第5話

「えっと、こちらの方は…」


「紹介するよ。オーガスさんと、オクトさん。二人とも、あの兄弟のせいで貴族の身を追われた人たちなんだ…」


 ジュラその言葉を聞いて憎しみがよみがえるのか、強くこぶしを握る二人。私たちは自己紹介を手短に終え、それぞれの置かれている状況について情報の共有を始めた。


「…それで、貴族の身を追われたというのは…」


 まずなにより、気になった事だ。二人を代表し、ジュラが私に説明を始める。


「二人とも、領民から慕われる立派な貴族だったんだ。ところがある日、あの兄弟から突然、警告通知書が送り付けられてきたらしい」


「警告通知書…」


 それは確か、危険な動きをする貴族や要注意貴族に対して、王子の権限の下に王宮が発するものだったはず…優良な貴族に送られるはずのないものだ。

 そこから先は、オーガスさんが話を始める。


「…お前たちには王宮に対する反逆の疑いがあるから、調査をさせてもらうと…そう言った内容でした…」


 心の底から悔しそうに言葉を発するオーガスさん。そしてその先を、オクトさんが話始める。


「もちろん、私たちに反逆の意思など全くありません!!だからこそ、私たちは調査を承諾しました!私たちは無実であると、証明するために!!!しかし…」


 口をつぐんだジューンさんの言葉の続きを、ジュラが重々しく話す。


「…調査の結果、二人には反逆の意思ありという結果が王宮に届けられた…」


「そ、そんな…」


 そ、そんな理不尽なことがあっていいものか…王宮の権力を悪用して、貴族に無実の罪を着せるだなんて…

 しかし、ジュラの話はまだ終わらない。


「そしたら再び通知書が届いた。そこには、反逆の罪を問わない代わりに、貴族家を解散しろと書かれていたそうだ…」


 …あまりにも非情なやり口に、言葉が出ない。


「…反逆罪は、私たちだけでなく、私たちの家族や臣下たち、大切なものの皆にも適用されます。それはすなわち、貴族家に関わる者のすべてが処刑されるという事です…」


「…そんなの、逆らえるはずがありません…私たちは言われるがままに、貴族家を解散するしかありませんでした…」


 今にも泣きだしそうな表情で、そう言葉を発する二人。


「しかもだ、この被害にあってるのはこの二人だけじゃない。ほかのいくつもの優秀な貴族たちが、同じ手口で解散させられているようなんだ」


「!?」


 …あの二人は、いったい何が目的なんだ…!?こんなことをしたって、何の得にもならないだろうに…


「…あの兄弟は、何が目的なんでしょう…」


 不意にそう言葉を漏らした私に、ジュラが答える。


「その答えがきっと、君の持つ資料にはある。俺はそう確信している」


「…!?」


 私は3人の前に、持ち出してきた資料を提示する。そして皆とともに、その資料を開いた。

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