頭脳労働は意外とカロリーを消費する

「ええっ。デスクワークなのにガッツリした食事をするんですか」と不思議がられる。ソフトウェア開発技術者は意外と肉食だ。体脂肪率が高めな先輩もいるが中肉中背や痩せ型の男子でも徹夜仕事となるとよく食べる。プログラマーがカップラーメンやスナック菓子で夜食を済ますというのはメディアが作り上げたイメージだ。実際のところ私が以前に勤めていた大阪本町の某重電メーカーでは開発拠点を系列会社の持ちビルに分散していた。そこの一階や隣にはステーキハウスや牛丼屋など質より量の飲食店が必ずと言っていいほど出店していた。

プログラマーは肉食なのだ。まずコーディングに行き詰まったりデバッグに頓挫すると脳がフル回転しているせいかやたらとお腹がすく。その為に各フロアにはパーキングエリアかと思うぐらい自販機が並んでいる。そして深夜ともなると軒並み「売り切れ」ランプがともる。まずコーンポタージュやカレースープといった温かい飲み物系が絶滅する。次にウイスキー入りのホットティーだ。冷たい炭酸系はいつまでも残っている。

脳を冷やすフードはあまり好まれない。真夏でもクノールスープが売り切れる。何故だろうと不思議に思ってある時なにげに尋ねると男性上司が教えてくれた。「炭酸は胃に刺さるんだ。そして暖かいスープは満腹感がある」。

それともう一つ。「心が温まるんだ」

なるほどなと私は理解した。エラーメッセージにさいなまれた男たちは優しい家庭に飢えている。

「だったらあたしが御夜食を作りましょうか。ビルが閉まるまでに買い出しにいく時間もないし」

わたしの提案で給湯室が使えることになった。

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