要注意人物
「ちょっと言いすぎじゃないのか」
ミモザの物言いをリンダがいさめる。マロンは顔を曇らせるようなこともせず司祭らしく素直にミスを認めた。だが謝罪以上の感情は示さなかった。いちいち参拝者に共感していては深みに嵌まって抜けなくなるからだ。
「エレナを喪った気持ちはわかる。だが彼女の死は誰の責任でもない。ジェシカの技量不足でもない。それに私の力で復活させると言っただろう」
男勝りなリンダはついこういう場面で気丈さを発揮する。それがまだまだ保守的な王国において煙たがれる原因でもある。とまれ一行は王都を目指すことにした。リンダやマロンの属する教会は王都に大聖堂を構えている。高レベルな魔法はたとえ非戦闘用でも色々と面倒な手続きが必要だ。例えば大規模な
高僧たちにエレナがどんなにかけがえのない女性であったか、妻であるリンダと愛情関係はどうなるのか、ミモザは説得してエレナ復活の必要性を認めてもらう義務がある。最後に大主教が復活魔法の承認してようやく魔導書が発動する。
マロンはハーピーの主を紹介した成り行きで同行することになった。
「とにかくジェジカは要注意よ。それで王都に一緒に連れて行くべきかどうか」
ミモザは不信をあらわにした。エレナと密通するようなふしだら女である。そして防御魔法が力不足なためエレナを護れなかった。
「このことを話したら、ジェシカは隠れて策を弄するでしょう。むこうはわかっていますよ」
リンダが言うと、マロン司祭は頷いて答えた。
「ええ。そう思うよわ」
「どうしても心配でならないの」
ミモザが言うと、マロン司祭は黙り込んだ。その様子を見て、リンダはミモザについて何か言いたげな表情をしていたが、少ししてから話し出した。
「私にはそんな気がありません。でもジェジカは私を見てきたようでした。何か心配ごとがあるのはむこうかもしれません。万が一に備えて私が監視します」
マロンが提案したが、やらかしたばかりじゃないか、とミモザにツッコまれた。
「でも、司祭はミモザより魔法が使えるだろう。攻撃も防御も治癒も有事に備えて一通りのスキルは揃ってる。修道院で鍛えられてるだろ」、とリンダ。
「それもそうね」
その場はそれで話が決まった。明朝出発だが、その前にやることがある。
義父であるアロンソ伯爵に事の顛末を話し承諾してもらわねばならない。まだまだ女子旅は一般的でない。それに伯爵令嬢が王都にふらりと出かけるとなればいろいろ周囲がざわめく。村で騒ぎをおこしたミモザともなればなおのことだ。
「女だけのパーティーを都会にやるわけにはいかんな」
アロンソは渋い顔をしたがミモザが頼み込んだ。
「お父様、私たち婦妻は子供を授からないんですよ。せめてハーピーぐらいてもいいでしょう」
「ハーピーに家督は譲れんぞ」
「いいの。それに司祭も一緒に来てくれるって」
その一言で伯爵は折れた。
旅を楽しもうとマロン司祭の護衛をリンダとミモザは務めることになった。
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