弔い合戦

爆発炎上する古都の惨状はザイドリッツ全土に同時中継された。ブレイキングニュースや他の軍用チャンネルは焼け落ちる街の最期を悲しんでいた。先代のフォルツ公が生まれ育ち、王位継承を記念して改名された。

その歴史的建造物立ち並ぶ名所がたった一人の裏切り者によって灰燼に帰すのだ。


「反逆者ガウリールは英雄ハンニバルを殺した。それだけでは飽き足らず、あろうことか先代王の故郷を焼き滅ぼした。これ以上の国辱がど…どこにあろう…か…っ」


選帝侯ギグルは緊張のあまり何度も舌を噛んだ。次席のベライゾン妃が草案から原稿まで非難声明文のすべてをお膳立てした。それなのに主君はプロンプターを読み間違える。賢い臣民は見抜いているだろう、王者の無様を。

それも計算済みだ。王妃はギグルの権威失墜を緩やかに準備した。王座に腰を据える人物は予定表に載せてある。候補者リストではない。彼らは出来レースの脱落者だ。

「ハンニバル委員長を失った事はザイドリッツにとって大きな痛手です。長年、祖国の技術革新に多大な功績と貢献をもたらし…」

ギャロンがしたり顔で追悼法要を営んでいる。

「ジャグニのウイッチではないのかね?」

ギグルの耳打ちに王妃は平手打ちで返した。ザイドリッツ国営放送は選帝侯夫妻に忖度して報道しない自由を行使した。

式典はしめやかに執り行われ、ハンニバルの遺影に多くの弔問客が参列した。そして、ガウリール元隊員の見せしめ処刑が明朝を期して行われることになった。

ただし、ガウリール本人の出頭があれば、銃殺刑の執行が無期延期される。その旨をドローンが周知し、休止中の回線を含めて全チェンネルに繰り返しアナウンスされた。

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