第8話 二人でずっといられたら……
そして月日は流れ、俺は中高一貫教育の学校に通っている。
あの日から俺の目標は決まった。
英語を覚えて、サラのいるところに留学しに行く。
そのために、留学制度のある学校を選んだ。
もう一度サラに会いたい。
サラに会うためだったら何でもできる気がした。
高校生活二年目。今度こそ試験を突破して、留学するためのチケットを手に入れてみせる……。
「達也、顔怖いよ。そんななに留学したいの?」
「そのためにこの学校に来た」
「学年トップクラスの達也が留学ね……。試験何回目?」
「五回目……」
クラスメイトは、俺がなぜ留学にこだわっているのか知っている。
俺はどうしても留学のチケットが欲しい。手に入れなければならないのだ。
──キーンコーンカーンコーン
担任の先生が教室に入ってくる。
先生の話を聞き流し、参考書に集中する。
「──ということです。では、自己紹介を」
自己紹介? 誰か来たのか?
教壇の方に目を向けると初めに目に入ったのは金髪の長い髪だった。
そして、その次は青い瞳。
彼女は後ろを向き、黒板に文字を書く。
カタカナで書かれた名前。
『サラ=テイラー』
目を疑う。あの小さな女の子と同じ名前。
「サラ=テイラーです。アメリカから引っ越してきました」
海外からの転校生。そして、俺の知る名前。
俺は無意識に立ち上がり、ゆっくりと教壇に立つ少女に向かって歩きだす。
「サラ……」
「達也、私は約束守ったよ。日本語勉強して、会いに来た」
ここで取り乱してはいけない。
彼女の瞳を見て、ゆっくりと口を開く。
『ずっと、会いたかった。あの日から、サラの事がずっと好きだった』
笑顔でサラは答える。
「みんなの前で告白? かっこいいね」
頬を赤くし、サラは微笑む。
クラスの中がさらにざわつき、気が付いたら拍手が鳴り響いてきた。
「すごいね、日本もこんなこと起きるんだ」
「すごくないっ!」
俺は自分のしてしまった事を振り返り、とんでもないことをしでかしたと気が付いた。
この場は戦略的撤退!
「先生! 具合が悪いので保健室に行ってきます!」
「先生、転校初日で疲れてしまいました。保健室に行ってきます」
俺はサラの手を引き、走って教室を出ていく。
「達也、日本の学校楽しみ!」
「学校だけじゃない。これから毎日楽しくなるさ!」
ホームルームが始まっている各クラス。
廊下は俺とサラの二人だけ。
あの日、離してしまった手を俺は今握っている。
「もう二度とこの手は離さないからな!」
「私も! もう二度と達也から離れないから!」
俺たちの高校生活。
そして、この先もずっと二人でいられたら……。
また、君に会いたい ~隣に引っ越してきたのは金髪の女の子でした~ 紅狐(べにきつね) @Deep_redfox
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