希死念慮課解体
追撃天使と知りながら化身を殺した。これは天界に対する重大犯罪である。神格を殺した人間は枚挙にいとまがないがすべて神話や創生初期の出来事である。時代が下って近代に天使を殺害した例は特に原子力時代以降はない。
「派兵を検討しているって本当ですか?」
「ええ、そうよキース。地上討伐軍の緊急展開が検討されています」
フィーナ課長は閻魔省トップが冥府閣僚に働きかけているという。
驕り高ぶる人間に天罰が下された例は数知れない。場合によっては地上を焼き滅ぼすことも厭わない。既に火と水は裁きに用いた。今度は風ではないか。そんな噂すらある。「彼女は無事なの?」
キースは責任を感じてか呵責に苦しんでいる。
「正確な安否は言えない。けど、彼女には外れて貰うわ。ううん、貴女は全然わるくないのよ。むしろじゃじゃ馬を預かってくれてありがとう。そしてごめんね」
こうまで言われてはフィーナを責める筋合いがない。「ううん、こんなことになってしまって…」
紗希の言葉に、フィーナは斜め右下方向にねぎらった。
「いいのよ。貴女もゆっくりお休みなさい」
えっ、とキースは言葉を詰まらせた。どういう意味だろう。
「
「そんなの勝手です」
キースは蟷螂之斧をダメもとでふるった。天罰で人類が滅べばしばらくの間は関連性もへったくれもなくなる。というか、人類抹殺こそが一方的な断絶である。天魔庁の存立危機事態だ。閻魔省の横暴が過ぎる。
「いいえ、これは天魔長官の方針よ」
フィーナの言葉を背にキースは辞去した。
「おいとまします」
行くべき場所がある、やるべきことがある。
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