ミモザの蘇生

あの夜の出来事が心に刺さっている。


ミモザは礼も忘れてエレナを抱きかかえる。

「ごめんね。ミモザ。この子と内緒で付き合ってた。恋愛相談に乗ってくれたり。けど、蘇生が効かないの」

力及ばず泣きじゃくるジェシカ。

「手遅れだ。だがハーピーは私の力で蘇生できる」

リンダはそう断言した。


あれからエレナは礼拝堂に安置されている。時間停止の魔法が効いているため

肌つやがいい。

リンダが通う教会の仲介で女司祭のマロンが呼ばれた。

どうやら彼女の見立てではエレナの魂の器が開いていない様子だ。

「どういう事なの?」

ミモザが目を見張る。


「もう、この子の魂はここいらにはいないから・・・」

マロンはかぶりを振った。

そこでミモザは泣きだした。何も知らない。自分も知らない。エレナという親友も知らない。知らないふりだ。

そうやって現実逃避しないと心が砕けてしまう。

涙が枯れるまで嘆いていると

ジェジカ達の姿が見えない。

「眷属使いのハーロープを知ってるかい?」

マロンが問うと

ジェジカがああ、と言ってから戻ってきた。

「あの人が言ってたかな、ハーロープとハーピーは呼び合うんだよ」

「え、ええ。知っています」

「それで、その噂を立てちゃったんだよ」

「噂って?」

「あ、あの娘が帰ってこないって」


リンダとジェジカは「まさか」と顔を見合わせるとミモザは「やっぱり」と言って泣き出した。

アロンソ家の長女グレタは顔の痣にコンプレックスを感じていた。伯爵はリベラリストで村人にグレタの知能や良心に瑕疵はないと説き分け隔てなく接するよう求めていた。グレタが出て行ったのはミモザをそそのかした経緯と同じではないか。そしてエレナを遣わしたのは眷属使いのハーロープだというのだ。

ハーピーが飛び回っていることは御屋敷の周囲でも噂になっていた。グレタにとっては渡りに船だ。

「どうする?」

そんな中、ジェジカが気づいた。

「彼女に知らせないとね。きっと喜んでくれているよ」

アロンソ家の次女はグレタの手掛かりを朗報と受け取るだろう。

ミモザは涙を拭うと自分の鞄を開けて魔法袋を取りだし中身を調べる。

「どうやらこれは”魔法袋(ウィンド・バン)”だね」

「”ウィンド・バン”!? それは一体・・・」

「そうか、それじゃあ、ジェジカ様には内緒でお願いしたいな」

そうしてマロンはミモザとジェジカを教会に連れて行き、ジェジカの父の司祭に話を聞きに行った。司祭もエレナのために魔法袋と魔導書を使う許可を出してくれた。ミモザはその手紙を見せられて驚くことに、中身を見て絶句してしまった。

「・・・こんな手紙が?!」

「はい。ハーロープからの贈り物ですけどね」


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