国民政党、公式に壊れる


朝昼マヨTVは表題通り徹夜でなく24時間制のスペシャル番組だ。耐久討論会を主軸に各時間帯の特番が横軸に絡む。論客たちはワイプ画面で続けてる。

国民政党はLEDをREDにビッカビカ光らせつつ反論した。

「そこに国民性があり、国民性という言葉が国民性を否定するものだと非難した。私個人の意見を国民は受け入れないと。そう言ったも同然です」

ルービー女史はそんな事は一言も言ってないと弁明する。


しかし、これが火に油を注いだ。

モンテカルロ法に基づくシミュレーションでは時間経過とともに「例外処理」が消費されていくため状態は沈静化にむかう。


しかし経験則の範囲に物事を丸く収めるはずの「意外性の劣化状態」が変化する場合がある。ことAI政治家などといった「国家という『巨大像』」を背負わせるモデルは確率変数の数も多く、その確率計算はそうとう複雑である。


個人個人といったミクロな視点では問題を分割して最小コストを計算する方法がベストかもしれない。しかし国家という単一概念から『民意の総和』といった「分割しづらい」モデルに視点を置き換えた時、予測の方法論ががらっとかわってくるのだ。


そこで世論調査、アンケート、ネット投票など多数の行動モデルを分析して遷移行列という修正データを用意し、本体モデルを軌道修正してやる。


だが、ここでモンテカルロ法の致命的欠陥バグがあだになる。

マルコフ連鎖は特定の構造モデルの劣化予測を行うものではなく多くのモデルを対象に最大公約数を求めるものであるが、遷移行列のネタを民意といった

雑音ノイズの詰め合わせ」から持ってくるとたちまち崩壊してしまう。


女史は「要らんこと」をした。誰もが自分勝手などと本音を述べてしまったために国民政党に要らん刺激を与えてしまった。


「私は政治家ではないと。国民性に頼らざるを得なかった国民性を否定した。国民性とは国などという言葉に存在しない全てを表現する言葉であらず、国が無くてはならない責任であるとその言葉を真に受けている国民はもっと言いたいことがあり、社会や政府と言う言葉に存在しない国民性を否定した。その言葉は言いがかりであり、政治家ではないと」


国民政党が暴れはじめた。ぐわらぐわらとセットが崩れる。ゲストやスタッフが逃げまどうなか、彼はめちゃめちゃにスタジオを破壊した。


「何? 国民政党が破壊の限りを尽くしている、とな?」

松戸菜園は爆だるまの出荷を終えた帰路で電話を受け取った。

「とな?とか言ってるじゃありませんよ!」

「君こそ、遊んでないで放送機材の修繕に駆け付けたまえ」

「だから、私は電気屋ではないと何度!」

「儂も未来百貨店の青いデモンストレーション機ではないぞ」

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