スマホって素敵

少しずつ早春の匂いがしてきた三月。

昼過ぎの電車は空いていて、私は端っこの座席へ。でも、ああ、あっちの席にすれば目の前に制服の男子学生二人がいたのに!

仮に、スマホを持っている右の彼をA君、それをのぞきこんでいる左の彼をB君としよう。

私は必死に目ん玉だけを動かして、彼らをガン見。

ああ、いいね、ひとつのスマホを二人で見る。

B君はA君の肩に頭をもたれかからんばかりにして、ああ、画面を指さして、え、そのまま触れちゃうのかしら…!


ここで私は考える。

私の学生時代はスマホは存在しておらず、携帯電話を持ってる子はチラホラいたけど、機能は主に電話とメールだしその画面を一緒に見て楽しむということはなかった。

そして今はスマホ時代。ネットもゲームもアプリも、一緒に見せ合うもの。

でもさあ、今はコロナというのもあるけど、そうでなくても、スマホの画面というのはなんとなーく、<プライベート空間>みたいな感覚があると思う。

その画面を直接指で触るというのは、たとえば初対面の人のスマホなら抵抗がある。親しい人でも「ちょっといい?」みたいに一言断るとか。


…で、B君は、A君のスマホ画面にごく普通に触れて、二人の指は時に触れ合うほど…!

つまり二人はスマホ画面というプライベート空間を共有する仲なのよね。

ああ、スマホよありがとう。B君をA君にべったりと寄りかからせてくれて、指と指を触れ合わせ、画面に遠慮なく触れることで二人の仲の良さを私に見せつけてくれて、ありがとう!



そして、二人は電車を降りていった。その駅は小さな駅で乗換えとかでもなく、…つまり二人はご近所さん?いやいや、もしかして午後から学校?

私は過ぎゆく車窓から彼らのカバンに書かれたアルファベットの一部を読み取り、何となく知ってる学校名らしき単語をスマホで検索し、それが手前の駅から乗り換えたところにある中高一貫の男子校だと突き止めた。

ああ、そうか、きみたちは六年間をともにしている友人で、やはりこれは学校からの帰り道で、そして同じ駅に住んでるんだね!(いや、どちらかの家に遊びに行くのでもいいよ!)



…というわけで、六年の間には友情が移ろいゆくこともあるけど、ぜひ末永く(BL的に)仲良くいてほしいななどと思うわたくしでした。

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