第1章 最悪の未来へ【前編】
眠っていた俺は、スマホの着信音に叩き起こされた。
「なんだ?」
俺は音高く鳴くスマホを手元に引き寄せた。
通知画面には見知らぬ電話番号が表示されていた。
「誰だよ……」
一瞬、居留守しようかと思ったが、すぐに切れずに鳴っていることからすると、意味の分からない押し売り電話や詐欺電の可能性は低そうだと思った。
仮に出た結果、その手の手合いだと分かったら、即行で切って着拒すれば良いだけだ。
「はい!」なるべく強そうに聞こえるように俺は声を出した。
「もしもし、
50代くらいの女性の声がした。
「はい。西浦匠は僕ですが」
「私、
……さくらの母さん? 彼女の母親が電話をかけてくるなんてどういうことだ? ……まさか、こないだヤったのが事故ったとか?……
「匠さん、落ち着いて聞いてください。今しがた警察から連絡があって、さくらが……、さくらが……」
落ち着いて聞けと言った割りに、さくらの母親のほうが声をわななかせている。
「さくらがどうしたんですか、小母さん!」
「さくらが交通事故に遭ったというんです……」
言うなりさくらの母親は泣き出してしまった。
「小母さん、聞こえてますか? 現場は……、現場はどこですか? さくらは……、さくらは無事なんですか?」
矢継ぎ早に俺は尋ねたが、聞こえてくるのは、泣き崩れた小母さんの声ばかりだった。
「小母さん、僕、今からそっち行きます。もし警察の人が連絡してきたら、娘の彼氏が来ますので、しばらくお待ちください、って伝えてください。」俺は言った。
「一回、電話切りますね!」そう言って俺は電話を切った。
……そっち方面の事故でなかったのは幸いだったが、あの慎重派のさくらが交通事故だって!?……
何かの間違いであってほしい。そう思いながら、俺は取る物を取りまとめ、急いで表へ飛び出した。
玄関前に止めてある自転車に跨がると、俺は一路さくらの自宅を目指した。
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