時空破断の真実

今から約146億年前。ビッグバンから宇宙が生まれた。その直後に「神の一撃ファーストインパルス」があった、と理論物理学は説く。「指数関数的宇宙膨張インフレーションモデル」によれば、その刺激によって宇宙は急激に膨張した。インフレーションモデルを推し進めると宇宙が子宇宙を産むという宇宙の多重発生マルチバースの可能性が高まる。我々の宇宙とは無関係な別の宇宙が無数に発生してしまうのだ。

へだたった宇宙は互いの存在が見えない。別の宇宙はあるとも言えるしないともいえる。実際に存在したとしても相手からすれば仮説の段階でしかない。

つまるところ、宇宙の実在、非実在は人間の主観が決定する、と言える。

「声のでかいもん勝ちってことですか?」

小鞠幕太は時空探査船『松戸菜園テスト研究所がこんなこともあろうかと空を飛んじゃうB級SFファン待望の王道仕様号略して宇宙船』のデッキで西瓜の種を飛ばしていた。

「そうじゃ。そしてどうやら神の第二撃セカンド・インパルスが起きてしまったようなのじゃ」

松戸菜園は国民政党の発明が引き金を絞ってしまったと推測している。

「普通にシンギュラリティといえばいいじゃですか」

「シンギュラリティはあくまでAIベースの現象じゃ。我々を巻き込んだ認識論が変わってしまったのだよ。人類は神の禁忌を侵してしまったようじゃ」

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