くのコンビニに行こう。

3人揃ってありがとうございますと頭を下げた。

部活帰りが終わり1度3人は家に帰って私服に着替えてコンビニに集まった。菓子パン、フランクフルト、おにぎりとそれぞれご馳走になった。代表して私が莉沙さんありがとうございます。1年生3人は歌のこと悩みなどあれば相談させてもらいます。

私たちは莉沙さんをお姉さんとして慕うことになった。

キューティートリオ、莉沙呼び

私は友達も増えてきたし連絡取り合うのもその場でやり取りして約束するのも面倒になってきた。周りの友達でもスマホを持っている友達も少しずつ増えてきていた。

パパとママにスマホが欲しいとお願いをしてみた。

「私、友達が増えてきて連絡取りたいからスマホを買って欲しい」

パパはじゃあ今度の土曜日にスマホ買いに行こうか。携帯はあった方が便利だからね。

特に気にしてはいなかったが莉沙さんや未菜ちゃん、そして琴波ちゃんはスマホを持っているのだろうか。ひとまず聞いてみることにした。

翌朝、学校に行って未菜ちゃんにスマホを持っているかと聞くと持っているよ。次に琴波ちゃんに聞くと未菜が持っているって聞いてじゃあ私も欲しいって感じで買ってもらったよ。部活終わりに莉沙さんにも同じ質問をした。スマホを持っているよと3人ともスマホを持っていると改めて気がつき、今度スマホ買ってもらう予定だから連絡先教えてください。

莉沙さんはいいよ。携帯の方がやり取りしやすいからね。綾咲ちゃん、莉沙さんだとよそよそしいから莉沙でいいよ。

じゃあ莉沙って呼ぶね。

スマホ買ってもらったらまた教えるね。未菜ちゃんと琴波ちゃん待っているから先に帰るね、

私は未菜ちゃんと琴波ちゃんのもとに行って2人にスマホを買ったら連絡先を教えて欲しいと伝えた。

2人は快く受け入れてくれてこれでもっと仲が深まるねと話をしていた。

土曜日の朝、山を越えて京都府にある携帯ショップに行ってスマホを見ていると白色、水色、ピンク色とかわいい色合いのスマホがあってとのスマホにしようか目移りして中々決められずにいて1時間、やっと水色のスマホにすることを決めて手続きをした。

これは果たして必要なのかと思うことも聞かれたが遂に私はスマホを手にすることが出来た。携帯ショップに入ってから3時間が経っていてお昼を食べて帰ると午後3時とおやつの時間になっていてスマホを手に入れるのにこんなに時間がかかるのかと思っていた。

月曜日、学校に行って私は未菜ちゃんと琴波ちゃんの連絡先を教えてもらいメモ帳に記入した。部活後に莉沙に連絡先を聞いて再びメモ帳を取り出してメモをした。そして家に帰って3人の連絡先を登録した。

しばらくするとラインに3人が入ってきた。なぜだろうとネットで調べると電話番号を登録している人は友達になることもあると書かれていて納得した。

私はライングループを作り名前を「キューティートリオ」と登録して未菜ちゃんと琴波ちゃんを招待すると2人はすぐにグループに参加して軽く挨拶をしてラインの使い方などを送った。そしてこの日は夜中まで3人でチャットして携帯って便利だと知った。

寝不足

気がついたらスマホがあるのが当たり前の生活になっていた。当然だが学校には持ち込むことが出来ず家に帰ってから触ることになる。学校では部活に熱中して家に帰ればスマホを触り今まで以上に勉強をしなくなった。授業を聞いていても何を言っているのか分からずとりあえず黒板に書かれていることをノートに写すという感じで学ぶというよりも作業に近いような感じになっていた。

さすがにこれではダメだと思い写真を撮ってキューティートリオで聞くと未菜ちゃんも琴波ちゃんも丁寧に説明をしてくれるが私は理解力がなく同じことを何度も聞いていた。次第にグループ電話をするが勉強のことなんて忘れたかのように関係のない話をずっと喋っていて気がつけば日にちを跨ぐという日も増えてきた。私は寝不足になった。

次第に学校では授業を聞かずに寝ていて授業後には部活に行つて帰ったらずっとスマホを触れている状況だった。このままではダメだと思いつつもこの生活にどっぷりと浸かってしまった。

担任の先生から話があると呼び出された。勅使河原毎日眠そうな顔で投稿して授業はいつも寝ていると他の先生からも話が挙がっているぞ。それでいて部活にはちゃんと行くっていうのはおかしい。部活が大事ならば勉強にももっと力をいれないとダメだぞ。まだ1年生でこれだと3年生の時にどこの高校にも行けずに困ることになるから生活習慣を改めるように。

この時私はまだ1年生だし、受験は3年生でしょ？まだまだ大丈夫。先生のことをそこまで受け止めずにいた。そして未菜ちゃんに呼ばれた。

綾咲ちゃん、さっき先生に呼び出されて話をしていたけれどどういう話をしていたの？

私は登校時に眠そうな顔をしていて授業中に寝ているからちゃんとするように。部活が大事ならば勉強にももっと力をいれないと3年生の時にどこの高校にも行けずに困るって言われたよ。

そんなこと言われたの？まだ1年生なのにどうしてそんなこと言うのかね。受験は3年生の時だから3年生になってから、早くて2年生の冬から始めるくらいだと思うよ。

やっぱり未菜ちゃんもそう思う？ちなみにどこの高校に行くかとか決めている？

未菜は全く考えていないよ。公立高校に行けたらいいなぐらいしか。琴波にも聞いてみたら？

未菜ちゃんは公立高校には行こうと考えているってえらいね。私なんて何も考えていないよ。後で琴波ちゃんにも聞いてみるね。授業が終わって音楽室に行く途中で私は琴波ちゃんに尋ねた。

琴波ちゃんってどこの高校に行くかとか決めている？

綾咲ちゃん、薮から棒にどうしたの？

今日、担任の先生から話があるって言われて登校しても眠そうな顔で授業中はノートを取らずにずっと寝ていてそれで部活には行くから部活が大事ならば勉強にももっと力をいれないと3年生の時にどこの高校にも行けずに困るって言われてさ。

そういうことね。私は何も考えていないよ。莉沙さんはどこの高校に行くのかな？

私は莉沙のことだからもうどこの高校に行くか決めて勉強していると思っていた。部活後に莉沙に話があると時間をもらった。

私は莉沙ってどこの高校に行くとか決めた？

莉沙は京都にある華咲女子高校に行こうかなって考えているよ。あそこなら合唱部の名門で多数のオペラ歌手や音楽に携わる人を輩出しているからね。

じゃあ莉沙は将来歌手に希望なの？

歌手になりたいけれど仮になれなくても一生音楽には関わりたいなって思ってさ。そもそも合格したらの話だけどね。それ以外は考えてないけれどどうして？

学校に来て授業中寝てばかりいて部活はちゃんとやっているから担任の先生から部活が大事ならば勉強にももっと力をいれないと3年生の時にどこの高校に行けないって言われてさ。今の私にそれを言われてもピンと来なくて莉沙は行く高校とか決めているのかなって。

莉沙はまだ1年生だから焦る必要ないと思うよ。勉強が分からないなら私でも未菜ちゃん、琴波ちゃんに聞けば分かるまでちゃんと教えてくれるよ。

昨日も2人に分からないところをラインで聞いたけれど私の理解力のなさで何回も同じところを聞いて申し訳ない気持ちでいたよ。

琴波はだから昨日違う話をしたのか、別に同じことを何回でも何十回でも聞いてくれればいいのに。ねぇ、未菜もそうだよね？

未菜はそうだよ。私も琴波も全教科全て分かっている訳じゃないから全て教えてあげられる訳じゃないから私たちが分からないところは莉沙さんに聞いて補足するとかすればいいと思うよ。

3人は私のために色々な案を提案してくれた。

コンクールに向けて

合唱部の目標として夏に行われる夏の全国中学校合唱コンクールとなる。合唱コンクールは夏休みと冬休みに行われる全国大会に向けて練習していた。

私はメンバーに選ばれて全国大会の舞台に立ちたい。勉強が出来ないならば自分の得意なことで補おうと考えていた。もしかして全国大会で金賞を取ろうものなら合唱部の強い高校から推薦の話が来るかもという思いでいた。

中間テストでは上から数えるよりも下から数えた方が早いような順位だったが私は吹っ切れた。勉強に充てる時間があるならば歌に力を入れて合唱部の強い高校から推薦をもらう方がいいと1年生で決めた。

案の定、次の期末テストでは全くといっていい程点数が取れずに1学期末に最下位の順位になり、逆にこれで下がることはない。後は現状維持か上にあがるかの2つしかないと開き直っていた。

またにしても私は担任の先生に呼び出された。

この前の期末テストで最下位だったけれど勉強はしているのか？

私は勉強は全くしていません。その代わり勉強する時間を合唱に充てて全国中学校合唱コンクールで金賞を取って合唱部の強い高校から推薦をもらおうと考えています。

勅使河原、よく考えろ。まだ1年生で全てを合唱に捧げるのはリスクがありすぎる。仮に全国中学校合唱コンクールで金賞を取れたとしよう。誰が推薦をもらえるかなんて分からない。まだ1年生の1学期が終わろうとしているだけだ。今ならどうにでもなるからもう少し考え直した方がいい。

先生から話を聞いてたしかにそうだな、とはならなかった。ダメで元々勉強に捧げる時間があるならば合唱に捧げるべきだと自分に言い聞かせた。