第6章 一夜明けて【3】

 ……さて、と……

仕事を休むことは決まっている。……なら……。

……さくら……

昨日の今日なので、会えるかどうかは分からない。だが、俺は彼女に会わなければならない。

……行くか……

俺は急いで身支度を始めた。


 それから20分ほどして。身支度を終えた俺は、玄関前の愛機にまたがると、朝の街へと飛び出した。


 俺は一心不乱に自転車を漕いでいた。目指すは、中央病院、さくらの病室だ。会えるかどうかは分からなくても、せめて、昨日のことを謝る機会が欲しい、ただそれだけだった。

 俺の視界にとあるものが入ってきた。鉄道の高架橋だ。昨日はさくらの家に向かおうとして、高架下をくぐったら、そのあと最悪の白昼夢に巻き込まれてしまった。

……もしかしたら、また同じことになるかもしれない……

『故 白石さくら儀 葬儀式場』の文字が脳裏にチラつき、ドクン! と心臓が強く拍動するのを感じた。

……そうは言っても……

今はビビっている場合ではない。この高架橋をくぐらなければ、さくらに会うことは叶わないのだ。

「……ぃよっし!」

俺は腹を括って、高架下の薄暗がりに飛び込んだ。

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