バックハグに魅せられて
創作にちょっと行き詰まり、そして家のWiFiがやたらに遅く、いつものスタバへ。
レジのすぐ横の席はちょっと騒々しく気が散るけど、新しく買ったノイズキャンセリング
・スゴイ・ヘッドホンを装着してしまえばな~んも聞こえないぞ!
というわけで、レジに並ぶ女性をこっそりファッションチェックをしたり(皆さん髪から靴までちゃんとしてるなあ…)、子どもがショーケースをベタベタ触る(両親とも全く無視)のでめちゃくちゃ顔をしかめたり(効果なし)しつつ仕事をしていたが…。
次に並んでいるのは騒々しい男の子たち。大学生くらい?
最初は、グループなのかと思ってうっさいなあと顔を背けていたが、あれ、どうやら、二人組?
あらら、ターゲット・ロックオン。
スマホ片手にうるさく喋りながら(ヘッドホンで聞こえないけど)ずーっとわちゃわちゃじゃれあっている。
肘でつついたり、肩を組んだり、…って、あらあら、後ろから惜しげもないバックハグ??いや、そんなもの間近で見せつけられてもお姉さん(=私のこと)仕事できなくなっちゃうな…。
便宜的に、前にいる(バックハグされている)のをAくん、後ろにいる(バックハグしている)のをBくんとする。
Aくんは黒髪、少しくせ毛、白っぽいシャツ。最近のエモいシティポップのイラストみたいな雰囲気。
Bくんは短い金髪にベージュのキャップをかぶり、黒っぽいシャツ。ちょっと遊んでる雰囲気。
Aくんが見ているスマホをBくんが後ろからのぞきこみ、べったりくっついて、前にまわした両手はAくんのスマホを触ったり、あちこち、せわしなく動く。
それから、Bくんの右手はAくんを抱えたまま、左手が、肩の上から胸へ、ブラブラ揺れながら降りていく。
そしてAくんが胸の前で持っているスマホに伸びかかったが、そうではなく。
Bくんの左手は、軽く拳を握って、Aくんの白シャツの胸の真ん中をトン、トン、トンとリズムを取るようにノックしていた。
彼らは何か鼻歌とかを歌っていたのかもしれないし、店のBGMに合わせていたのかもしれない。
しかし、スゴイ・ノイキャン・ヘッドホンの私には聞こえない。
後ろから抱きつかれて胸をトントンと叩かれているAくんは、いったいどんな気持ちでそれを甘んじて受けているんだろう…。
ここのスタバはいつも混んでいて、レジは二つあるのにいつも一つしか開けてなくて、列が伸びた方が集客効果があると思ってわざと客をさばかないんじゃないだろうかと勘繰っていたけれど。
初めて、それに感謝したものである。
その後、レジの順番が来て彼らはようやく離れたが(およそ五分はバックハグをしていた)、それでもBくんはAくんに膝カックンをけしかけるなど、イチャイチャ(攻)に余念がない。
それからしばらくして、私がようやく仕事に戻ったころ、彼らはレジ前を通ってまたイチャイチャしながら帰っていった。しかしすぐ戻ってきて、そしてまた出ていった。私の長年の経験から言うと、カフェ・イチャ・BLな二人はよくこうして出たり入ったりする。何だろう、帰る前にイチャイチャ連れションに行って、席に戻ってカップを片付けて出ていくからこうなるんだろうか。
ところで、今回の二人。
最初はグループだと思ったわけだけど、それには理由がある。
雰囲気が、妙に、「男子が仲間内で盛り上がってる時のウェーイ感」だったのだ。「ちょ、おま、ダッセェ!」とか「マジ?ワンチャンいけんじゃねえ!?」とか、オーバーリアクションで騒いでる感じ。
しかしそういうのって、周りへの「オレはノリがいい人間ですアピール」であり、その延長で、蹴飛ばしたり抱きついたりだのの過剰なスキンシップも発生しやすいものだけど。
でもね、二人だとそこまで「周りへのアピール」をする必要がないし、それにスキンシップの相手が一人だと、「ノリがいい」じゃなくて「イチャつき」になっちゃうのよ。みんなの前ではふざけて抱きついても、普通、二人きりの時には抱きつかないわけよ。
そして、今回のAくんBくん。
私が思うに、元はグループでウェーイしてたんだけれども、互いへの恋心を隠すために「いや、オレって元々こんな感じだしぃ?」って具合にウェーイ系を装って、騒がしい雰囲気のまま、両片想いのバックハグだったらいいな…なんて。
トントンと叩かれた心臓は、本当はドキドキと高鳴っていて、バレませんように、でもやめないで…なんて思ってたとしたら、Aくん、きみは立派なBL作品の主人公だよ。
そんな金曜日の夜9時半。
店を出た二人が、どちらかの家にお泊まりだといいなあと思いながら、私は切らしていた米と油を買ってひいひい言いながら(でも妄想に耽りながら)帰宅しましたとさ。
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