第7話 二人で交わす最後の言葉
あの日から俺は少しだけ英語を勉強するようになった。
そして、俺は両親、サラたちと一緒に空港にいた。
「また、日本に来てくださいね」
「今度は奥さんも一緒に」
「また、きまーす。ありがとございました」
俺はサラと何も話していない。
話せない、うまく言葉が出てこないんだ。
「まだ少し時間があるな。達也何かお土産でもその辺で買ってこい」
へ? お土産はさっき渡したじゃないか。
『サラ、達也君と一緒にお土産を買ってきてくれないか?』
『おみやげはもう買ったでしょ?』
『いいんだよ。ほら、達也君も買いに行くだろ』
俺はサラと二人でお土産を買いに、適当に店に入る。
出発までまで少し時間がある。
「なにほしい?」
「……なにも」
「なんだ、せっかくなんだしなんでも言えよ」
「いらない」
さっきから機嫌が悪い。
俺が何話してもそっぽを見てしまう。
「……屋上に行ってみるか?」
無言でうなづくサラ。
俺はサラと一緒に屋上へ行ってみた。
空は快晴、雲一つない。
夏の日差しが俺とサラを襲う。
「何か飲む?」
俺はサラにジュースを買って渡した。
フェンスを背中に、二人で並んで立つ。
「帰っちゃうんだな」
「うん」
「また、日本に来るのか?」
「わからない」
「日本も楽しいところだろ?」
「うん」
会話が続かない。
サラが俺の手を握る。
「たつや、わたしかえりたくない。にほんに、たつやといっしょに」
握られた手を握りかえす。
「また来いよ。俺、英語勉強してもっとサラと話がしたいんだ」
「わたし、にほんご、べんきょうする。また、にほんにくる」
「約束するか?」
「やくそくする」
サラと軽くハグして、お互いを確かめ合う。
「サラ、俺少しだけ英語覚えたんだ。聞いてくれるか?」
少し涙目になりながら、サラはうなづく。
サラの目を見て、ゆっくりと口を開く。
『また、君に会いたい』
ちゃんと伝わったかな?
「私も、またあなたに会いたい」
サラははっきりと日本語で話してくれた。
「サラ……」
「わたしも、にほんご、もっとがんばるよ」
そして、無情にも搭乗手続きが始めるアナウンスが流れ始めた。
俺とサラのお別れの時だ。
ゲートに入る直前、サラは俺の頬に軽くキスをしてそのまま振り返り去っていった。
短い、俺のちょっとした物語はこうして終わりを告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます