第6章 一夜明けて【1】

 眩しさに目を開けると、朝だった。昨夜の記憶は定かではないが、目覚めた時には部屋着姿でベッドの上だった。

……あれ? 俺、どうしたっけ⁇……

徐々に昨日の出来事が脳裏に蘇ってくる。

ドッペルゲンガー、白昼夢、そして……。

「さくら⁉︎」

 俺は慌ててスマホを探した。スマホはローテーブルの上で充電器に繋がれていた。急いで画面を点灯させると、現れたのは充電率が100%であることを告げる表示だけだった。

……良かった。さくらに大事はなかったらしい……

そこで俺は頭を振った。いや、さくらに大事はあった。あいつは交通事故に遭って……

 その時、昨夜の最後の白昼夢が脳裏を過ぎり、俺は薄ら寒い気配に襲われた。

……そうだ。俺があの時電話を掛けたから、さくらは……

キキキキキーッ‼︎、ドーン‼︎ という、耳を塞ぎたくなる音が蘇り、俺は震えが止まらなくなった。

……あぁ、畜生、目覚めるんじゃなかった……

俺はもう一度ベッドに倒れ込んだ。


 しばらく寝床に横たわっていると、震えは収まってきた。そこで俺はある番号に電話を掛けることにした。

呼び出し音が鳴るとすぐに、『はい、中尾なかおです』という女性の声がした。

「もしもし、店長。西浦にしうらです」抑えた声で俺は応えた。

「すみません、朝から体調が優れなくて、本日急遽きゅうきょお休みを頂いてもよろしいでしょうか?」

『体調不良? 珍しいわね……。……分かった、シフトの件は何とかしておくわ。しっかり休んで、万全の体調になったら出勤してちょうだい』

「すみません、店長。ありがとうございます」

それだけ言うと俺は電話を切った。とりあえず、仕事を休むことには成功した。あとは、職場方面に行かなければ、バレないだろう。

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