ペアレンタルロック

「なん…だ…と?」

国民政党はへなへなと崩れ落ちた。つられて野党議員ロボ達も機能停止する。

「こ、これはどういうことじゃ?」

松戸菜園は言葉を失った。小鞠政府高官も何が起きたのか理解できない。

「システム管理者(シス管)、解散総選挙のルーチンが異常終了しとる。しっかりせんか」

博士はスマートフォンでサーバー運用チームを問いただす。するとシス管が「博士、もう忘れたんですか。親権者施錠ペアレンタルロック機能を追加したのは貴方じゃないですか。子供たちが『こども国会』に無茶ぶりしてすぐ壊すという親御さんたちのクレームを請けて…」とさとした。

「おお、そうじゃった。すっかり忘れておったわい。認知症かの?」

博士の隣で小鞠がまたもや悶絶している。

実際、発明者の松戸菜園からして御覧の通りな祖雑っぷりである。子供たちの扱いっぷりは想像に難くない。テスト研究所の修理部門はひっきりなしの依頼でパンクし、根をあげたスタッフが博士に幹事長ロボの仕様書を携えて直訴したのだ。

ちなみに幹事長と言うのは与党の留守を預かる代表者のことである。政党には党首ないし総裁がいるが彼が首相に就任した場合、行政府の長と多数派与党の長すなわち立法府の長を兼ねてしまい非常にまずい。利益相反を避けるためと首相任務に専念してもらうため、総裁の留守を預かる幹事長という役職がある。

幹事長ロボを実装することで、こども国会は壊れにくくなった。

世界は松戸菜園の発明によってまたもや救われたのだ。


国民政党本人は国立なんちゃら女子会ロボ病院に緊急入院メンテナンスし、そのまま政界引退となった。これも博士による実装である。


「…と、いうわけでじゃ、こども国会一式、スタッフの出張サービス費用、緊急対応手数料、実費その他もろもろ込みでじゃ」

松戸菜園は十一桁の金額を政府に請求した。

「どぁーっ! 博士、そんな。こっちこそ破壊されたスタジオの再建費、関係各方面からの賠償請求その他もろもろで」

小鞠幕太が口角泡を飛ばす。

「しかたないのう。こんなこともあろうかと」

どぉん!

二人の背後に「こども最高裁判所」が聳え立った。


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