陽動作戦
ルネ・ファラウェイ、17歳、イングランド立憲王国マンチェスター州リーソン在住。職業は自称ハッカー。ラッセルフォード工科大学の聴講生。
フェイスガードを被った関係者が挑戦状送付者の身元を開示すると取材ドローンがフラッシュを浴びせた。会場奥手につんぼ桟敷された人間の記者が遠巻きで煙たがる。
「同報通信の山崎です。彼女が厳重警戒された開発チームにどうやって潜り込めたんでしょうか?その詳細を捜査に差し支えない範囲で教えてください」
ドローンが青山司奈をクローズアップする。女の子はどんな時代でもいかなる現場でも得だ。女性はかわいいという男目線で優遇される。
「その点に関してはまだ何も…研究拠点はオランダにあると言っても本番環境ではなく、実機はヘルベティアの…」
「本番環境って何ですか? 本番ってことはマクラもあるってことですかぁ?」
下品な野次が質問に割って入る。
司奈はムッとした。
文久の時代になっても矢面に立つ女は男に見くびられる。
「質問の途中ですが、あまりにマナーが乱れるようなら打ち切らせていただきます」
司奈はトントンと資料を揃えて一礼もせず、さっさと会場を後にした。
「お、おい。司奈」
記者の怒号と抗議が渦巻く中、小坂は慌てて後を追う。
「いーのよ! アルプス連峰の地中にAIの心臓部があるってことぐらい、ヘルベティアという地名で検索すればわかるでしょ。開発陣はオール女性からなるワンチームで、そんな生え抜きの集団にポット出の女子が入り込む余地はない。犯人はルネ・ファラウェイを騙って警察を振り回そうとしているのよ!」
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