第18話 警戒
『う~~ん、難しいけど、強いて言うなら江口君かな』
その言葉が惣太の喉元にナイフのように突きつけられている。
『江口くんかな』
『江口くんかな』
ふとした瞬間に由紀の声が脳内に反芻する。
えぐちいいいいいいいいい!!!!!
親友の顔を思い出し惣太は歯を食いしばった。
あのエロ猿、俺の由紀を奪いやがったなーーーーーーーーー!!!!
由紀のあのセリフで、世界が一変してしまった。
「や~~そうちゃん、おはよう」
「おう」
「そ、そんな怒んないでよ……昨日は悪かったよ……」
昨日の一件で真彦のことを恨めしく見てしまい、惣太の顔を見て真彦は怯えていた。
しかしそれが申し訳なくもある。
違う。違うのだ。
惣太が切れているのはこの真彦に対して、ではない。
いや、正確には真彦に対して、『だけではない』。
真彦を筆頭に、今この現状に業を煮やしているのだ。
迂闊だった。
これまでの由紀の周りの男に対するつれない反応から、どうせ誰も箸にも棒にもかからないだろうと、いつのまにか自分自身が高を括っていたのだ。
だがそんなわけはないのだ。
真彦の件で気づいた。
由紀にだって、いつか彼氏が出来る。
それが今日や明日だってあり得るのだ。
由紀は引手数多なのだから。
その場合、帰ったら由紀の彼氏と遭遇する、というケースだって考えられるのだ。
女友達を連れ込む由紀だ。彼氏だって連れ込むであろう。
そうしたら……
嫌な絵が思い浮かんでくる。
考えたくもない悪夢の絵。そう……
帰ったら、
そうなったらどうなる……
帰ったから2階から変な声が聞こえて……。
いやもしかしたら男が我慢できず玄関で始めてて、ドアを開けたら服の前がはだけた、肌色が多くなり下着が見えている由紀がいて、「あ、ゴメン惣太」とか言われたら……
(オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!)
そのあまりに無情な光景に惣太は絶叫しそうになった。
脳が壊れそうだ。声は出さないが、どうにかなりそうだ。髪をかきむしる。
そんなのあんまりだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
いやだあああああああああ!!! やだよおおおおおおお!!!
死んじゃうよぉぉぉぉ~~~~~~!!!
そんなんなったら間違いなく死んじゃうよ~~~!! それは嫌だよぉぉ~~~~!!!
お~~んおんおんおんと心の中で泣き叫ぶ惣太。
惣太はそうなった場合の心も体も血だらけになった自分の姿を容易に想像できる。
このままではマズイ、と脳が全力で警鐘を鳴らしている。
ならば、警戒を開始するしかない。
自分が自死しないように、由紀が彼氏を作らないように。
今現在、由紀を本格的に狙っていると思しきは4名だ。
まずはこいつらと由紀の関係を綿密に探る必要がある。
こうして、真彦を家に入れたことで警戒心が芽生えた惣太は、周囲の敵の状況を観察し始めたのだった。
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