chapter10 たったひとつの冴えたやり方
『当列車は、ただいま蛮族の攻撃を受けております。乗客の皆さんは乗務員の指示に従い、安全な場所に避難ください。また、冒険者の方でご助力いただけた方には、討伐数に伴い、報酬をお支払いします。繰り返します……』
列車放送用魔道機の横にあるランプが赤色になった際に、大陸魔道列車規定に基づき、マニュアル通りのアナウンスが流れ始める。
そして、乗客の中には慌てふためくものも少数ながらいるが、乗務員たちの落ち着いた対応に次第に落ち着きを取り戻していく。
言うなれば、慣れているといってもいいかもしれない。
特に、ラージャハ帝国に暮らす者たちにしてみれば、蛮族や魔物の襲撃を経験したことがない者は、本当に限られた者だけである。
帝国は皇帝を筆頭にした実力主義の国であり、“穢れ”持ちのナイトメアだけでなく、実力とその意思さえあれば、蛮族すらも“名誉人族”として取り込むほどだ。
下手をすると、共和国生まれの乗務員よりも、乗客の方が余裕を感じさせるという一種異様な光景が、デザートイーグル号で見られる事態になっていた。
ビリー (両手持ちの銃を構えて)よっしゃ。退屈な列車旅行に、彩りの一つでも添えてやろうぜ。なあ?
ヘレン (歌うように)ファイアー♪ ファイアー♪ ファイアーボール♪
アクルゥ おかずに豪華一品を加えるためにも、蛮族の皆さんには、倒されていただきますっ! ハイ!
GM うーん、カオスですね(笑)。しかし、やる気は充分なようです。
さて、最初に言っておきますが、この蛮族たちは、決して強くはありません。ただ、連戦が想定されるため、MPやアイテム消費には気を付けてください。
GM 最初に、魔物知識判定をお願いします。それに合わせて、列車周辺の状況も説明します。
(ヘレン (ころころ)23! ヘレンに、お任せ!)
GM では、蛮族全員の弱点を突破しました。
まず、敵が三グループで一番多い先頭車両付近。レベル10“ディアボロルテナント(人間形態)”の一体が、この“
それ以外は、レベル5“アンドロスコーピオン”一体と、レベル4“レッサーオーガ”一体、レベル2“サーベルフッド”三体の2グループ(『15ポイント』×2)
中央、二等車両付近に、同じ“アンドロスコーピオン”グループ(『ポイント15』×1)。
後方、三等車両付近に、レベル6“ケンタウロスインペイラー”一体、レベル3“ケンタウロス”四体が2グループ(『18ポイント』×2)。
(アクルゥ ああ、もう本当にゴチャゴチャですね(苦笑))
GM 列車護衛組は、全員レベル4が五人。それぞれ、先頭・中央・後方にそれぞれ1グループずつ配置されます(『20ポイント』×3)。
(ヘレン (計算しながら)ヘレンたちが介入しなければ、6ラウンド終了時に列車護衛は全滅。ほぼ無傷で、蛮族たちにこの列車に乗り込まれる……)
*整理すると、先頭『護衛20ポイントvs蛮族56ポイント』/中央『護衛20ポイントvs蛮族15ポイント』/後方『護衛20ポイントvs蛮族36ポイント』となり、最初の3ラウンド終了時で、中央以外の列車護衛は全滅する計算になる。
(アクルゥ わたし、《魔法制御》を持っていないので、今回はあんまり役には立てそうにありませんね……(しょんぼり))
(ビリー オイオイ、そいつは違うぜ? 確かに、この戦闘においては俺の〈ショットガン・バレット〉や、ヘレンの〈ファイアボール〉の魔法は有効だ)
(アクルゥ ハイぃ……(しょぼーん))
(ビリー ただ、乱戦前ならアクルゥの〈コールドレイン〉。乱戦後の単体攻撃でも、レベル5程度の蛮族なんざ倒しきれる。そうすりゃ、他の連中が3ラウンド終了に勝手に倒してくれるさ。それに、アクルゥがいなけりゃ、たぶん、どっかの列車護衛は確実に落ちる)
(アクルゥ は、ハイ! 頑張ります!)
(ビリー おう、頑張れッ)
(ヘレン ……く。悪しきヘレンが、再び「がんばえー(笑)」と言っている(一同笑))
(アクルゥ (楽しそうに)ハイ! がんばえます!)
GM さて、1ラウンド目。先制は……うん、ビリーがいい出目を出しましたね。では、冒険者チームからの行動です。配置は、後方列車からスタートします。
ヘレン まずは、ヘレンの開幕〈ファイアボール〉で、ケンタウロス1グループを燃やし尽くす。
「
一同 ただの〈ファイアーボール〉だよね!?(爆笑)
ヘレン (ころころ)そして、出目4(笑)。でも、精神抵抗を突破。アクルゥ、いける?
アクルゥ ハイ! ……でも、ビリーさん、本当にいいんですね? さっきの作戦で。
ビリー おう、任せとけ。そいつが、
アクルゥ 「分かりました、信頼してますからね……」先ほど傷ついたケンタウロスたちに〈コールドレイン〉! 「風と雨の女神“フルシル”様のお力を、この大地に!」やったっ! 精神抵抗を超えて13点ダメージ。
GM うん、これでケンタウロス四体は倒れました。
ビリー それじゃあ、俺は《ファストアクション》の〈オートモービル〉で魔道バイクに乗り、中央車両へ通常移動。行動はこれで終了だ。次のラウンドで先頭車両を目指すぜ。
*デザートイーグル号は13車両編成のため、後方車両から先頭車両に行くのに、徒歩では最低2回の全力移動が必要となる。現状、3ラウンド終了時に、列車護衛の全滅が確実である先頭車両に、ビリーが単独で向かうことにしたのだ。
GM では、ここから列車強盗団と列車護衛との乱戦状態になります。
まず、後方車両は、強盗団2グループと、護衛1グループ。
中央車両は、共に1グループずつなので互角の戦い。
先頭車両は、アンドロスコーピオン率いる強盗2グループが乱戦となり。トップであるディアボロスルテナントやレッサーオーガたちは列車に乗り込んでいきます。
ビリー やべ、しまった! そりゃ、2グループで勝てるんだから、残りは列車に乗り込んでいくか……。
GM ちなみに、ビリーには列車に入り込む瞬間。レッサーオーガたちが、人族に化けて入り込んでいくのが目に入ります。夜の遠目なので、残念ながらどんな姿になったのかまでは分かりません。
一同 あああああ!!?
ヘレン 頭いい!? ずるい!!! 卑怯!!! バカッ!!!
*どっち?(笑)
GM ともかく、列車周辺では乱戦状態のいたるところで
ビリー 列車の中に、このことを伝えに……いや、それを今やっちまうと、先頭車両の連中を見捨てることになるか。
チッ、まずは先頭車両をどうにかするしかねぇか。一手、足りねぇ……(苦笑)。
GM それでは、2ラウンド目になります。
ヘレン ケンタウロスインペイラー二体と、ケンタウロスたちに〈ファイアーボール〉。
アクルゥ 接敵して、ケンタウロスインペイラーを《追加攻撃》で削ります!
ビリー 俺は、通常移動で先頭車両の乱戦に入る。魔道バイクから降りて、銃を構えておしまいだ。
GM では、アクルゥに2回攻撃。ビリーに1回攻撃。
アクルゥ 《カウンター》! ケンタウロスインペイラーをこれで、一体倒します!
ビリー 《射手の体術》!
GM うん、これで後方は残り強盗団1グループ。
GM さて、運命の3ラウンド目。乱戦状態なので、魔道列車の中の様子は伺えません。
ヘレン もう後方は大丈夫。ヘレンは一足先に中央車両を目指して、全力移動する。
アクルゥ 分かりました。わたしは乱戦状態の中にいるので……最後のケンタウロスインペイラーに止めを刺します。これで、後方は列車護衛の人たちで倒しきれます!
GM さて、ビリーの行動です。
ビリー 今、列車強盗団は『30ポイント』。だとしたら、俺の〈ショットガン・バレット〉で狙うのは、アンドロスコーピオンじゃなく雑魚のサーベルフッド。命中! ダメージが……、やべ、出目が悪ぃ!?
GM この戦闘が終了すると、夜明けになりますので、1日に1回の効果が復活しますよ。
ビリー 助かるッ! 《運命変転》でクリティカルに変更してサーベルフッド五体を一掃。こいつで、双方が『20ポイント』になり、この3ラウンド終了時は拮抗だぜ。
GM これで、3ラウンド終了です。
先頭車両は、『護衛20ポイントvs蛮族20ポイント』で戦闘拮抗で双方に被害なし。
中央車両は、『護衛20ポイントvs蛮族15ポイント』なので、護衛優勢でレベル5のアンドロスコーピオンを一体倒します。
後方車両は、『護衛20ポイントvs蛮族12ポイント』で戦闘勝利。残ったケンタウロスたちは、列車護衛たちによって駆逐されます。
一同 (一息ついて)よかったぁ~……。
(ヘレン 列車の外は、もう時間の問題。金欠になった分、MPにはまだ余裕はあるけど、この後どうなるか分からない)
(ビリー だな(相槌)。列車の中に列車強盗団も入られちまってるし、油断はできねぇな)
(アクルゥ でも、どうしましょう? わたしかヘレンさんだけでも、列車の中に入りますか?)
(一同 うーーーん……)
GM お悩みのところすみませんが、ここで少し視点を切り替えて、護衛チームと強盗チームについて状況を説明しましょう。
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