双頭の鋼人
「人民が欲しているのは勧善懲悪だ。シンプルで判りやすい”悪”に鬱積をぶつけたいのだ。長引く世界制服戦争は日々の生活にストレスを与えている」
「そうすればギグル様を風見鶏のままにしておけると?」
ザイドリッツの政策委員は王妃の真意を正した。
「この国の民主主義は形だけでいいのです。権力というものは宙ぶらりんであるほど御しやすい。泥沼の派閥抗争や二大政党は不毛な議論に国力を費やしてしまう。その点、ギグルは本当に単純で使い勝手のいい”お人”」
男を何だとおもっているのだ、とギャロンは立腹した。しかし、脱ぐことのできない白衣が血圧サージを検知して、ただちに降圧剤を投与した。それでもふつふつと滾る怒りを静かにぶつけた。
貴方はこの国を何だと思っておるのだ、と問いかけて、言葉を選びなおした。
「粛清や内憂外患で国民を幸福に導けますか?」
「笑止、ザイドリッツという国家は軍服を着ているのです。申命に従い、衣服の完成を通じて神意に近づくためには軌を一にすること。しかし、教義や信条だけでは民に猜疑や欺瞞が生じます」
「それであなた様は…」
ギャロンが横目でにらむ、その先には富国強兵の象徴が展示されていた。男と女。フルフェイスマスクを被った双頭の鋼人が身の丈より高い銃剣を構えている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます