人を殺めた罪
だが、沢木は水野を疎ましく思うどころか、むしろ積極的に話しかけたりしていた。
そんな二人の関係も終わる日が来た。
人を殺めた罪を償わねばならないのだ。
沢木は、水野をある場所に連れて行くことにした。
その場所は、沢木にとって思い出深い場所であり、同時に彼にとって忌まわしい記憶のある場所である。
そこは、かつて沢木と恭平が通っていた学校であった。
沢木は、そこで水野を処刑するつもりなのだ。
沢木は、水野をある教室に連れて行き、そこで待つように指示をした。
そして自分は、別の部屋へ行き、準備を整えた。
しばらくして、沢木が戻ってきた。
その手には、斧が握られている。
「それじゃあ始めようか」
沢木はそう言って、水野に近づくと、持っていた斧を振り上げた。
「沢木さん 待ってください 」水野が声をかける。
「どうしたんだ? 」沢木が尋ねると、「やっぱり 僕は人殺しです 許されるわけがない」水野は泣きそうな顔で言った。
「大丈夫だよ 」沢木はそう言うと、再び振り上げていた斧を下ろした。
「君は、恭平を殺した後、すぐに警察に出頭するつもりだったのかい? 」
沢木が質問する。
「いえ でも 怖くて なかなか動けなくて 」
水野は俯いて答える。
「俺もそうだ 」
沢木はそう言うと、水野の手を握った。
「俺もずっと逃げ続けてきたんだ でも もう終わりにする時が来たんだ 」
沢木は水野の目を見つめて続けた。
「俺と一緒に来てくれ 」
水野は、その言葉を聞くと、涙を流しながら「はい 」と答えた。
こうして二人は、恭平を殺した後、警察へ自首した。
「これで やっと終わったんだな」
沢木が言うと、水野は「そうですね」と返した。
「これから 俺と君は別々の道を行くことになる」
沢木はそう言うと、窓の外を見た。
「俺は 恭平の墓参りに行くことにするよ 」
水野もそれに続いた。
「僕も 行ってもいいですか? 」
水野が尋ねると、沢木は「もちろん」と言った。
水野は、沢木とともに、恭平が眠る墓地へと向かった。
道中、二人は、会話らしい会話をしないままだった。
やがて二人は目的地へと到着した。
二人は墓の前に立つと、それぞれの思いを馳せた。
「恭平 俺はお前を殺した犯人を捕まえることができたよ 」
沢木はそう言うと、目を閉じた。
「恭平 俺と君は似てるよ 俺たちは、とてもよく似ている 」
水野はそう言うと、目を閉じる。
「恭平 俺が君を殺したんだ 」
沢木は、恭平の墓石に向かって言った。
「恭平 君を殺したのは俺だ 」
水野は、恭平の墓石に向けて言った。
「恭平 俺と君が一緒にいた時間は短かったけど 楽しかったよ 」
沢木はそう言うと、涙を流す。
水野は、恭平の墓石の前で泣いていた。
「恭平 俺は君が好きだった 本当に好きだったんだ 」
水野はそう言うと、恭平の墓石を抱き寄せて泣いた。
「恭平 俺は君を愛していたんだ 本当に愛していたんだ 」
沢木は、水野が抱きしめている恭平の墓石の隣に立ち、同じように泣き出した。
それからしばらくの間、誰も喋らず、静かに涙を流していたが、水野は口を開いた。
「あの時は すみませんでした 沢木さんのことを信用できなかったのです」
水野が謝る。
「謝る必要はないさ 俺は君を裏切った 君を騙し、君の心を深く傷つけた 」
沢木は言うと、水野の手を握りながら続けた。
「でも俺は君を助けようと必死だった それは本当だ」
「ありがとうございます 」水野は、そう言うと、今度は沢木に抱きついた。
沢木は、水野を強く抱きしめた。
「恭平 俺はこの人と幸せになるよ だから見守っていてくれ」沢木は恭平の墓石に向かって言うと、水野と共にその場を去った。
その後、水野は、沢木と二人で暮らし始めた。
沢木との生活はとても楽しいものだった。
沢木はとても優しい人だった。
水野は、自分がいかに今まで不幸であったかを痛感した。
沢木は、水野に様々なことを教えてくれた。
料理や洗濯の仕方など、生活に必要な知識は全て沢木に教わった。
ある日、沢木はこんなことを言った。
「俺も罪びとだ。
自分の過ちは自分でケリを付けなきゃいけない。
お別れだ」水野は、最初何を言っているのか分からなかったが、しばらくすると理解した。
そして、何も言わずにただ涙を流した。
沢木が死ぬ間際、二人は最後の言葉を交した。
「恭平 君の分まで生きるよ 」
「沢木さん どうか安らかに眠ってください」
二人はそう言い残すと、永遠の眠りについた。
沢木と水野が死んでから数年が経過した。
二人は今頃どうしているだろうか?天国で仲良く暮らしているのかな? 私は今でも二人が好きだから、二人にまた会いたいと思っている。
いつかきっと会えると信じている。
ドライカッパー 水原麻以 @maimizuhara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます