不都合な真実

『いろいろと拙いことになっている。ほら、何と言ったか。お宅の…』

ヒスノイズが耳障りだ。おまけに音声が途切れがちだし水晶玉は真っ暗だ。

「うっさいわね。そのジャージャー、どうにかならない?」

天使は眉を吊り上げた。『すまん。妻が天婦羅を揚げている』

「貴方が俗っぽいからよ。食いしん坊ね」

天上人は霞を食うのだ。

『すまん。下界暮らしが長すぎた。それより女房のことなんだが…』

直哉は山羊のような耳をそばだてている。その穢れが霊界通信を妨げている。

女は苛立つ。「希死念慮課長ふぜいに何ができるというの。元がつくけど」

男のほうもヒートアップする。「止めて貰わなきゃ困るだろうが!本当に地上討伐軍が動くとか話が違いすぎ…」

水晶玉がバリンと砕けた。天使は刀を鞘に納めると、ふうっと吐息をついた。

「どこの世界に地獄の使者と仲良くする天使がいるの。地上も地下も下界は下界よ」

そういうと彼女は剣を刀掛けに戻した。

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