chapter7 絶景かな絶景かな
カスロット砂漠――別名、“歪みの砂漠”を走り抜ける魔道列車“デザートイーグル号”。ラージャハ帝国駅を出発してから、キングスレイ鉄鋼共和国を目指して丸一日。未だに、果て見えぬ砂漠を走行し続けていた。
そして、生物や障害物が少ないこの荒地において、列車の走行音はそれなりに鳴り響く。もっとも、ヒュルヒュルとした砂を運ぶ、砂丘の絶え間ない風音により、ある程度離れるとかき消されてしまう。
魔道列車が走行する際の、ガタンゴトンという線路の継ぎ目の音。
特に、寒暖差の激しい砂漠において、線路の継ぎ目は熱膨張により長さが変わり、昼間と夜間では音が異なる。その音の違いに、この砂漠縦断鉄道の乗務員のみならず、乗客たちも、列車酔いさえしていなければ、ふとした時に気付くことがある。
そんな魔道列車の動力源は、巨大な“マナチャージクリスタル”と呼ばれる大気中にあるマナを自動的に吸収し、蓄積する赤い宝石である。
重さ1トンほどあり、
そして、その“マナチャージクリスタル”で生成されたマナを、
その際に、
この冷却水が蒸発する際の音もまた、魔道列車を彩る音の一つである。
共和国生まれの人間は、これらの魔道列車の音は慣れ親しんだものでもあり、わずかに揺れる列車とこの音に包まれると、まるで揺り籠の中にいるかのように、ぐっすりと眠れる者が多いという。
一方で、生まれも育ちも帝国の人間はというと、頻繁に乗車する機会はまずない為、列車固有の揺れや音には“憧れ”はあれど“郷愁”などを感じることは当然ない。
しかし、過酷な砂漠で育った連中の図太さは、共和国の都会育ちとは違い、むしろ、三等列車という環境下であっても、ぐっすりと眠れるほどであった。
要するに、そんな図太い連中の中でも、この砂漠で冒険者をしているビリーたち三人は、魔道列車初日の夜をこれでもかというぐらい熟睡した――という、それだけのお話。
GM さて、カスロット砂漠を縦断するデザートイーグル号が出発して、エルフのハイエたち三人と一緒に食事をした翌朝。ビリーたちはなにかしたいこととか、ありますか?
ビリー・ザ・ソニック(以下、ビリー) (所持金を見て)……賭けごッ。
ヘレン (即座に)アクルゥ。
アクルゥ・ベドウィヌ(以下、アクルゥ) ハイ! 《鎧貫き》っ!
ビリー ぐはッ!!?
GM はやっ!?(笑) ほ、他にはないですか?
一同 う~~ん……。
(ヘレン ……メイドのソーリに、会いに行く)
(アクルゥ え、ソーリさんですか? ハイエさんではなく?)
(ヘレン (こくりと頷く)できれば、ソーリ一人の時がいい)
GM フム。意外なところを狙ってきましたね。その心を聞いても?
(ビリー ……あー、なるほど。もしかして、元冒険者とかその辺で少し探り入れてみる感じか?)
(ヘレン そう。現時点では、なにも疑うところはない。でも、プレイヤーとしては、少しでも接触をしておきたい……)
(アクルゥ な、なるほど。ヘレンさん、さすがです!)
*【サノバンこそこそ噂話4】強盗チーム三人組、護衛チーム三人組の基礎データは、プレイヤー三人に一定の条件下で作ってもらっているよ(詳細は噂話3参照)。つまり、プレイヤー知識である程度の事情や能力をすでに把握しているんだ。ちなみに、誰が誰を作ったのか、推測してみるのも面白いかもね。
GM では、ソーリと一人で会えるかどうかは、ダイスで決めましょう。
(ヘレン (ころころ)よし、ソーリは一人)
GM 逆に、ヘレンはどうしますか? 何人で会う?
(ヘレン ……とりあえずの話だから、みんなで。どう?)
(二人 了解!)
GM えっと、ではメイドのソーリが一人で……(ん? どういう状況なら、あの
(ヘレン ……ねえ、GM。もうちょっとなかった、の?(やや冷たい口調))
GM じゃあ、お風呂帰り! タオルとか、アヒルのおもちゃを入れた桶を持ったソーリに出会うッ!(ヤケクソ)
(ビリー (したり顔で)うむうむ。お風呂上りのメイドさんとは、粋な計らいをしてくれる)
GM (ヘレンやアクルゥに)やめてッ!? そんな「ビリーと同類」みたいな目で、GMを見ないでッ!!?
(女性二人 ……)
(ビリー おう、GM。
GM/ソーリ 「ン、あなたたちは……。何か用、デス?」と、桶片手に少し髪が濡れたメイドが、小首を傾げる。
ヘレン (片手を上げて)おはよう、ソーリ。今日もいい天気。
GM/ソーリ 「(砂漠の灼熱天気を見て)うん、いい天気。おはようデス」
ヘレン (桶を見て)お風呂?
GM/ソーリ 「さっぱりしたデス」
ヘレン&ソーリ 「「……うん」」(なんか頷く二人)
(アクルゥ (こそこそと)あの……なにか、会話おかしくないですか?)
(ビリー (こそこそと)あ、ああ。なんつうか、コミュ障の知り合いがバッタリ会った……みたいな? いや、あれはあれで、逆にコミュニケーションとれているのか?)
*二等乗車券は、全身を拭ける濡れタオルと少量の水なら1日1回無料で提供される。それ以上は、1リットルあたりいくらで課金。三等列車は、全て有料……というのを、後付けで考えてみました(どちらにしても、お風呂ではない)。
ヘレン (ここはヘレンに任せておけ! という顔)ところで、そこのソーリ。なぜ、冒険者をやめたの?(直球)
一同 言い方ァ!?(笑)
GM お、おう。ヘレンの会話デッキは、
/ソーリ 「ぅン? ……ぼうけんしゃ、デス…………?」と不思議そうに首を傾げて、ぼんやりと天井を眺める。
ヘレン ……。
GM/ソーリ 「…………」
一同 ………………。
GM/ソーリ 「………………」
アクルゥ あ、えっと。なにか言いづらい事情があれば、無理をしなくとも……。
GM/ソーリ 「言いづらい事情? デスか? なにがデスか?」と首をさらに傾げる。
*しかし、かしこさがたりない!(訳:強盗“サソリ”は、元“冒険者”ではないので、その自覚がないのだ!)
ヘレン (口元の片方を釣り上げて)……少し、ソーリには難しい質問だった。あれ……?
一同 ヘレンさーんっ!!?(笑)
GM/ソーリ 「……じゃあ、用がないなら、これで戻るデス」
ヘレン ガシッ(メイドスカートの裾を掴む)。
(ビリー いや、もう、無理じゃねぇか、ヘレン?)
(アクルゥ そうですよ。なんか、私たちは大きな勘違いをしているような気がします)
(ヘレン く……ヘレン、不覚。たぶん、これ以上の遠回しもダメ。直接聞くのも、これじゃない感がある。でも、たぶん、聞く相手は間違っていないはず。だから、二人も、なにか考えて)
(アクルゥ えぇぇぇ!? な、なんでしょう? 好きなものを聞いてみる、とか?)
(ヘレン たぶん、その会話デッキはいかんのは、ヘレンでも分かる。ビリー?)
(ビリー フ……、何も思いつかないが。考えるための、時間稼ぎは任せろ)
*しかし、かしこさがたりない!!(訳:冒険者たちは何も思いつかなかった!!)
ビリー (キザな声を出しながら)まあまあ。ちょいと待ちなよ、
一同 誰ッ!?(笑)
ビリー こうして会ったのも、何かの
GM デザートイーグル号の窓は、しっかりと閉まっています。
ビリー 「(ニヒルな笑みを浮かべて)フ……」窓を、開ける。
一同 なんで格好つけて笑ったの!?(笑)
GM いや、鍵が閉まっているんですよ。なぜなら……。
ビリー 窓のくせに、生意気なッ! 〈ノッカー・ボム〉! こいつで、窓を開ける!
ヘレン あ、バカッ。
ビリー (止める間もなく、ダイスを振って)成功! 「ヒュー、俺ってマジいけてるぜ!」
GM ……では、ボンッと軽い音がして鍵が壊れる。そして、強い風に当てられ、窓が全開になります。それと共に、列車内に砂漠の熱風と砂が入り込んできます。
一同 ぎゃーーー!!?
GM たぶん、目に砂が入りそうになるし。あと、あまり言いたくはないですが、たぶん、スカート的なものも、風にあおられて捲り上がるでしょう。
一同 (あんまりな惨状に)バカーーーーー!!?
*ものすごく、かしこさがたりない!!!(訳:大惨事)
GM えーっと……?
ビリー (さらりと)それで、みなさんはどんなのをはいているので?
女性二人 …………。
GM び、ビリーは、メンタル化け物か……?(驚愕)
ヘレン (なにがとは言わないが)――かぼちゃ。
アクルゥ (同じく)白……です。
ビリー おおお! こいつは、絶景かな絶景かな!(完全にセクハラ発言)
GM/ソーリ ――履いていない。
ビリー なぬぅ、《鷹の目》ッ!!!
一同 オイ!!?(爆笑)
*みんなで笑って、楽しめるセッション環境にあるということを、念のため書き記しておきます。
GM では、ビリーの鋭い眼光には、メイドさんの太ももに『サソリ』の
ビリー ……メイドさんに入れ墨? なんか、エロいな……(クズ発言)。
ヘレン HENTAI!! HENTAI!!
アクルゥ (ドン引きしながら)……最ッ低です……。
ビリー (コホン)おっと、このままじゃ、俺の株価がストップ安……。ここで、知的な発言をしておくぜ。
「この眺めは
一同 ただの痴的な発言だよ!!?(爆笑)
*某五右衛門が、山門の上から満開の桜を愛でながら、「絶景かな絶景かな。春の眺めは値千金……」と続けるセリフ。それを、巨匠“ビリー・ザ・ソニック”が痴的に言い換えた迷言。
GM もう、ビリーの株は大暴落だよ!(笑) というか、もう収集つかないよ、この状況(笑)。
ええと、列車内に入り込んだ砂のほとんどは、なぜかビリーの目に飛び込んでくる。(一同笑)
ビリー (悶えながら)目がぁぁぁ、目がァァァァ!!?
アクルゥ
ヘレン 闇の炎に抱かれて、死ね(※決め台詞?)。
GM ちなみに、ソーリの方は、見られたことを気にした様子はありません。
ビリー
一同 (一連の流れが)ヒド過ぎるッ!!!(爆笑)
GM 話がまったく進まないねぇ!?(笑)
それでは、急に列車に突風とか入って、大きな音がしたので、車掌さんが緊急事態かとやってきます。そして、壊れた窓の鍵に気付いて、ビリーはドチャクソ怒られます。
一同 ですよねぇ~(笑)。
GM ……そんな大騒ぎをしていると。そこに身なりのいい格好をした少年エルフのハイエや執事もやってきて、メイドのソーリに声をかける。
/ハイエたち 「ああ、もう君は、お風呂に入ってきたと思ったら、髪は濡れたままだし、砂まみれだし……これは、もう一回、お風呂に行った方がいいよ」「そう、デス?」「はいはい、お金は上げるから、もう一度、行ってきな」
アクルゥ 本当にすみません、すみませんっ!(ぺこぺこ)
ヘレン ビリーのバカが、ごめん。その金は、ビリーが……(残り所持金を見て)……払う。
ビリー はっはっは、メイドさんをお風呂にいれることなんて、俺にかかればなんの造作もないことさ!
他二人 少しは反省しろ(しなさい)っ!
GM 後、他にも、野次馬しにし来た乗客も何人かいる。
/乗客たち 「え、なにがあったんだ、これ?」「窓が壊れてるみたいだねぇ」「これだから、三等列車に乗るような者は品がなくて、困るザマス」「ウェイウェイ、ひっでー惨状だなぁ。なんかあったスか?」「車掌殿に聞いてみるでござるか?」「その車掌らしき人に、めっちゃ怒られる人がいるっしょ。なんかやらかしたんじゃね?」「まるで、貴様みたい奴だな」「えぇ、そりゃ、ひどいっしょ」みたいな会話が聞こえてくる。
アクルゥ (赤面しながら)うぅ、は、恥ずかしい。他人のふりをしたいです……。
ヘレン (淡々と)アクルゥ、なに言っているの? ヘレンたちは、最初から二人だけのパーティ。
なんか、隣の席に偶然座った変なおっさんが、やたらとヘレンたちに話しかけくるだけ(一同笑)。
ビリー それは、ヒドくねェか!?(笑)
GM もしも、そうだとしたら、このリプレイの叙述トリックに、読んだ人はきっと騙されるはず(笑)。
ヘレン そういえば、朝食もまだだったし。アクルゥ、行こ。
アクルゥ (車掌に説教されているビリーを尻目に)ハイ! 行きましょう。
ヘレン ウン。…………ま、目的は、果たしたから。もういっか(ぽつり)。
*【サノバガンこそこそ噂話5】ビリーの発言はリプレイ化するにあたり、少しだけマイルドになっているよ。例えば、「ビリーが昔、性病にかかって、アクルゥに
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