俺の要求

ただ俺の提言はすんなりと通らなかった。彼女が上層部に伝えたところ、かなり揉めたあげく特例措置ということで承認された。

今まで死亡しない異世界転生はレアケースであったものの非常に困難だという。そこを俺は妹の冥福を賭けて熱意で押し切った。やがて転生を司る神々も折れ、俺はめでたく異世界の覇者として七面六臂の活躍をした。

俺がかの「中世ヨーロッパ風」世界で最強勇者として活動開始すると、魑魅魍魎死霊悪魔の類は潮が引くように地獄へ引き揚げていった。ついでに現世に蔓延るもろもろの悪もきれいさっぱり掃除した。そしてあっという間に平和が訪れた。

これを受けて異世界とこの世の本格的な交流が始まった。エルフやドワーフといったファンタジーでおなじみの人種をはじめ、見たこともないような二足歩行生物が街をリアルダンジョンと化した。

「まさか東京オリンピックに異世界の客が入るとは思いもよりませんでしたな」

俺と死神女が赤暖簾で祝杯をあげていると店のオヤジが顔をほころばせた。聞けばつい数日前に金貨の決済に対応したのだという。レジにはクレジット会社だけでなく冒険者ギルドのロゴが記されている。

「おかげさまでトラック運転手も血を見なくて助かります」

カウンター席の男にメテオストライクを喰らわせてやろうとしたら止められた。

    

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