第14話 懇親会
本日2話更新。
その2話目です!ご注意下さい!
―――――
由紀関連の話題や事件の絶えない騒がしい惣太のクラス。
誰かが必ず黄色い声や、怒声を上げていたりする惣太のクラスは、突然だが、この度由紀の懇親会をすることになった。
クラスメイト全員が加入する
それに皆が賛同し開催される運びとなったのだ。
ただ――
PM10:00 蝶谷香恋『じゃぁ今度の金曜日、夜7時からとかはどう?』
PM10:00 中川由紀『私は良いよ、その日で!』
PM10:00 竹田良一『マジで?』
というやり取りの後、
PM10:01 中川由紀『うん、今確認したら惣太もその日は開いてるらしいし』
などと、由紀がもともと火があるところに油を注ぐ様なコメントを残し、大変だったが。
勿論女子たちは、夜も一緒に居ることを如実にするコメントに
『ヒューヒュー!!』とか『お熱いね~!!』とか好き勝手なコメントをして盛り上がり、
当然のようにそのスクショは惣太の仲間内の
倉山久志『事情を聞こうか?』
佐々木幸次『教えてくれるよな? 惣太』
と惣太は圧迫面接のように問い詰められていた。
「……」
いや仮にも家族だし! そりゃ夜だって近くにいるだろ!! とはなかなか由紀に憧れる彼らには言いにくいものである。それに女子のだって騒ぎたいだけだろ! とはなかなか言えない。
「おいおい俺は生徒会だからな~~!! 酒とか買ってきてないだろうな~~!!」
「考えすぎだろ倉山~」
「バッカ、前に文化祭の打ち上げでこういう場所で飲んで謹慎処分になった馬鹿もいんだよ! 絶対に飲むなよ、飲んだ瞬間そいつを教師に突き出すからな!」
久志が会場に集まったクラスメイトに注意を促している。
クラスのギャル女、猪上陽子が借りたレンタルスペースは平屋に机が置いてあるだけの簡素なものだった。
だが、天井にはミラーボールがしっかりと括り付けられていたりと、カラオケ用の設備は整えられていた。
ここに皆で菓子やジュースを買って持ち込み、カラオケなんかをして楽しむわけだ。
部屋を暗くしミラーボールで照らされるままにし、皆で飲んで歌って騒いでいたりするとそれなりにアングラな雰囲気になる。
その雰囲気に当てられ、もしくはそれを助長するために、かつて馬鹿なことをやらかした人がいるのも分からないでもない。自分は絶対にしないわけだが。
クラスメイトたちが歌うのを聞きながら喧騒の中で幸次や真彦たちと怒鳴り合うように話していると、とことこと女子が一人やって来た。
以前に由紀に、惣太のことでごにょごにょと言っていた女子である。
何だ何だと思っていると「いや~~悪かったね深見君」とその女子は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「な、何のこと?」
「周りから聞いたよ、由紀さん、バド部とESS部の部活見学に真っ先に行ったんだって?」
「ま、まぁ、一番に来たな」
「私が言ったんだよ。深見君はバド部とESS部に仲良い子がいるって。そしたら由紀ちゃんの目がグワって開いてさ。声も平坦になるし。怖かった~~」
「そ、それでか……」
なんというか、由紀が最初から鞠華や紬を認知している風だったのが不思議だったのだ。それはこの少女に原因があったのだ。
「うん、その後色々由紀さん暴れたって聞いたからさ、悪いと思っててさ~」
「良いよ、どうせあいつのことだから前情報無くても暴れてただろうし……」
「お、流石は家族って感じだな~。気にしてないなら良かったよ」
「うん、気にしてないよ……。あいつの暴走はいつものことだから」
「そ、なら良いんだ」
少女は憑き物が落ちたようにすっきりとした顔をすると「バイビ~」っと手を振って女子の集団に混ざって行った。古い別れ文句に戸惑いつつ手を振る。
「お前バド部とESS部にも仲良い女子いんのか?!」
すると幸次が身を乗り出し来た。
そういえば、鞠華も紬も控えめというか、大人しいというか、部活以外ではあまり話しかけてこないので惣太の周囲の友人たちも知らないかもしれない。
「ま、まぁ、いる、っちゃいる、けど……」
「で、どんな奴なんだよ? 名前は?!」
「な、名前!? た、多分、紬と、ま、ま、鞠華、のことだと思う……。それ以外に特別仲良い女子いないし……」
「紬?! 鞠華?! 紬ってそれ2年の淀川紬か?! いつも眠そうにしてる!!」
「あ、そうそう! その紬だ」
「その紬だ、じゃね~~~~~~!!!!」
BINGO! とでも言いそうなほど軽いノリで惣太が同意すると幸次は髪の毛を掻きむしった。
「普通に大人気な女子だろうが!!」
「は?! そうなの?!」
あの紬が?! 確かに可愛いけども!!
「そうだよ馬鹿野郎が!! あのアンニュイな感じが大人気だよ!!」
「ま、マジか……」
これからは紬との付き合い方を改めて行く必要があるかもしれない。
完全にその辺にいる男みたいに軽いノリで話していた。
確かに常日頃から顔整っているなぁと感心すること多々ありだったが、そんな噂が広まるほど大人気だったとは……。
「で、鞠華ってのは一年生の高梨鞠華ちゃん?」
惣太の交友関係に唖然とする幸次に代わり真彦が引き継ぐ。
「そ、そうそう、その鞠華……」
紬ショックもあり、嫌な予感に背中が汗でびっしょりになる。
鞠華は紬と同じくらい美人である。
「あ~じゃぁそうちゃんは大罪人だねぇ~」
案の定、真彦の声は抑揚を失っていた。
「鞠華ちゃんも1年の間でかな~り人気らしいからね」
「夜道には気を付けた方が良いかもな、惣太……」
「ヒェ……」
二人から放たれるどんよりとした空気に自分のやらかしを感じ取り、惣太は身を縮こまらせた。
「ていうかさ~~、その由紀のでっかい人形なんなん?!」
その時、カラオケの曲と曲の隙間で、部屋の向こうにいるクラスの中心人物たちの声が聞こえてきた。
なにやら由紀を中心に会話の花を咲かせているらしい。
「あ、これ?!」
話題に上がったのは由紀が普段から使っている通学バックに括り付けられているデカいクマのぬいぐるみである。由紀はいつも年季の入ったぬいぐるみをバックに着けているのだ。
今日も部活見学に行き、今も制服の由紀は通学バックを携えている。
それにくっついた人形を手にし、よくぞ気付いてくれました! と由紀の顔は得意満面だった。
「実は惣太から貰ったんだよね」
「惣太から?」
「うん、初めて出会った時にね、あげるって。その時から大切にしてるんだ!」
「へ~、そんな小さい時からのなんだ!」
「うん、小1の時に貰った奴だね! だから大切なんだ!!」
「いいね~~~」
乙女じゃーんと両端の女子からぐいぐいと肘を押し付けられる。
「やめてよ~~~!!」
女子からのちょっかいに由紀はとても嬉しそうに笑っていた。
「ふ~~ん」
一方で惣太の横ではグシャリと幸次が飲んでいた紙コップを握り潰し、
「こ、幸次、オレンジジュース、い、いります、か……?」
「いる。から、早く持ってこい」
「……はい」
惣太は幸次にお酌をするのだった。
その後由紀はリクエストに応じいくつかの曲を熱唱し、その歌声で多くの男子を虜にし、惣太の下に由紀との懸け橋になってくれという依頼を殺到させることになった。
勿論、全部断ったけど。
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