第6話
「確かに、王宮から複数の貴族家に、金銭が流れているようですが…」
「うむ…」
オーガスさんのその言葉に、オクトさんも同意する。
「しかし、これ自体に怪しい点は見当たりませんね…」
私も中をよく見てみるが、特に怪しい点は見つからない。
「…」
私たちの言葉に目もくれず、ジュラはずっと黙って真剣に資料に目を通している。ひとつの見落としも許されないのだ。私たちも彼の姿を見て、より一層真剣な表情となる。
…しかしどれだけ観察しても、結局怪しげな点は記載されていなかった。不正と思われる送金が全く無いではないが、これだけではあの二人を追い詰めることなどとてもできないだろう。私たちは完全に、行き詰ってしまっていた。
「…少し、休憩しよう」
ジュラがゆっくりとイスから立ち上がり、飲み物の支度をしてくれる。…資料の事で頭がいっぱいだったけれど、私は今ジュラの家にいるのだ。私は両目を閉じ、深く深呼吸をする。彼の家に来るのは初めてで、本当ならゆっくりこの部屋の雰囲気を満喫したいというのに、まったくさんざんだ。背伸びをし、改めて資料の方に視線を移す。…すっかり集中力が切れてしまい、ページ数めで追っている始末だ。
110…
111…
112…
113…
114…
117…
118…
…あれ?
違和感を覚えた私は、再びページ数の記載に目をやり、順に確認する。
110…
111…
112…
113…
114…
117…!!!
私は反射的に、3人に向かって声をかける。
「ここ!ページ数が飛んでます!!!」
私の声に3人とも瞬時に反応し、問題のページを注意深く観察する。
「これ…まさか…!」
何かに気づいたジュラが、ページの端を爪でこする。…しばらくそれを繰り返した時、このページの秘密が明らかとなった。
「…ここだけ薄い紙を2枚重ねていたんだな…普通にめくった感覚じゃ、何も違和感はなかった…」
「そ、それでそこにはなにが!!」
「見せてくれ!!」
ジュラがゆっくりと、問題のページを開ける。その時だった。
コンコンコン
扉が、ノックされた。私はこれまでに感じたことのないような寒気と恐怖を感じた。全員で目を合わせ、どうすべきか視線で会話をする。明かりをつけている以上、居留守は使えないだろう…
「僕が出よう。ひとまずこれは隠すんだ」
ジュラの声に反応し、皆俊敏に動く。私は資料を隠し、客人が誰なのかに注目する。
…扉が開かれ、その正体がゆっくりと判明する。
「メ、メリアさんっ!!!」
そこに立っていたのは、メリアさんであった。私はほっと胸ををなでおろし、心の底から安堵する。
「このような時間に、申し訳ございません。実はノーベ王、及びメイ様より、こちらをお預かりいたしております」
その手にあったのは…警告通知書であった。
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