AI政治家の開発環境


AIが立候補するにあたって相応の喧々諤々があった。まず人権の線引き、維持費の財源、運用者の中立性、ハッキングの懸念、ソフトウェアの潜在的誤謬性だ。しかしそれら下位の問題は徹底的に細分化し論理計算に単純化できる。

民主主義は賛成か反対か二項対立だからだ。ソフトウェアの世界は階層化という技術で克服している。つまり、人間の大脳皮質が動物本能に乗っかっているように、下位の処理は徹底的に簡素化されている。原始的なサブルーチンを組み合わせて電子の単細胞を築き、そこから魚が陸にあがるように進化の階層レイヤーを敷く。最上階は人の心にたどり着くという構造だ。


出来るのか、という小鞠の問いに

「AI政治家の開発環境は既に整うとる。モンテカルロ法じゃ」、と博士は述べた。

「はぁ…」

政府の使者は脂汗をかいた。

「吐息したいのは儂の方じゃ。ドラえもんではないと何度言わせる気じゃ。それに以前、群論を軽んじたがために自衛隊に治安行動を招いたのは君だぞ」

松戸菜園はとうとうと説教した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る