第7話
「け、警告通知書…」
過去の記憶がよみがえるのか、露骨に警戒心をあらわにする二人。私は恐る恐るメリアの手からそれを受け取り、内容に目を通す。
「…メイに尋常ではない精神的苦痛を与えた上に、許可なく王宮を脱走したエイプリルは、もはや重罪に処されるものである…また、彼女の脱走を手助けした者たちもまた、同罪とする…明日0時、王宮広場に出頭せよ…」
その言葉を聞いたジュラは、瞬時に壁時計に目をやる。
「…あと2時間かよ…」
あまりにも理不尽な仕打ちだが、打ちひしがれている時間はない。
「メリア、あなたは早く王宮に戻って!このままではあなたまで巻き込まれてしまうわ!!」
私の迫真のその声に、メリアは笑って答える。
「…今の王子のままでは、私よりも先に国が崩壊してしまうことでしょう。あなた方が死んでしまってはなおさらです。私は私の意思で、あなた方に付いたのです。どうか、おそばに残ることをお許しください」
「メリア…」
彼女の言葉は本当にうれしい。私たちを、心の底から信じてくれているのだろう。ならば私も、全身全霊でそれに答えなければならない。
「時間がないわ!こっちにきて!」
メリアも合流し、全員で資料の確認作業に移る。
「…このページ、うんと匂うぜ…」
問題のページにもほかのページと同様、王宮から貴族家への金銭の流れが記載されていた。ただしこのページに記載されている貴族家は、私たちと縁の深い貴族たちであった。
「オーガスさんの名前も、オクトさんの名前もある!!」
思わず私は叫ぶ。
「他もだ!あの兄弟に貴族家を解散させられた貴族たちの名前だ!!」
ジュラも私に続いた。
「で、でもまってくれ!私は王宮から金銭なんて一円も受け取っていないぞ!!」
「ああ!私もだ!!」
オーガスさんもオクトさんも、王宮からは一銭も受け取っていないと主張する。明らかに、この資料とは食い違っている。
「ど、どういうことだ…」
そう言葉を漏らすジュラ。彼だけでなく、ここにいる全員が理解できない状況だった。そんな時、メリアが素朴な疑問を投げた。
「…なんだか、いらないものを押し付け合っているような様子ですね…普通お金って、お互いに欲しがるものなのに…」
その言葉にが鍵となり、私の脳内に突き刺さる。これまで有象無象にバラバラだったそれぞれの事象が、連なって形を形成していく。
「…そうか、そういうことだったのね…」
一つの真実が、私の脳内で解き明かされる。
「…エイプリル様!もう時間が!」
メリアの言う通り、もう残り時間がない。ゆえに、私は自信をもって皆に告げた。
「さあ、王宮に向かいましょう。終わりにするのよ、私たちの手で」
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