第8章 新町通に向かって

 病院の廊下を突っ切って駐輪場に戻ったが、次回はきちんと東棟に近い駐輪場に止めなければならないと思った。

病院の外周を4分の3周するのは骨が折れるし、病院の廊下をあちこち突っ切るのも何か効率が悪い気がしたのだ。

 ……さてと……

予想通りさくらに会うことは叶わなかったが、まだやるべきことはある。

 確か、昨日の電話でさくらはこう言っていた。

『どこにいるって……、新町通しんまちどおりだよ。……ほら、市美術館のある……』

 この言葉が真実だとするならば、さくらが事故にあった場所は、「新町通のどこか」ということになる。

……若干範囲が広いかもだけど……

俺はマップアプリで病院から新町通へのルートを確認すると、新町通の始点に当たる交差点に目的地を設定し、ナビゲーションをオンにした。

「良し、行くか‼︎」

そのまま俺は、勢いよく駐輪場から飛び出した。


 ……新町通か……

自転車を転がしながら俺は思った。

……そう言えば、初デートの待ち合わせをしたのも、新町通の交差点の近くのコンビニだったっけか……

 今となっては、あの頃すら遥か遠い過去のことのように思える。

……さくら…… 俺は思った。

……俺はまだ、あの頃のまま笑っていたいんだ……

「ぃよっしっ!」

俺はペダルを漕ぐ脚により一層力を込めた。

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