タイムラプス

タイムパラドックス

島崎は言った。

「もしも『あの人』が男ではなく、本当に女だったらどうなるんだ？ そんな展開もあり得るのか？ もしかして、あなたが『誰かの娘』だったように！」

その場合、明日香はただの住人ではなく、自分自身の未来であり、他の誰かの子供ではなくなる。

教授は立ち上がり、後ろに立っている警備員を指差した。

「この女性こそが君だ！」

島崎は振り返った。警備員が扮装を解くと、黒髪が肩に垂れていた。

「君のお父さん、つまり『実は妻だった者』の正体は、お前と『その娘』―――」

「ちょっと待って下さい」

「…！」

島崎は言い換えた。

「お話は私が最後まで言わないと理解できないのではなく、私が終わらせたんです」

「でも…」

「それが私たちの仕事なんです」

島崎は警備員を睨んだ。

「あなたたちはいつも人を縛っています！ 何をしていても！ 大切な人を守るためですよ！」

「だからって、もっと私に感謝しなさい！ あなただけはずっと…私のそばにいて」

「先生…」

島崎は警備員に手で遮られた。

「ごめんなさい。先生には私の役目が終わりました。後は私が終わらせます」

島崎は警備員を見つめた。

「どうして私にこの役目を負わせたんですか？ 教えてください！」

「そうですよ。あなたが最後まで言わないと」

男たちがざわついている。

「ちょっと待って」

島崎が声を上げた。

「『お父さんを護る』とは何の意味ですか？ 『自分の子をあなたの子供に託す』ということでしょう。君は…『あの人』に言われたんですよね」

「言われました。それでも私にはどうしても言えなくて…それはそれは辛いことのようでした」

島崎は警備員を見つめた。

「その時、私はあなたに言ったんです。『私はどこにもいない』って。そして彼を『あの人』のものになれと言われました。その言葉が私の心に響きました。彼の言うことを信じました」

「お父さんが彼を『あの人』のものにするにはどうしたらいいか、知っていますか？」

島崎は首を振った。

「僕は『お父さん』のものです。でも、それがどうして『お父さん』なのかは僕には分からないし、分からないことを言ったら、『私はお父さんのものになれない私』で、あの人にはできない。その言葉にはそんな理由も含まれていた」

「お父さんは私になれるでしょうか？」

「分からないよ。その時はまったく信じられなかった。けど、今なら分かる。お父さんは『私』に『お母さん』になれると思う」

その時、島崎は自分がなんでもない人間を『私』と書いたのは、これが理由ではないかと勘ぐっていた。その時、それは自分の中の、心の中にも生まれてはいた。

「自分が自分を認め、認められる世界を作ろうと思い、僕は…お父さんになったんだと思う。島崎さんが言っていたお父さんは、お父さんになると思います」

「『お父さん』？ まさか、お父さんはあの人のものになろうとしていたのですか？！」

「そうだよ。『あの人』というのは、お父さんを指しての言葉だ。お父さんは『あの人』を受け入れている。しかし、僕は…『私』という言葉を受け入れている。それを理解した僕は受け入れざるを得なかった」

「あなたは『ぼく』ですか？」

「僕は『ぼく』さ」

「どうして『私』になろうと思ったのですか？」

「僕は今のままでも十分幸せなんだ。そんな自分に満足できなかった。それなら僕が『私』の世界で幸せになるようにして、お父さんのようになりたい。そうすれば僕は『私』となれるだろう。そうしたら…お父さんみたいになれるかもしれない」

「そんなことありません」

警備員は強く否定した。

「これは僕の個人的な意見でしかない。僕はお父さんとも『お父さん』とも違う世界で幸せになっているという意見だが、お父さんの言う通り、僕はお父さんのようになりたい。この思いはきっと本物の『私』で、これからも変わらないと信じている。本当にお父さんみたいになるんだ。そうだよね？」

警備員はゆっくりと首を振った。

「そんなこと言わないで、子供が女になったり、女になったりしている未来を見せてくれるの。そんな未来がいったい何になるかわからない。しかも、あの人に殺されるの。そんな夢を見なくてもいいの」

これを聴かされて、教授は驚き、そしてつまらなさそうな表情を浮かべた。しかし、それを見て、明日香を見つめる。

「…私の本当に嫌いなことは、私が自分のことが嫌いなこと」

「そうだろう。私を護るのが、お前だろうに。本当に本当に、お前は優しいんだな」

教授は微笑むと、手で顔を覆った。

「何よそれ。自分を、自分を自分のこと考えてね。優しい人？」

「そうだよ。だから、君の嫌いな部分は、君にある。君は、君には自分を受け入れなくていい。君は君自身で見つけるものだ。あの女性を見つけるだけの価値がある」

それを聴いて明日香はつまらなさそうな顔を少し変え、「じゃ、もう行くわよ」と言った。その後ろで彼女を見ていた教授も、そして明日香の顔にも疑問を抱いた。

「どうしたんです？」

「あなたたち、いつもこんな感じなの？」

「そうだ。ただいまの君はここにいる」

「どうして？」

「…いや、何でもない。気のせいだ」

「そんな…」

教授が怪訝そうな顔で見上げると、明日香は「それどころじゃないわ」と言うと、急に顔を顰めた。

「あなたじゃない。あなたらしくない…」

「何が？」

「あなた、自分が一番じゃないのよ。私に頼ってきて。お父さんはあなたに頼られるのが好き」「どうして私にこの役目を負わせたんだぁ？ 教えて下さい！」と島崎は憤りを込めて問いかけた。

警備員は深く susumu笑い、少し時間を置いた後に答えた。「君には特別な力がある。それは他の誰にもないものだ。お父さんが護られる未来を創り出すためには、君の存在が必要だったのさ」

島崎は驚きながらも、言葉に意味を感じ取った。「私には特別な力があるのか。それがお父さんを守るための鍵なんだね」

警備員は頷いた。「正解だ。君がお父さんを守ることで、未来が変わる。お父さんの本当の姿が明らかになり、それによって新たな道が開けるのさ」

島崎は心の中で考えを整理し、覚悟を決めた。「分かった。私はお父さんを守るために立ち上がる。そして、私の力で新たな未来を切り開くんだ」

警備員は満足げな表情で頷き、島崎の肩を軽く叩いた。「君は立派な仕事を果たしてくれる。信じているよ」

島崎は感謝の気持ちを込めて微笑み、警備員に礼を言った。「ありがとう。これからもお父さんと共に戦い、新たな未来を切り開いていきます」

そして、明日香と共に教授の元を後にし、新たな冒険へと向かっていった。

彼らは困難に立ち向かいながら、絆を深め、過去の謎を解き明かしていく。島崎の特別な力が発揮され、お父さんの本当の姿が明らかになると同時に、明日香自身も成長し、自分自身を受け入れる旅を歩んでいく。

そして、最終的に彼らは「あの人」の企みを阻止し、新たな未来を切り開くことに成功する。お父さんと島崎、明日香の絆は深まり、彼らは幸せな日々を過ごすことができるのだった。

この物語は、個々の存在の大切さや自己受容の重要性を描きながら、家族の絆や勇気、成長のテーマを探求している。そして、愛と信頼の力が未来を変えることを教えてくれる物語である。

終わり