chapter8 長旅において、食事は最大の楽しみである
GM では、朝食が食べ終わって、のんびりとしているヘレンたち。
ビリー (ヘレンたちのテーブルまで来て)いやー、参ったぜ。まさか、あんっなに、怒られるとは。
ヘレン&アクルゥ …………誰?
ビリー その
ヘレン ま、冗談はともかく。
アクルゥ それで、ビリーさんは弁償をちゃんとしてきたんですか?
ビリー チェッ、参ったぜ。俺も豪勢に朝食を……と言いたいが、今日のところは余ってる携帯食でいいか。あ、でも、ビールだけは頼むぜ!
ヘレン ……まあ、ビリーのお金だから。好きにすればいい。
ビリー いやぁ、やっぱり、朝からのビールはうまいぜェ(ダメ人間)。
ヘレン まあ、ビリーは飲みながらでいいから。少し真面目な話。
他二人 ん?
ヘレン 数年前に、聞いたことがある。“サソリ事件”のことを――
“サソリ事件”というのは、正確な呼び名ではない。
ただ、過去に起きたいくつかの事件から、ある毒殺事件を起こした同一犯がいるという推測されたことが、ラージャハ帝国の裏界隈で一時噂になったことがあったのだ。
3年前ぐらいに、帝国の要人が立て続けに毒殺された事件があった。その全員に共通しているのは、毒針によって殺されたという以外、同一犯かどうかは最後まで分からなかった。
ただ、殺された要人たちは、いずれも“とある闇組織”に敵対する者たちばかりであったことから、帝国側も無理やり証拠などを揃え、闇組織を壊滅させたのが2年前のこと。
その為、その毒殺事件も“サソリ事件”と呼ばれはしたものの、事件としては数件程度。しかも闇組織が壊滅した後は、同様の事件が発生しなくなったことから、実行犯は組織と一緒に
ヘレン とまあ、そんなところ。さっきの入れ墨のことを見たら、ふと、そんな話を思い出した。
アクルゥ ……でも、別にその“サソリ事件”って、周りの人が勝手にそう呼んでいただけですよね?
ヘレン そう。「毒殺事件=サソリ事件」という図式も、成り立ってないのは事実。
ビリー ……まあ、生きてりゃ、色々あるさ。あんなところに入れ墨入れてるんだ。良いも悪いも、あるわな。
ヘレン うん、別にその話は思い出したってだけ。それよりも、元冒険者という言葉に、本人は不思議そうにしていた……そっちの方が気になる、かな。
アクルゥ 気にしすぎ、と言うにも、なんとも言えない話ですね。例えば、ソーリさんが……その“サソリ事件”の犯人だったとして。2年以上前もの話が、なにかあるんでしょうか?
ビリー OKOK。それなら、一等列車に当時の事件関係者がいるかいないか、それとなく確かめてみる。杞憂で終わればよし。仮にいたとして、俺達にはなんか関係ある話なのか? ってことだ。
別に俺たちゃ、護衛の依頼を受けてもいなければ、正義の味方様って柄じゃないんだ。あのメイドさんが昔は殺し屋だろうが冒険者だろうが、今の俺たちには、関係ねぇ話さ。足洗って、メイドさんになったんなら、そりゃ、めでたい話だろ?
ヘレン ……そう。ヘレンとしては、心の片隅に置いておいてほしい。それだけ。今が、“
GM では、君たちがそんな会話をしているところに、チャラそうな青年、真面目そうな女性、リルドラケンの三人が隣のテーブル席に座る。
/隣の三人組 「いやぁ、一等列車のメシもうまいけど。ヤッパ、オレにはもうちょっと大雑把なモンが食いたいわけよ。分かる?」「拙者としては、食べられればどちらでもいいとは思うでござるが。しかし、護衛である拙者たちがキース様を一人残すのは……」「その本人が列車の先ほど起きた騒動の調査を優先しろ、と言ったのだ。それに、あの方は私たちより強いのは間違いない。よほどのことがなければ問題ないだろう」……という会話が、耳に入ってくる。
三人 ……キース様?
GM/チャラい護衛 「(ちらりとビリーを見て)おっ! さっき、車掌にめっちゃ怒られた人じゃんっ」とニカッと笑いながら、君たちに話しかけてくる。
ビリー おう。なんだお前ェ。ケンカでも売ってんのか?
アクルゥ いやいや、ビリーさん、落ち着いてくださいっ!
ヘレン なんで、ビリーはすぐにチンピラになりたがるの?(笑)
GM/リルドラケンの護衛 「ジャン! ……拙者たちの連れが、すまないでござるな。こやつは、悪気がある訳ではないのだが、いささか言い方がアレなのでな」
/護衛たち 「いやぁ、そこのおっさん。わりィわりィ」とへらっと軽い謝罪をする。「ジャンクォーツ。貴様、本当に礼儀知らずだな……。私からも、謝罪しよう」と女性も謝ってくる。
ヘレン いや、いい。こっちの
アクルゥ そうですね。こちらこそ、すみませんでした。
ビリー なんだよなんだよ。また、俺だけ悪者かよォ。
GM/チャラい護衛 「お、なんかシンパシー! しゃあね。謝罪として、おっさんにはビールを奢ってやんぜ!」
ビリー マジで!? お前、いい奴だな! ビール、もう一杯頼む!
GM/護衛たち 「うぇーい! オレにもビールッ!」「護衛中だから、貴様は駄目だ」「うぇい!?」(一同苦笑)
そんな何気ない感じで、ビリーたちに話しかけてきた護衛三人組。
都会の洒落た髪型をして、ピアスをした茶髪の男の名前は、ジャンクオーツ。
そして、銅色のセミロングで整った顔立ち、モデルのような長身の女性は、アターシャ。
赤茶色の鱗を持ち、列車内でも金属鎧を着込んでいるリルドラケンは、セイゲン・ダインと名乗った。
そして、例の貴族の護衛だと少し警戒をしていた冒険者たちも、気さくなやり取りや態度などから、彼らが頼んだ朝食がくると、話が盛り上がり始める。
「ウェイ、来た来た!
「拙者は、どうもマトンの風味は苦手でござるよ。東部では、
「あー、まあ、苦手なのは分からなくもないけど。オレからすると、慣れるとマジ病みつきになるっしょ。……つーか、アターシャちゃんは、ミルクシェイクだけでいいの?」
「構わん。貴様と違い、そこまで朝からは脂っこいものは食えん」
「うは、ミルクシェイク一杯で10ガメル! ウィスキー無しでその値段とか。さすがは列車は高っか」
「フン、だがかなりうまいぞ」
「ねえねえ、ちょっと一口もらってもいい? 10ガメルのミルクシェイクって、ちょっち気になるっしょ」
「……好きにしろ」
GM/ジャンクォーツ 「(一口吸って)ヤバ、ウマ過ぎる! さっすが、一杯10ガメルッ!」
アクルゥ (ごくりんこ)……わたしも、ミルクシェイクを……ああ、でも10ガメル!
ヘレン アクルゥ、二人で一つ頼めばいける。行こう!(うきうき)
アクルゥ ハイ! ミルクシェイク、追加で一つお願いしますっ!
ビリー やべえ、俺もマトンバーガー頼みてぇ。ここで一人、携帯食料とか、イヤ過ぎる。
GM/セイゲン 「拙者は、この
ビリー おおお、白米!? この魔道列車、マジで色々とあるな。――ってことは、アレか? もしかして、米から作った酒とかもある?
GM/セイゲン 「ほう、清酒を知っているでござるか。ビリー殿も博識でござるな。ウム、今は護衛中の身の上のため、酒は飲めないでござるが。共和国についたら、一杯、どうでござるか? うまい清酒と魚料理を出す店を知っているでござるよ」
ビリー うお、いいぜ! やべ、キャンディ食堂より楽しみかもしれん……。
GM/護衛たち 「ウェイ! キャンディ食堂なら、オレも……」「ジャンクォーツ。その店に行って、どうするつもりだ?」「う、ウェイ。な、なんでもないっしょ。セイゲンのおっさんのお勧めの店、楽しみだなぁ~」
結局、追加の朝食を食べることになったビリーたちは、なんだかんだで結構な食事代を使ってしまうことになる。
後からアクルゥが少しばかり後悔する一方で、ビリーやヘレンは気にしていない様子だったのは、それぞれの性格を表しているといえる。
娯楽の少ない魔道列車の長旅において、食事は最大の楽しみであることは間違いない。
魔道列車“デザートイーグル号”は、砂漠縦断鉄道の列車中でも、内装だけでなく、共和国特有の大陸各地の食事が集まるその知識を総動員して、“食”について特に充実させている。
アクルゥは、当然、その情報を仕入れており、この列車を選んだといっても過言ではなかった。
ともかく、そんな朝食から一息ついたころ。
「……そういや、少しだけ小耳に挟んだだけなんだけど」
と、軽い口調でジャンクォーツが、ビリーたちに声をかけてくる。
「“
アクルゥ ええ、ハイ。そう言えば、昨日の夕食の時にもその話出てましたね。
GM/ジャンクォーツ 「(へらへらと笑いながら)ウェイ。ま、共和国じゃ結構有名な連中でね。この砂漠で出たって話は、聞いたことなかったんだけど――なーんか、この列車に乗っていると、ちょいちょい、話題に出てくるんで。ちょっちばかり、気になっちゃってさ」
ビリー ……。
GM/ジャンクォーツ 「ほら。さっきも、なんか話題にしてた、みたいだし?」と、顔はへらへらしながらも、目だけは笑っていない。
三人 っ!
GM/ジャンクォーツ 「ところで、なんで列車の窓の鍵、さっき壊したんだろ。もしかして、なにかの合図――だったり?」
(三人 ああ、あああー!!!(納得) 確かに、怪しいっ!?)
(ヘレン うん、確かに普通に考えたら、列車の鍵を壊すなんてありえない。普通に、考えたら……(笑))
(アクルゥ まさか、その場のノリだなんて、言っても信じてもらえませんよね?(笑))
(ビリー その理由、メタ過ぎンだろ!(笑) そっかぁ……いや。ここは俺に任せろ。「それは、単なるスカートの中を覗く……)
一同 まさかのダメ過ぎる理由!!?(爆笑)
三人 (なにも思いつかない……)
GM/ジャンクォーツ 「あ、これも関係はないんだけど。ラージャハ帝国で、三人組の強盗が出る噂話って聞いたことあるっしょ。偶然だけど、おっさんたちも三人組っスね」
ビリー 「ハ、そいつを言うなら、お前さんたちだって、三人組じゃないか。貴族様の護衛にしちゃ、人数が少なくねぇか」――ってぇ、やべ。なんか自分で自分の地雷を盛大に踏んじまった気分になる……。
GM/アターシャ 「こいつ、誤魔化す気か……」と、アターシャが殺気立つ。
/セイゲン 「やめるでござるよ、アターシャ。なに、拙者たちも高貴なお方の護衛をしている身。見たところ、かなりの実力を持ったお主たちが、列車内で騒ぎを起こしたので、こちらとしても少し無視できなかったのは事実。しかし、ジャンの疑うような物言いは悪かったでござる」と立ち上がって、謝罪をするセイゲン。ただ、そうやって見ると、大柄なリルドラケンが金属鎧を着ていることもあって、威圧感はかなりある。もしかしたら、多少は意図しているかもしれない。
アクルゥ (少し焦りながら)ああ、いえ、そんな謝っていただかなくても……。
GM/セイゲン 「それに、どうにもこの御仁らはそんな悪人は見えぬでござるよ。先ほどの言ったお店への誘いも、嘘偽りもなく、一緒に飲み交わしたいと思ったから誘ったまでのこと。ジャン、アターシャ。お主らも謝るとよい」とそれに続き、二人も渋々ながらも謝る。
アクルゥ その……そちらの都合もあるでしょうし、気にしていませんから、大丈夫です! ハイ。
ビリー まあ、いい。そのお勧めの店とやらで、一杯奢ってくれたら、チャラにしてやるよ(苦笑)。
GM/ジャンクォーツ 「うぇい、分かった。もう、詫びもかねて、オレの奢りでいいっしょ。……確かに、さっきのは、ちょっちオレらしくなかったかもなぁ(苦笑)」
ヘレン (しれっと)クレープも、宜しく。
GM/ジャンクォーツ 「ウェイウェイ。女子供にゃ、勝てねぇっしょ」
(ビリー なんつうか……悪い連中じゃないのは、間違いないんだろうな、こいつら(苦笑))
(ヘレン でも、ここで“強盗三人組”の噂話も聞けたのは、よかったかも?)
(アクルゥ 強盗チームの皆さんとは、敵対しちゃうんですかね、やっぱり……(ぽつり))
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