また、君に会いたい ~隣に引っ越してきたのは金髪の女の子でした~

紅狐(べにきつね)

第1話 二人で帰ろう


 学校が終わり、友達と遊んで夕方の鐘をききながら家に帰る。


「ただいまー」

「おかえりー」


 台所から母さんの声が聞こえる。

そう新しくないアパートの一室。


 手を洗い、自分の部屋でベッドに転がる。

んー、おなかすいた!


「たつやー、先に宿題しちゃいなさいよー」

「夕飯の後にするー」


──ピンポーン


 チャイムが鳴る。誰かが来たのか?


「達也、代わりに出てー」

「わかったー」


扉を開けるとそこには、金髪の大男が俺を見下ろしていた。


「か、母さん!」


 思わず大きな声を出してしまった。

母さんは大慌てで玄関に来て、目の前の金髪男を見ている。


「コンニチハ。トナリニ、コシテキタ、テイラートイイマス」

「こ、これはこれは……」


 母さんは大男が差し出してきた箱を受けとる。


「コッチハ、ムスメノ、サラデス」


 男の後ろに隠れるようにこっちを眺めている女の子。

こっちも金髪。しかも目が青い。

二人は挨拶もそこそこ帰って行ってしまった。


「外国の人が隣に引っ越してくるなんて……。大丈夫かしら」


 母さんは何かを心配している。

どうしてこんなところに引っ越してきたのだろうか。


 ◆ ◆ ◆


 それから数日、いつものように学校へ行き、友達と遊ぶ日が続く。

いつもの公園で鐘が鳴るまで遊び、みんなさっさと帰ってしまった。


 自分も帰ろうと公園から道路に出たとき、一人の女の子が公園に入ってくるのが目に入る。

そして一人でブランコに乗りはじめた。


 こんな時間に何で一人なんだ? もう鐘はなったぞ?

公園の外から、ブランコに乗る女の子を覗く。

金髪の女の子。うちの隣に引っ越してきた女の子だ。

多分、年は同じくらいだろう。少しだけ俺よりも背が高い。


 もし、事件に巻き込まれたらめんどくさいことになるかもしれない、

安全な日本といっても、事件は起きているからな。


「おい、帰らないのか? 鐘はなったぞ?」


 ブランコに乗る女の子に声をかける。


『なに? 私に何かよう?』


 何を言っているのか全く分からない。


「何と言ったんだ? 日本語話せよ」

『あなたが何を言ってるか、わからないわ』

「まいったな……。あー、家、帰る、暗くなる」


 ぽかんとした表情の女の子。

どうしよう……。声をかけなければよかったかもしれない。


 俺は手首を指で刺し、走るそぶりを見せる。

時計、時間。家に走って帰る。ジェスチャーで伝わるのか?


『時間、走る?』


 伝わっているのか、いないのか全く分からない。


「ここに住んでいる子供は、鐘が鳴ったら帰るんだよ! いいから帰るぞ!」


 女の子の手を取り、公園の出口に向かって歩き始めた。


『何するの!』


 なんか叫ばれた。


「いいから、帰るぞ! 俺も帰るんだ。家、隣だろ」


 何かを俺に伝えようとしているのか、半分無理やり家まで送った。


「ほら、ついたぞ。じゃーなー」


 自分の家に帰ろうとしたとき、彼女は首からネックレスを取り出た。

そして、その先にぶら下がったカギを握り部屋の扉を開け、中に入っていった。


 鍵? 家に誰もいないのか?

 

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