chapter16 名探偵ヘレン。ここに、参上っ!
“
襲ってきた蛮族の数、入り込んできたレッサーオーガやディアボロの死体の数から、すでに一段落がついていた。
現状、物損被害はいくつかの壊れた窓や壁、魔道機が発見されており。
もっともひどい被害がひどかったのは一等列車の特別車であったが、そこの応急処置はしており、割れた窓ガラスなども交換完了している。
共和国の議員の息子であるキース・アイデンスは、襲ってきた強盗のリーダーと思しき蛮族を倒しており、この応急処置の部屋にも文句を言わなかったことから、当初の我儘な貴族様のイメージは払拭されていた。
人的被害者は、何人かの乗務員や護衛に負傷者が出ているのに加えて、二等列車の乗客三名が行方不明になっている。
負傷者の方は、冒険者たちの助力もあり、列車運行に支障がない治療が施されており、通常業務に戻りつつある。
ただ、一方で行方不明になった乗客三名の姿は、以前として見つかっていない。
蛮族に襲われていたドワーフ運転機関士を救ってくれたところまでは生存が確認されていたことから、列車の外に置いてけぼりにされていないのか……そこを心配されていた。
救われたドワーフ運転機関士も、なんとか引き返して確かめられないか直訴にいったらしいが。蛮族が襲撃してきた場所に戻ることは、乗客全員を危険に晒しかけない為、却下されている。
現在、確認のために、冒険者を別途雇えないか、検討中となっていた。
GM さて、皆さんが色々と片づけた後、3時間ほど睡眠をとった後は、そんな状況でした。すでに、昼過ぎです。
(アクルゥ えええ、じゃあ、わたしたちからすると、ハイエさんやソーリさん、グーマさんが行方不明ってことに……?)
(ヘレン そうなる。……ああ、プレイヤーはどこにいるか知っているけど、どうすればいいのか分からない)
(ビリー ちなみに、俺たちはこれからどうする、って話か。別に救出や捜索の依頼もないんだろう?)
GM ええ。今回の蛮族襲撃の件で、皆さんは感謝はされて、報酬も支払われる予定になっています。しかし、本来乗客である皆さんにこれ以上の依頼はしないでしょう。
ここで、最後の選択です。
まず、ここから先は、冒険者チームから他のキャラクターにはチェンジしません。最後まで、冒険者チームになります。
それと、同時に。未だに“巨万の魔石”の存在を知らない冒険者チームでは、ソレを巡るシナリオの関与はできなくなります。
(三人 あっ……)
GM その為、このままなにもしないのであれば、冒険者チームとしては、多少の気になることはあるでしょうが、エンディングを迎えることになります。
それはきっと、ハッピーエンドとなるでしょう。
(アクルゥ え、ハッピー……ですか?)
GM ええ。キングスレイ鉄鋼共和国に三人揃ってたどり着く。そんな冒険者チームにとっての、ハッピーエンドになります。
GM そして、彼ら――護衛チームや強盗チームがどうなったのか? そちらについては、このセッションが終わってから、後日、お知らせしようかと思います。
(ビリー 待て待て待てッ! ソイツは、絶対にハッピーエンドじゃない奴だろう!?)
(ヘレン ヘレンにも分かる。無視できない)
(アクルゥ ハイ! だって、みんな……みんな、絶対に仲良くなれる……そんな人たちばっかりなんですッ!)
GM それでは、皆さんがこの状況でなにができるのか、考えてみてください(笑い)。
(三人 ロクでもない笑い方!!?)
*【サノバガンこそこそ噂話9】このリプレイは単発シナリオということで、途中で報酬や経験点は一切入らないよ。でも、セッション回数としては、実は3回に分けてやってたんだ。
(ビリー (色々と相談しつつ)とりあえず、護衛チームには接触する。まずは、そこからだな……)
(ヘレン 顔見知り程度だけど……。でも、きっかけは充分)
(アクルゥ 後は、ハイエさんたちがいた二等列車の客室とか、見せてもらえないんでしょうか?)
GM 車掌や列車の護衛の人と一緒とかであれば、問題ありません。皆さんはこの列車の救世主でもあったので、割と融通は利きます。本当は席があれば、三等列車ではなく、二等列車に移ってもらってもいいぐらいです。
(ヘレン ちょっと煮詰まってきたし、一旦、行動する。情報が増えるかもしれない)
(ビリー ……だな。あんま、考え込んで動かないのは、らしくねぇってな)
(アクルゥ ハイ! “下手の考え休みに似たり”ってやつですね(無邪気な笑顔))
(一同 お、おうっ!(汗))
GM 辛辣ぅ……。でも、それぐらいの気楽さで、いいと思いますよ。
GM まずは、ジャンクォーツたちに会いに、一等列車に向かう最中のこと。その途中の貨物列車のところで、アターシャとジャンクォーツの言い争いのようなものが聞こえる。
ビリー ム、痴話喧嘩か?
GM/護衛二人 「うぇい、少し落ち着け、アターシャちゃんっ。別に、今回の件は誰も悪くない。それは、キース様も含めて全員だ。それは分かっているんだろ?」「分かるが、分からんっ! “アレ”には、可能性があるかもしれん。何も試さずに、このまま共和国に帰るのは我慢ならん!」「アターシャちゃん。でも、“アレ”が今はどこにあるのか分からないっしょ」「だから、こうして探して……」「こんな貨物のあるような場所なんて、とっくに探してるっしょ」
(ヘレン ……なるほど。確かに、こんな貨物列車なんて分かりやすいところに、“アナグマ”みたいな大男がいたら、すぐに見つかる)
(アクルゥ 強盗チームの逃亡場所、逃亡場所……確か、そんな話でしたよね?)
(ビリー まあ、いいさ。ともかく、話に割り込むチャンスだと思うぜ?)
ビリー (肩を怒らせながら)おうおう。そこにいるのは、列車強盗のリーダーを倒した、英雄様じゃァねぇか。
ヘレン ビリー、なんで、そこでチンピラになる……?
ビリー あ、ヤベ。つい癖で(笑)。
アクルゥ 仕切り直しで、ハイッ!(笑)
ビリー (TAKE2)なんだい、なんだい、喧嘩かい? (ハァハァハァ)そんな若造より、これから、おぢさんと……。
アクルゥ 《鎧貫き》ッ!! なんで、ソッチ!?(笑)
ヘレン すすまねーので、ヘレンが聞く(笑)。
GM お願いします(笑)。
ヘレン ちょっと聞きたいことがある。
GM/ジャンクォーツ 「ウェイ? おっと、冒険者のヘレンちゃんじゃん。どったの?」とさっきまでの空気をなかったかのように、明るい雰囲気で返事をしてくる。
ヘレン 実は、行方不明になった乗客を探している。名前は、ハイエ、ソーリ、グーマ――エルフとルンフォークとリカントの三人。なにか知らない?
GM/ジャンクォーツ 「あー……オレたちも、ちょっと探しているっしょ。まあ、この貨物列車にはいなかったみたいだけど」
ヘレン 知り合い?
GM/ジャンクォーツ 「いや、あんまり。でも、放っておけないっしょ? ……ちなみに、ヘレンちゃんたちは、どういった知り合い?」
ヘレン ヘレンたちは、乗車券を賭けて…………。あっ。
アクルゥ ヘレンさん?
ヘレン あ、なんでもない。列車に乗る前に、酒場で会った関係。そういえば、一等列車の部屋って、やっぱり、広い?
GM/ジャンクォーツ 「ウェイ、興味ある? いやぁ、仕事柄いること多いけど、やっぱ、二等列車とかと比べても、広さは全然違うっしょ」
ヘレン シャワーとか完備だっけ?
GM/ジャンクォーツ 「ウェイウェイ。この砂漠の真ん中で、使いまくれるのとかって、ヤバいっしょ!」
ヘレン ウン、分かった。早く見つけたい。……じゃあ、ヘレンたちはこの辺で。
GM/ジャンクォーツ 「ウェイ! んじゃ、またね」とアターシャと一緒に立ち去っていく。
アクルゥ ヘレンさん? なにか分かったんですか?
ヘレン ……(耳打ち)……。
ビリー あー、なるほどなぁ。念のため、車掌とかに話聞いてみるか? どうやって、列車内を調査したのか。
GM まあ、そこはすっ飛ばして、聞けたことにします。
/車掌 「確かに、乗務員、乗客を含めて、蛮族が紛れ込んでいないのか、しっかりと確認させていただいております。一等列車のお客様も、もちろん、例外なく対象になっております」
ビリー じゃあ、一等列車の部屋の中って、確認してるのか?
GM/車掌 「ああ、破損個所がないかは簡単にお聞きしましたが、特に問題ないようでしたら、そのままにさせていただいております」
ビリー OKOK。なるほどねぇ……。
(ヘレン 頭は大人。身体も大人……名探偵ヘレン。ここに、参上っ!(ポーズ))
(ビリー ヘレン、その体型で大人は無理があるぞ?(苦笑))
(ヘレン ヘレンは、立派な
(アクルゥ でも、部屋の中はあまり調べていないから、護衛チームのいる一等列車に、強盗二人が捕らわれていることに、気づかれなかったんですねぇ)
(ヘレン 問題は、“アナグマ”がいるであろう場所。あの強盗三人……まあ、少なくとも“サソリ”は普通ではないとヘレンたちは認識しているし。誰が、一等列車に“アナグマ”を匿っているのかが、さっぱり分からない……)
*思ったよりも早くに強盗チームの逃亡場所が、ばれてしまいました。そう、セッション開始時に行ったビリーとの乗車券賭け。そこにあった“一等乗車券”の存在にヘレンは気づきました。二等乗車券も、賭けで取られたビリー、ヘレンの二枚。そして、乗車前に三等乗車券3枚と交換した、アクルゥの二等乗車券1枚。強盗チームは、計4枚の乗車券を持っていたことになります。
ヘレン じゃあ、一等列車に行く。
ビリー へっ、本来なら俺が泊まるはずだった場所だ。ちょっくら、挨拶してこようじゃあねぇか。
アクルゥ ビリーさん、さっきみたいなチンピラムーブをしたら、即座に
ビリー (煙草をくわえながら)うへー……最近のアクルゥは、容赦なくって困るぜ。出会った頃の純粋なアクルゥはもういないのかねぇ……(遠い目)。
アクルゥ わたしは変わっていませんって!
ヘレン きっと、アクルゥも大人の女になった。それだけ。
アクルゥ そう、わたしも“大人の女”に……いえっ。ハイ! 行きましょう!(赤面)
ビリー (にやにやと)アクルゥは、なにを考えちゃったのかなぁ? おぢさんに、ちょっくら教えて――
アクルゥ
ビリー ゴボッ……。の、乗り込む前に、負傷者が……。
ヘレン ほら。遊んでないで、行く。
アクルゥ ハイ! 今、行きます!
……。
…………。
向かった先は、キース・アイデンスのような一車両を丸ごと使ったコンパートメント個室ではなく、一車両に3つの個室がある一等列車となる。
とはいえ、狭い一部屋ごとに4人が寝れる二段ベッドを並べただけの二等寝台車。そもそも、ベッドすらない三等列車に比べれば、その快適さは雲泥の差である。
その一等車両の一つである部屋の前に立ち。
いつでも、銃を抜けるようにしながら、ビリーが扉をノックをする。
反応はないが、中に人の気配がいるのは、なんとなく分かり、強めにノックをする。
「いったい、何の用ですか!? ルームサービスは、頼んでいませんよ?」
そこには、眼鏡をかけた神経質そうな男がいた。
一瞬で、ビリーたちが三人が視線を交わし。
「誰?」
とつぶやくも、それは相手も同じことであった。
「貴方たちこそ、いったい、誰ですか?」
GM というところで、異常感知判定。
ビリー (ころころ)成功!
GM では、手前にあるシャワールームに、人の気配があるのを感じる。
ビリー おっと、すまねぇっ! ちょっくら、お宅拝見っ!(と、入り込んで扉を開ける)
GM/眼鏡の男 「おい、待てっ!? そこは……」と止めようとするが。ビリーが開けた瞬間。大柄な男が、モールを振り回してくる。不意打ちではありません。
ビリー (ころころ)回避失敗。
GM/“アナグマ” 「グガアァァァ!!!」(ころころ)22点。狭いところで、振り回したせいか、多少の壁とか壊してしまう。
ビリー 痛ってぇぇ!!? 容赦ねぇな、お前ッ!
他二人 ビリー(さん)!?
ビリー 待て、待ちやがれ! 別に、俺たちはお前たちと戦いに来たんじゃねぇ!?
アクルゥ そうなんです! わたしたちは、ハイエさんたちが心配で!?
ヘレン ビリーッ! ここは、「ほら、怖くない。おびえていただけなんだよね」って言うところ!(一同笑)
ビリー 言えるか!?(笑) ヘレン、お前にはこいつが怯える小動物にでも、見えるのか!?(笑)
GM あ、あ~……その、間違ってはいないんです。リカント語が分かる人には、そういうニュアンスも含まれているのが、なんとなく分かります。
ヘレン 合ってたっ!!?
ビリー 言った本人が、一番ビックリしてるぞ(笑)。
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