chapter15 貴族様風情に、何が分かる?

GM さて、ここでプレイヤーの皆さんには選択肢があります。今は、ちょうど7ラウンド目にあたり、列車が微速ながら動き始めたところです。

 そして、同時に、この一等列車のコンパートメント個室にはちょうど、強盗三人組がたどり着きました。次の8ラウンド目に護衛のジャンクォーツがたどり着きます。

 ……護衛チームと強盗チーム、どちらをやりたいですか?

(三人 おっ! ここで選ぶの!?)

GM はい。キースが持つ“巨万の魔石”を狙っている強盗チーム。そして、強襲してきた蛮族と、別途襲ってきた強盗チームから“巨万の魔石”を守る護衛チームとなります。

(一人 ちなみに、冒険者チームは?)

GM 残念ながら、彼らがこの状況に入り込むのは、かなり後になる予定です。

(三人 (相談開始))



 *プレイヤーたちは強盗チームを選択。最大の理由は「もう難しいことを考えたくない」でした。



GM さて、侵入経路を決めてください。一等列車の部屋側の窓か、廊下側です。

強盗三人 「「「部屋側!!!」」」

GM OKです。皆さん、外から飛び込む形になるので、軽業判定をお願いします。失敗すると、転倒状態になります。

“ハイエナ” ハハ、僕らはファンブル以外は大丈夫! 問題なし! さてと、それで“巨万の魔石”はどこかな?

GM まあ、宮廷服を着た貴族らしき男が、幾何模様の魔晶石らしき材質の箱を持っているので、それだと思う。それに、“巨万の魔石”という言葉を聞いて、ディアボロや護衛のアターシャなんかも、そこに視線を思わず送ってしまうしね。

“ハイエナ” OKOK! やることは分かってるね、“サソリ”!

“サソリ” 「分かってるデス、“ハイエナ”」……その男に、蹴りかかるデス。

GM/護衛たち 「む、賊!? 蛮族ではない……、乗客に確かいたような……?」「セイゲン、すまない。まずは回復を頼む……ディアボロの攻撃に、耐えられん」「分かったでござる。まずは、落ち着いて対処せねば!」ということで、先制判定をお願いします。

“アナグマ” (首を横に振って)グガァ……。

“ハイエナ” (ころころ)出目も悪いし、レベル差があると無理かぁ(苦笑)。僕らの《ファストアクション》も潰されたね。

GM/キース 一方で、キースの方は《ファストアクション》が可能になる。



 *このリプレイのラウンド進行は、列車の発車時間や時間軸を分かりやすくするために、ずっとカウントしています。しかし、戦闘そのものは、全て別枠として扱い、毎回、先制判定などが発生することとしています。今回の戦闘順は、「キース&護衛→ディアボロ→強盗チーム」となりました。



GM/護衛チーム セイゲンは《ディフェンススタンス》をしつつ、アターシャに回復魔法。アターシャは、《変幻自在》+《マルチアクション》+《魔法拡大/数》で回復魔法をキースを……含めて、三人に使います。攻撃対象は、指令を出していた“ハイエナ”。

  /アターシャ 「賊め! 私の剣の錆にしてくれる!」(ころころ)

“ハイエナ” (ころころ)ハハハ! 君程度の実力じゃ、《回避行動》を持つ僕に、かすりもしないよっ!

GM/キース キースは……そうだね。君たちよりも、能力的に厄介なディアボロを狙うか。それと、ルンフォークでメイド姿の“サソリ”を見て、思わず躊躇してしまったところもある。

“サソリ” (小首傾げて)それは、光栄デス?

GM/キース 「ここも、千客万来ということだね。それにしても、今夜は招かれざる客が多すぎるとは思うんだがね(苦笑)」4発の〈レーザーバレット〉があたり、ディアボロの胴体部位をHPゼロにする。残り、頭部のみ。

“ハイエナ” えっ、貴族様はやっぱり強いね……。味方だと、心強いけど、敵になるとヤバいね……アレ。

GM/ディアボロ 「グム……人族が増えたことで、この魔眼の餌食が増えただけのこと!」《邪気の噴霧》+《魔人の眼光Ⅱ》で、ここにいる全員に対して範囲攻撃、確定ダメージ+回復をする。(ころころ)呪い属性の19点ダメージ。プラス、呪いの確定ダメージ3点。

“サソリ” 精神抵抗は厳しい、デス。

“アナグマ” グガァ……(相槌)。

“ハイエナ” 僕はなんとか抵抗できたけど、厳しいねぇ。短期決戦だと、僕らじゃ倒しきれないね。なんとか、“巨万の魔石”を奪うか、狙って落とさせたい。

GM では、主行動でスリ判定に成功すれば、相手から奪える。もしくは、命中-2で“巨万の魔石”を狙えば、ランダムの方向に弾き飛ばすことができることにしましょう。

“ハイエナ” ちょっと、レベルの高い貴族様相手にスリ判定は厳しいかなぁ……。ちなみに、ランダムに飛ぶってのは、どんな感じ?

GM 1Dを振って、誰かのそばに“巨万の魔石”が落ちたかを決めます。乱戦状態なんで、その人が制限行動で自動で拾える。それ以外の人が拾う場合には、器用か敏捷判定で妨害をできる……感じかな。

“ハイエナ” よし。それなら、作戦通りで行くよっ!

他二人 (こくりと頷く)

“サソリ” 距離的に《飛び蹴り》できないので、貴族様に、蹴りを三連撃! 一撃でも与えれれば、毒を与えるデス!(ころころ)

GM/キース (ころころ)一撃、喰らってしまった。たぶん、“サソリ”の姿に動揺してしまったのだろう。

  /アターシャ 「(顔を赤らめて)は、破廉恥な……っ」と、横で見ていたアターシャも一緒に動揺している。

“サソリ” (見られたことを意にも介さず)残念……麻痺毒は、抵抗されたデス。ダメージは18点デス。

GM/キース 「淑女レディとしては、品が足りないようだね……。私が、教育してあげようか?」

“サソリ” お断り、デスっ!! ……ゴメン、麻痺失敗デス。

“ハイエナ” いいよ、“サソリ”。そっちは確率低かったし。仕方ないから、僕がまず“巨万の魔石”を弾き飛ばすことにしよう。

 (ぽつりと)正直、僕らはまだ知らないけど。本当はあんまり、あの“巨万の魔石”に触りたくないんだよね……(苦笑)。

“アナグマ” オデ、そレ拾う?

“ハイエナ” その時は、頼むよっと。(ころころ)《二刀流》で“巨万の魔石”を狙って……よし、出目がいい! 命中成功、弾き飛ばした!




GM では、ランダムで飛んでいく方向を決めます。

 1でキース。2でアターシャ。3で“ハイエナ”。4で“サソリ”。5で“アナグマ”。6でセイゲンやディアボロがいる乱戦エリア。

“ハイエナ” (ころころ)5っ!

一同 おおっ!(感嘆)

“ハイエナ” “アナグマ”、離脱頼んだ!

“アナグマ” グガァ! オデ、拾っタ。《影走り》で、乱戦抜けテ、窓の外に逃げル!

“サソリ” “アナグマ”、やったデス! すごいデス♪

“ハイエナ” 偶然が重なっただけだけど……、すごい! 僕らが“巨万の魔石”を奪えるなんて、想像できなかったよ!

GM (喜ぶ三人を見て)……いや、本当にこの状況になるとは思いませんでした。まさか、この1ラウンドで覆されるとは――強盗チームの強運に感服しました。

 ……しかし、“サソリ”はスカウトのレベル的に《影走り》を使えません。ここから、逃げ出すのは、至難でしょう。

“サソリ” ウン、問題なしデス。――ワタシは、ここで最後まで戦って足止めするデス。いつかの時に、復活させてくれたらうれしいデス。

“ハイエナ” ン、何言ってるのさ? この僕が、“サソリ”を今更、見捨て逃げる訳ないでしょ?

“サソリ” え?

“ハイエナ” 見捨てるなら、もう組織が崩壊した時に、とっくに見捨ててるよ。

“サソリ” “ハイエナ”……。

“ハイエナ” “巨万の魔石”も手に入れた。そして、後はここにいる連中を倒して、後はのんびりと列車旅行でもしようじゃないか。ね、シンプルでしょ?

“サソリ” ウン、ウン……それなら、分かるデスッ!!!

GM/キース 「……諸君らを見ていると、なんだろうね。ひどく、不愉快な気分になる。彼女を、護衛たちを見捨てた私への当てつけでもしているのかね? 本当に、本当に不愉快な気分になる――盗人風情が、くだらない茶番を見せてくれるっ!」

“ハイエナ” それは、こっちの台詞だっ!! に、何が分かる!?



GM/キース 8ラウンド目。本当は、ディアボロを攻撃するか、“アナグマ”を追っていこうかとも思いましたが、キースは“ハイエナ”を狙うことにします。二丁拳銃で〈クリティカル・バレット〉。

“ハイエナ” (ころころ)ムリムリ、2回とも命中。格好はつけたものの、これで終わるかも(苦笑)。

GM/キース (ころころ)24点、21点。

“ハイエナ” あー……“サソリ”、“アナグマ”ごめん。生死判定だ……(ころころ)なんとか成功したけど、気絶した。

“サソリ” は、“ハイエナ”……!?




 エルフの少年である“ハイエナ”は、軽い音と共に、床に崩れ落ちる。

 内臓を傷つけられたのか、撃たれた腹だけでなく、口元から血を流していた。かすかに、息をしていることから、生きていることは分かる。

 しかし、その重症で、このまま放置すれば、死に至ることは明白であった。




 そして、この一連の流れを見ていたセイゲンは、この場所には立場の違うだけの者たちが集まり、そして衝突しているだけなのだと、つくづく痛感するのであった。

 それは、目の前にいる“蛮族”――ディアボロも、そうなのかもしれない。


 しかし、それでも、己自身に譲れないものがある限り、誰かと衝突するのは免れない。

 その結果が今であり、これからでもあるのだ。

 そんなところに、どこか軽い口調で、それでも、その足取りは油断しないまま、レイピアを構えたジャンクォーツの姿が、廊下の向こうから姿を現す。


「ウェイウェイ、これ、どういう状態っしょ? そこにいるの悪そうな奴……魔神? 蛮族? ともかく、セイゲンのおっさんも傷ついてみているみたいだし。暫定的、敵にゃあ、容赦不要っしょ!」




 セイゲンやアターシャには、この複雑に絡み合った状況を変えてくれる――遅れてきた英雄ヒーローのようにも見えるジャンクォーツであったが。

 その実、走り始めた列車の屋根の上で走って移動したら、転んでしまい、来るのが少し遅れてしまった……という、事実を知らないだけなのであった。




GM これで、護衛チームはこの一等列車に揃ったことになります。そうですね、ここでは戦闘をしっかり継続してもいいのですが、ほぼNPC同士となるので、護衛チームのダイスを振ってもらいましょう。



 *護衛チームは、ジャンクォーツが戦闘に加わったことにより、攻撃手段と回復手段を得て、ディアボロに対して危なげなくHPを削ることができる。ディアボロの攻撃も、前回同様。



(“サソリ” “ハイエナ”にアウェイクポーションと最後のトリートポーションをっ)

(“ハイエナ” いや、それはやめておこう。下手にここで起きると、ディアボロの攻撃で即座にまた落ちるかもしれない。それに、次に貴族様の攻撃を食らったら、間違いなく、僕は死ぬ)

(“アナグマ” ……オデも、どうしたラ?)

GM “アナグマ”――強盗チームには、こういうときのために逃げる場所を決めてあるので、そこに行って逃げ込んだことになります。

(“アナグマ” オデ、一人……?(不安げ))

(“ハイエナ” “アナグマ”ッ! だから、君は甘ったれっ子マンモーニなんだよォ!)

(“アナグマ” は、“ハイエナ”の兄貴ッ!?)

GM また、なんか始まった……(笑)。

(“ハイエナ” いいか! いつまでも、ビビってんじゃ、甘ったれるんじゃァない! 成長するんだ、“アナグマ”。成長しなくちゃァ、僕たちは“栄光”を掴むことはできない!)

(“アナグマ” “ハイエナ”の兄貴ィ!!? デモ、お、オデ……)

(“ハイエナ” いいか、君のスタ○ド能力――)

GM スタン○能力とか、言っちゃってるよ!?(笑)

(“ハイエナ” (勢いだけで)“アナグマ”、“アナグマ”、“アナグマ”よォ! 僕は君を信じるてるんだッ! 君がその気になったら、何者にも負けない能力を持っているんだッ! そうだろォ!?)

(“アナグマ” 分かっタ、兄貴ィ!! 兄貴の覚悟ガ! 言葉でなク――心で理解デきタ!!!)

GM (楽しそうな二人を見ながら)えっと、“アナグマ”は逃亡に成功しました(笑)。……それで、“サソリ”の行動はどうします?



“サソリ” 貴族様に攻撃デス。――ブッ殺すって思った時は、兄貴ハイエナッ!

GM だから、そのJ○JOネタはいいんだよ!?(笑)

“サソリ” 《ポーションマスター》で自分を回復しつつ、貴族様にかたき討ちデス!(“ハイエナ”:まだ、僕は死んでないよ?(笑)) (ころころ)ダメ、全部回避されたデス……。



 *そして、“サソリ”の攻撃はキースにあしらわれながら、ディアボロのHPが確実に削られていく。



GM/ディアボロ 「お、おのれ……あの“巨万の魔石”とやらが……あれば、再び……」

  /ジャンクォーツ 「残念だけど、お前に再びはないっしょ。〈ファイアーアロー〉でとどめ!」これで、ディアボロは倒されます。

“サソリ” (渋い顔で)それで、ワタシをどうする気デス……?

GM/キース 「……どうにも、私は今、気分が乗らない。後は、諸君らが彼女を捕まえておけ。ついでに、そこに倒れているエルフも、同じようにしておくんだ」




 結局、キース・アイデンスはルーンフォークのメイド姿をした“サソリ”に対して、一度も銃を撃つことなく、割れた窓の外を眺めている。



 列車は、すでにかなりのスピードを出してきており、夜明けまでわずか。

 夜空は、東の方から明るい紫色となってきていた。


 割れた窓からは、極寒の砂漠の風が吹き込んでおり、部屋の温度はどんどんと下がってきている。



 しかし、そんな風を意ともせずに、キースはただ、外を眺めていた。




「“巨万の魔石”を探しに行くか。いや、この強盗二人をここに置いておけば、その内、戻ってくるか?」




 冷たい風のおかげか、少し落ち着いてきたキースに対して。

 アターシャが、率直に問いただす。



「キース様……、その“巨万の魔石”について、詳しく説明をしてもらっても宜しいですか? 私たちは、そのような話――聞いていません」

 そんなアターシャに対して、ひどくつまらなげに、キースは見返す。



「そうだな、アレは――……」




 キースにとって、本当につまらない。

 面白くもない話をし始めるのであった。



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