姉のために

「今更ながらおとり捜査に協力しろだなんて…」

清瀬清美は憔悴しきった顔を左右に振った。

「お前の姉さんを殺した真犯人が捕まるかもしれないんだ」

落とせばコロコロ転がり落ちていく小坂、という異名を取るようにベテラン刑事は清美を説得した。

「真美姉ぇはバスルームなかでシャワーを浴びてるの。ちょっぴり長風呂だけどね」

「そう思いたい気持ちはわかる。しかし、どこかで生きているという希望はアルジェラボの家族も同じだと思わないか」

融像、今度は人情路線に訴えた。

「ええ、でも」

容疑者の反応は鈍い。捜査に協力すれば姉の死を部分的にも認めてしまう。

「俺はお前を信じたい。無実だ。そしてお前の姉さんは今でも生きている」


しばらく、沈黙がつづいた。そしてクスクス笑いがアクリル板を震わせた。

「…とことん昭和なんですね。発想がまるで昭和の熱血ドラマだわ」

融像は顔を耳の先まで真っ赤に染めた。そしぶっきらぼうに言った。

「わるかったな」

はじけるような笑いがさらに追い打ちをかける。

「だって、真美姉ぇは好きでした。昭和のドラマチャネル」

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