無限のかなたに向けて祈る

逢えない人の無事を無限のかなたに向けて祈ることと、希望のない奇跡を待つことと何が違うのだろう。

真美の汚れたドレスを洗濯機に放り込んでから、小一時間も経ってないように感じる。

訳の分からないまま防護服姿の警官に催涙弾で撃たれ、気づいたら透明な檻の中にいた。つくりつけのAI弁護士が面会してくれるけど事件に関する情報は殆ど教えてもらえない。

清美はあまりのショックで泣く気力もない。絵里奈に呼び出されてアルジェラボに着くまで十年もかかるってあり得ない。ドローンに乗っていた主観時間は十分もない。

しかも、自分が絵里奈と姉を殺した容疑者だなんてあんまりだ。

だいたい警察の描いているストーリーが酷すぎる。慰謝料の取り立てに絶望し、なおかつ元夫の浮気相手と死ぬまで同棲させられる苦痛から姉を解放しようとした。

姉の遺骨を職場の立体印刷機で出力し、自殺を偽装した。そして、憎さ余って本人を殺害した。さらに証拠隠滅のために同僚を始末した。

取り調べのなかで小坂は量子テレポーテーションが凶器である可能性に触れた。

「どうしてみんなアタシを殺人鬼にしたがるの。お金なんかどうでもよかったのよ。姉さんが立ち直ってくれたらよかった」

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