悪魔のプログラム

羽田が臍で茶を沸かし対するサヴォナローラはそれを曲げた。

「何がおかしいの!」

「だって先生、ちゃんちゃら可笑しいですよ!」

羽田に言わせれば不平等は不平等のまま推移するのだからそれに従って経済は存続する。

「言及中の悪魔プログラムは既にプロパガンダのようになっているが、君は政治システムがどのように作られ、それをどのように評価しているのか知っているのか?」

脚本家は質問に質問で答える。

「不平等と独裁はそれぞれ、国家から独立したプログラムです、そのことを誰が理解できたと仰います? その前提は既に出来あがっているんですよ!」


「国家概念の本能だといいたい? それを機械化したところで何になる」

「ホルモンバランスやその時々の体調といった器質的な感情、私利私欲といった思惑、そのような不可解とされた要素がデジタル化され政策決定プロセスからフィルタリングできる。」

サヴォナローラは、それでも自動人形オートマタによる統治の愚をさとした。

「AI議員に関する思考実験は本講の趣旨から脱線するゆえ詳細を省くが、紀子るべき3つの壁がある。利害の壁、職業政治家りけんの壁、変革の壁だ。特に最後は霊感を欠く機械にとって致命的だ。まぁ、このプログラムはどうにかなるやもしれない。ただし、このプロジェクトを放棄すれば再び国家が「支配下にあった」時代に戻される可能性もあるのだ」


部長は腕組みをした。


このプログラムを放棄すれば、絶対的な国家というものがなかったと証明することが出来なくなる。演算の時間的発展が、何の結果も意味を持たないと分かっていたところで、『現行の』統治機構に組み込んで実証する場合に生じる負の効果を無視することは危険だ。


こういった問題には専門家的な分析が必要なのだという。もっとも、その詳細はまだ分からない。そのあたりについては、その時その時で考えるべきなのかもしれないのだが、とにかく、このプログラムを放棄しないとこれからの歴史がないプロジェクトなのである。


これが「プロジェクト」であると、ある種の価値観で考えた方が妥当なのかも知れない。


運用面オペレーション面でいくら議論を戦わせたところで平行線ですよ。やはり価値観で考察するしかないと思いませんか、先生」

澪がキラリと瞳を輝かせた。

サヴォナローラはムッとする。

「ここで感情論を持ち出すのね?」

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