それダサいって!
ある日の昼下がり。
そこは、大通りから一本入った、小さな雑貨屋や美容室、一軒家やアパートが並ぶ通り。
歩いていると、何やら、普通の一軒家のお宅の生け垣の前に、四人の若い男。
何を集まってるんだろう…と思ったら、なーんだ、タバコ吸ってるだけ。
もちろんここは歩きタバコ・路上喫煙は禁止。いくら男同士の集いに目を奪われて、即座に四人のうちで誰と誰をカップリング…なんて考え始めてしまう私であっても、こういうマナー違反は好きじゃない。残念ながらBLウォッチングのターゲットにならず。
思いっきり彼らと距離をあけ、あからさまに煙を避けて歩く私。
あーあ、まったく残念…。
しかし。
背後から、何やらこそこそ話し声。
内容は聞き取れないけど、どうやら、タバコ四人衆をよく思わない私のような通行人が、「ああいうの、どうなの?」「何か、カッコいいと思ってんのかな」みたいなことを小声で言い合っている雰囲気。でも直接タバコのことには触れず、「あのファッションださくね?」とか別のところをけなすことで留飲を下げてるような感じ。
ちょっと歩くスピードを緩めて、その通行人に追い越されるのを待つ私。
うんうん、思った通り、大学生くらいの若い男の子二人。
たぶん、なんとなーく、あの四人衆の前を通るにあたって、
私はただ単に「迷惑!」「くさい!」「条例違反!」「(BLだと思ったのに残念!)」っていう現実的で実際的な文句なんだけども…。
男四人に対し、それよりもうちょっと若い男の子二人。
まるで、ゲームセンターの入り口で、不良っぽい高校生がニヤニヤしながら見てる前を通る中学生二人みたいな感じで、やっぱり、それとなく対抗心みたいのが出たんじゃないのかな。
そして、四人の前をすっかり通りすぎ、もう小声のこそこそ話をする必要もなくなって。
ちょっと安心したのもあるんだろう。
四人に対する対抗心的な「ダサい」の話題は、気が抜けたような笑いとともに、お互いに向けられた。
左の黒いパーカーのAくん(仮)に、右の白いパーカーのBくん(仮)が、「それやっぱダサいって!」と、その腕を指さす。
「それ」がどれのことだか分かんないけど、黒いパーカーそのもののことか、あるいは、それを腕まくりして着ている着方のことか。
Aくんはダサいと言われて気を悪くした風もなく、「別にダサくねーよ、自分だって…」と今度はBくんの方にちょっと手をやり、でもそれはそのまま引っ込められ、しかしそうしたらBくんがまた戯れにAくんの腕に触れ…る直前で触れなくて、「おっとこっちだ」と彼らは角を左に曲がった。
曲がる時にちょっと、肩が、触れあっていた。
私はその十字路を左じゃなく右に曲がったのだが、振り返ったら、白と黒の二人はほとんど肩がくっつきそうに並んで楽しそうに歩いていて、「うんうん、いいのよ、何がダサいのか分かんないけど、相手に『ダサい』って直接言える間柄っていいわよね!」と思うのであった。
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