第2話 二人でお出かけ


 その日の夕飯、母さんと父さんを食卓を囲む。


「テイラーさん、カメラマンなんだって」

「カメラマン? 仕事で日本に来たのか?」

「しばらく日本に滞在して仕事が終わったら帰国するんですって」

「そうか、サラちゃんにとっては小旅行だな」

「外国に小旅行。楽しいでしょうねー」


 両親の会話を聞き、なんとなく違和感を感じた。

隣に引っ越してきたサラ。いつも一人で、何をしているんだろう。

さっきも一人で部屋に帰っていった。


「さっき一人で公園にいたよ。鍵も持ってたし、家に誰もいないんじゃないかな?」


 自分がさっきしたことを二人に伝える。

少しだけ、食卓が静かになってしまった。


 そして、週末の夜。

いつものように家族で食卓を囲む。


「達也、明日と明後日遊びに行ってこい」


 初めから遊びに行く予定だった。


「行くよ。多分明日は公園で──」

「サラちゃんと一緒に出掛けてきてくれ」

「え? なんで?」

「テイラーさん、仕事で不在なことが多いだろ? お前と年も近いし、どこかに連れていってやってくれ」

「嫌だよ、あの子と話できないし──」


 会話ができない。意思の疎通ができない。

どこに行けばいいかもわからないし、何をすればいいのかもわからない。

でも、サラも一人でつまらないだろうな……。


「……わかったよ。明日と明後日出かけてくればいいんだろ」

「お、乗り気だな。よし、少しだけど小遣いをやろう」


 俺は早めに夕飯を終え、明日に備える。

どこに行けばいいんだ?

海外の子って、何して遊ぶんだ?

全く分からない……。


 ◆ ◆ ◆


「行ってきます」

「行ってらっしゃい。事故には気を付けてね」


 母さんに見送られ、隣のサラをむかえに行く。


──ピンポーン


「こ、こんにちはー」


 声を出した直後扉が開く。

目の前に出てきたサラは髪を結び、ふわりとした白いワンピースに、ピンクのポーチを付けている。

青い瞳を輝かせながら、俺の方をジーっと見ている。


「お、おぉう、おはよう」

『おはよう。よろしくね』


 だが、この後どうすればいいのか、何も決まっていない。

とりあえず、駅の方に向かって歩き始める。

少し離れて後ろからサラがついてくるが、会話はない。

俺は立ち止まり、振り返ってサラに話しかけた。


「おい、どこに行きたいんだ?」

『なに?』

「行きたいところないのか?」

『ごめんなさい。何を言っているか、わからないの』


 あー、めんどくさい!

俺はサラの手を取り、歩き始めた。


「とりあえずついてこい」

『どこに行くの?』


 言葉がわからない以上、こうして無理やり連れていくしかない。


 ついた場所は駅近くのショッピングモール。

俺はサラの手を引きながら中に入り、ぶらぶらする。

サラはキョロキョロ周りを見回しながら、歩いていた。


「アイスでも食べるか?」

『アイス?』


 アイスはなんとなく通じるようだ。

お店に並び、好きなアイスを選んでいく。


「すいません、これとこれ、ダブルで」


 サラは少し頬を赤くし、もじもじしている。

何を照れているんだ? 早く頼めばいいのに。


「いらっしゃいませ、何にしますか?」

『ここから、選べばいいんだよね?』

「好きなもの選べよ。一個でも二個でも」

『えっと、この青いのと白とピンクの混ざったものを』


 サラは指でアイスを指しながら選んでいく。

これは聞き取れた! 色はわかるぞ!


「すいません、これとこれ。俺と同じダブルでお願いします」


 お店の人に伝え、俺とサラのアイスが出てきた。

ここで食べてもいいけど、このモールはテラスもある。

アイス片手に、二人でテラスへ移動してみた。

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