第13話愛情の愛って言う字はね。心の友という字句を含んでいる


「愛情の愛って言う字はね。心の友という字句を含んでいるのよ。男と女が一つ屋根の下で寄り添うだけが愛じゃないの。信也さん。あなたは無軌道なあたしに指針をくれたわ」

沙月が言うには無謀にもアダルト系の動画配信サービスに所属して起死回生を狙う計画だったという。そもそも彼女自身も前妻の連れ子で根無し草だった。母親は異性遍歴を重ね、もはや本当の父親が誰であるか定かでないという。親子関係の認知をことごとく拒否されたのだ。もちろん、養育費の支払いもない。困った沙月の母親は戸田氏に娘を託してさっさと蒸発してしまった。

「出たとこ勝負のその場しのぎは母さんゆずり。それを心配した戸田彰浩は会社を潰してまであたしの面倒を見てくれた」

「彼は今どこに?」

信也の心配は無用の長物だった。沙月の父はテレスコープのADとして走り回っている。

「父さんはあなたの事を褒めてたわ。発掘する才能があるって。それでテレスコープに」

出来過ぎた筋書きだ。沙月はまるで予定調和を操縦する神の視点を持っているようだ。

「藤崎優実は何者なんだよ。どこの世界線から連れて来た?」

ようやく、信也も事の次第が呑み込めてきたようだ。


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