ドラゴンのいる世界
「向井さん!急いで!」
片岡の声に引っ張られるように走る。後ろからは剣を持った兵隊が追いかけてくる。苦しい、脇腹が痛い。今にも倒れてしまいそうだ。しかし、足を止めれば殺される。止まるわけにはいかない。
しかし、前を走る片岡が倒れた。
「片岡さん!」
すぐに駆け寄る。彼女は苦痛に顔をゆがめている。
「先に行ってください、向井さん」
「そんな」
「このままでは二人とも殺されてしまいます!」
兵士はすぐそこまで迫っている。
「逃げなさい!」
無理だ、逃げたくても、足が震えて動かない。
追いついた兵士が、二人に剣を振り上げた。
「あああぁぁぁ!」
自分の声で目を覚ました…夢だったのか…。いや、今の自分にとっては起こりうる現実だ。鷹明は起き上がり、額に浮かんでいた汗をぬぐった。
前のケースから戻ってから、度々こんな夢を見る。同じではないが、自分が殺されたり、東谷や片岡…橘や目黒が襲われる夢だ。頭がガンガンする。心臓がバクバクしている。
異世界に行くたびに、こうなるのか…目黒が【捜索組】の回復に時間がかかると言っていた理由が、わかった。みな、この現実のような夢に苦しめられているのだろうか…?鷹明は深いため息をついた。
ピンポン、と音が鳴る。ハッと顔を上げる。チャイムだ。聞きなれた音。なんだかホッとする。今は異世界ではなく、自分が住んでいる世界にいるのだと…。そして、もう一回チャイムが鳴った。和んでる場合ではない、鷹明は急いで玄関に飛び出した。訪問者は宅配業者だった。サインをして荷物を受け取る。伝票には見慣れた文字。
「あ~またか~」
鷹明の首が項垂れた。
おぉ、とテーブルに並んだ京菓子を見て、女性陣が目を輝かせている。
「鷹明君、これどうしたの?」
「実は実家が京都なんですけど、姉がお土産屋さんでパートしてまして…賞味期限ギリギリで売れ残ったの、たまに送ってくるんですよ」
「えー!いいないいな!」
どれ開けようかな、と目黒が品定めしている。
「良くないですよ…賞味期限ギリギリだし…俺一人じゃ食べきれない量だし…あ、嫌だったらもって帰りますけど」
「食べますよ!ね、橘さん、片岡さん」
うんうん、と二人とも頷く。目黒と片岡が包み紙を順番に破いていく。
「っていうか、向井さん京都出身だったんですね。あんまり京都っぽくない」
片岡が言うと、そうですね、と鷹明は頷く。
「京都って言っても、だいぶ南の大阪寄りですから…いわゆる、碁盤の目近辺に住んでる人たちは京都人って感じですけど、それ以外は案外普通の田舎民ですよ」
「へー京都人ってみんな無駄にプライドが高くて、京都弁ベラベラしゃべってるイメージでした」
何気に失礼なことを片岡が言っている。まぁ実際そういう京都人もいるので、鷹明は何も言い返さなかった。
鷹明の出身に興味がなくなったのか、女性陣は鷹明から目をそらせる。
「っていうか橘さん、お菓子にもコンポタなんですか?」
「塩っけと甘いお菓子の組み合わせがすごく良いわよ」
「橘さんはなんにでもコンポタ合わせるんですよ」
女性陣がお菓子を囲んで会話に花を咲かせている。なんか平和だなぁと鷹明はぼんやりと思った。
花が咲く中、会社のドアが開いた。開けたのは日野だ。
「おはようございます!」
「おはよう日野さん、向井さんからの差し入れ、日野さんも食べます?」
「雛ちゃんダメよ、日野さんは甘い物嫌いなんだから」
「あ、そうでした」
ハッと目黒が口に手を当て、申し訳なさそうに頭を下げる。
「いいんですよ僕は、それより、仕事の話を聞きに来ました」
「OK。応接間で話しましょうか」
橘がコンポタを飲み干し立ち上がる。
「鷹明君は今回どうするの?」
「え?」
「だいぶ疲れてるみたいだけど、やめとく?」
「いえ…疲れてるなんて」
「向井さん、前にも言いましたけど、休むことも大事な仕事ですよ。今回はパスしてください」
そうしたい気持ちは山々だが…。自分が休んでいる間に、また誰か苦しんでいるかもと思うと…微力かもしれないが、何か出来ることはないのかと思ってしまう。
「…とりあえず、話だけでも聞いていいですか?」
「もちろんよ」
橘がウインクした。
橘が一人でソファに座り、鷹明と日野が並んで座った。日野が持つ資料を鷹明が覗き込む。
「今回の回収者は『真鍋 千鶴』都内の高校に通う17歳よ。学校から帰って自室にいたんだけど、呼んでも部屋から出てこないから、母親が部屋を見に行ったら、いなくなってたらしいわ。スマホも財布もそのままに、ね」
「随分若いですね」
資料の写真の真鍋千鶴は、友達に囲まれた、普通の女子高生、という印象だ。
「学力は標準、人間関係も調べた限りは何もないわね。いじめや家庭内の問題もなし。過去に大きな問題もないわ。徳本さんの調べだから確かな情報ね」
「そういう人が転移することもあるんですね」
「普通の生活を送ってる人が幸せとは限らないわ…むしろこういうパターンは、どんな意志を持って転移したのかわかり辛くて、連れて帰るのが案外大変だったりするのよね」
続けるわよ、と橘が言う。
「彼女のスマホを調べたところ、いくつかアプリゲームをプレイしていたみたいで、そのうちの一つ『VOICE‐ドラゴンの国‐』の世界にいることがわかってる。通称ボイドラ。ドラゴンを育てながら、ダンジョンに挑戦するゲームよ。リリースから1年ほど。とても人気のゲームみたいね。ダンジョン攻略がゲームの主目的だけど、ドラゴンを育てることだけを楽しんでいるユーザーも多いみたい」
「俺もここ数日、ダウンロードして遊んでみましたけど、結構楽しかったですよ」
日野がスマホを取り出し、向井にゲーム画面を見せる。ドラゴンが人と同じ数存在する世界。ドラゴンと共存が当たり前の世界。主人公はそこでドラゴンを卵から育て、ダンジョン攻略を目指してレベルを上げていくゲームだ。リリースされてから1年もたつが、未だにダンジョンの最高位であるステージ100まで達したものはいない。
「ユーザーの誰かひとりでもステージ100に達すると、ユーザー全員にボーナスが支給されるらしんだけど…まぁそれはいいや、橘さん、真鍋千鶴はどれほどゲームをやりこんでたんですか?」
「真鍋千鶴のゲームレベルは、正直言って平均以下ね。最後に更新されたアプリ情報を調べたけど、育ててたドラゴンは能力値が低い。ダンジョンに挑戦した形跡もあったけど、平均では50前後まで行けるんだけど、真鍋千鶴は9で終わってる」
「確かこのゲーム、ダンジョン挑戦に失敗するとドラゴンが死ぬって」
「え?死んじゃうんですか?セーブしてるところに戻るとかじゃなくて?」
「負けは死を意味する。残酷な設定も、人気を博している理由の一つだと言われているわ」
日野がアプリゲームの資料に目を通す。
「プレイヤー名はチヅル…名前そのまま使ってるんですね」
「ゲーマーは自分の名前、そのまま使う人はほとんどいないわ。ゲームレベルから考えても、真鍋千鶴はゲームに関しては素人ね」
遠野道夫はゲームをやり込んでいた。浜村照美は小説を読み込んでいた。どちらも共通して言えることは、なにかの創作にのめりこんでいたということ。今回の真鍋千鶴からは、そんな印象を受けない。
普通の女子高生で、ボイドラにのめり込んでいたわけでもない…彼女はどうして転移したのだろう?
「ドラゴンの名前は“ベガ”か…七夕の星の、織姫だったっけ?」
「よく知ってるわね」
日野が頷き、立ち上がった。
「橘さんありがとうございます。扉は開いてるんですよね?」
「えぇ、もう行くの?」
「はい」
鷹明は一緒考えたが…心を決めた。
「行きます。日野さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、一緒に頑張ろう」
日野が右手を出す。鷹明はその手を強く握った。
二人は入枝が用意した扉から、早々に異世界へと向かう。
鷹明もだいぶ慣れてきたのか、意識が飛ぶこともなくなってきた。異世界に到着したのがわかると、すぐに目を開いた。
しかし驚愕は隠しえない。周りを闊歩するドラゴンの数々を見て、おぉ、と声を上げた。
「すごい…普通の動物みたいにドラゴンが歩いて回ってる」
「急ごうか、とりあえず、あそこを目指そう」
あそこ、と言って日野が指さしたのは、天にも届きそうな高い塔。
「あれがダンジョンですか?」
「おそらく、ボイドラの世界にいる限り、あのダンジョンに挑戦してる可能性が高い。闇雲に聞いて周るより、とりあえずあそこに行くのが賢明だと思う」
「そうですね、行きましょう」
二人は早足にダンジョンへと向かった。
ダンジョンへは数時間歩いてようやく到着する。ダンジョンの前には門兵が二人立っている。
「なんだお前たち、ドラゴンも連れずに、このダンジョンに何の用だ?」
「僕たちは異世界から来ました。同じく異世界から来た人を探しています」
え、と鷹明は硬直する。そんな…直球に言って大丈夫なの???東谷も片岡も、変装したり話す内容を工夫して怪しまれないようにしていたが…え?え?と鷹明は困惑する。
「異世界とはどういうことだ?わけがわからんぞ」
そう言って、門兵は顔をしかめる。当たり前だ。急に異世界から来ましたって言われたら、意味が分からない。
「とりあえず人を探しています。チヅルという少女の名に覚えはありませんか?」
「チヅル…」
門兵は腰につけていたリストを見る。教えてくれるんだ…意外と親切だ。
「8ヵ月ほど前に、ベガというドラゴンとこのダンジョンに挑んでいる。まだ死亡確認が出来ていないから、まだ挑戦中なんじゃないのか?」
教えてくれるならいいのだが…。チヅルという名前、ベガと言うドラゴン。少女が真鍋千鶴で間違いなさそうだ。
「僕たちはその子に会いたいんですが、ここを通してもらえませんか?」
また直球過ぎる。
「別に構わんが」
いいんだ!
「君たちの生死は保証しない。ドラゴンもなしに挑戦するとは、ダンジョン挑戦の歴史以来、初めてかもしれんな」
つまり、このダンジョン挑戦に条件はないと…なら門兵いらなくない?
「まぁ、せいぜい頑張ってきたまえ」
門兵二人が道を開ける。日野はありがとう、と言って、堂々とダンジョンの入口へ向かった。鷹明もそれに続く。
このまま中に入るのか、と思ったが、日野は中には入らず、外周をじっくり見ながら歩いた。
「日野さん、何してるんですか?」
「僕たちがダンジョンに挑戦する必要はない。あくまで真鍋千鶴の回収が目的だからね、ダンジョンに挑戦せず、上へ行く道はないか探してるんだよ」
なるほど、日野も考えなしに行動しているわけではないらしい。それにしても、この人といるの心臓に悪い。
「日野さん、なんかすごいですね…ストレートすぎるというか…」
「人間、嘘つかず素直にいる方が、案外やりやすかったりするものだよ」
まだ日野と過ごして数時間だが、東谷とも片岡とも違うケースの進め方だ。3人の中で一番独特な気がする。なんというか、異世界に全く馴染もうとしていない。これも回収者を探すための、一つの手段なのだろうか?
一周ぐるりと回ったが、入り口以外に上へ登れる手段はなさそうだ。日野の指示で、一度ダンジョンから離れ、元居た街に戻った。他に上へ行く手段がないか探すためだ。
ダンジョンはかなり高い。よじ登るのはまず不可能だ。ならば飛ぶ手段…例えば飛行機とか気球。しかしこれも存在しない世界だった。
「やっぱり入り口から入ってダンジョンをクリアしていくしかなんですかね」
「いや、それじゃ間に合わない。真鍋千鶴がダンジョンに挑戦してからもう8ヵ月も経ってる。僕の推測だと、おそらく彼女はダンジョンクリア目前まで行ってるんじゃないかな?」
「どうしてそう思うんですか?」
「真鍋千鶴は召喚前と合わせて今回が2回目の挑戦となる。当然前回よりドラゴンのレベルを上げてるだろうし、ダンジョン攻略も考えて挑戦しているだろう。ボイドラのこと、ここに来る前に少し調べたんだけど、ヘビーユーザーが78段までクリアするのに、約半年かかってるらしい。今の真鍋千鶴なら、同じく…あるいはそれ以上のスピードでダンジョンを攻略していると考えて、まず間違いないと思う」
「なるほど…そう考えると、確かに、もう攻略してもおかしくない頃ですね」
「だから今から僕たちがドラゴンを育てて、ダンジョンを攻略している時間はないんだ…あった、ここだ」
日野が探していたらしい、骨董品屋に入る。
いらっしゃい、という店主の声に、こんにちは、と日野が答える。
「単刀直入にお伺いします。この店に、ドラゴンを空へ飛ばすアイテムはありますか?」
本当に単刀直入である。鷹明はなぜか胸を一突きされた気分になる。
「ほぉ…お客さん、その情報をどこから?」
店主がニヤリと笑う。
「直観です。そういうのあるんじゃないかなって」
「あんた面白いね」
へへ、と笑いながら、店主がカウンターの下から、何か出した。
「ドラゴンの翼の骨さ。相性が良ければ、これを使えば飛ぶことが出来る」
「ありがとうございます。お代は?」
「昨今、ドラゴンを飛ばせようなんて野暮なこと考えるの、あんたしかいないよ、これは粗悪品さ。持ってきな」
日野は再び、ありがとうございます、と店主に頭を下げ、店を出た。
店を出て、二人はゆっくりと歩道を歩いている。
「日野さんすごいですね、なんでこんなアイテムがあるってわかったんですか?」
「ボイドラのアプリアイコンのイラスト、ドラゴンに翼が生えてるんだ。だけど、今のドラゴンには飛行能力はない。はるか昔はあったけど、今はなくなったって設定らしい。だからダンジョンクリア得点が、ドラゴンの飛行能力の会得とか、飛行能力を得られる隠しアイテムがあるんじゃないかとか、SMSで噂になってるんだ。僕は、その後者にかけてみた」
すごい…引き運がいい…。この運の良さも、日野の特徴だろうか?
「さて、アイテムを見つけたのはいいけど、今度はドラゴン探しだな…僕らを背に乗せて飛べるドラゴンがいいから、すでに成長しきったドラゴンがいいな…そういうのは高値で取引されてるみたいだけど、さてどうしたものか」
もちろん、自分たちにはこの世界の硬貨など一銭も持っていない。
「じゃあ、買うんじゃなくて、借りるのはどうですか?」
鷹明は日野に提案する。日野が立ち止まり、目を見開きながら鷹明を見る。
「すごい!それすごい名案だよ!」
鷹明の肩をもって褒める。すごいすごいとめっちゃ褒める。痛いけど、なんか嬉しい。
「このアイテムを渡す条件に、ダンジョンの上まで飛んでもらう…そうしよう!よし、さっそく交渉相手を探そう!街にはたしかユーザー同士のコミュニティ広場があったはずだ!そこに行こう!」
日野が走り出す、向井もそれを追った。
「いいよぉ、それ、くれるなら」
12人目に声を掛けて、ようやく承諾を得られた。
「ダンジョン興味なかったけど、アイテム収集は好きなんだよねぇ。これすごいレアアイテムだしぃ」
オレンジ色のドラゴンを連れた男は、のほほんと答えた。この人大丈夫かな…。
「決行は明日でいいかなぁ?」
「もちろん。ご協力いただけるならそちらの都合にあわせます」
「じゃあ明日、朝、ダンジョン前に集合でぇ」
言って、男はドラゴンと共に家へと帰っていった。
もちろん、鷹明と日野が大の字で寝られれるところなどない。いつかこんな日がくると覚悟していたが…人生初の野宿だ。村から少し離れた草むらに、鷹明と日野は寝転んだ。
荷台に揺られながら寝るのもきつかったが、これはこれできつい。地面は硬いし、草が肌に触れるとかゆいし、寒いし、腹が減った。
はい、と日野が鷹明の目の間に何か差し出した。
「バランス栄養食。向井君も食べな」
「いいんですか?」
「急に来ることになったんだ。何も持ってきてないだろ?」
「じゃあ、いただきます」
鷹明は寝そべりながら、バランス栄養食の封を開けて口に含んだ。その隣で、日野も食べ始める。
「どうだいこの仕事?辛いかい?」
「…そうですね、そう思うことばかりですね」
遠野も、浜村も、苦悶の表情を浮かべていた。その顔が忘れられない。
「実はね、俺の弟もHOMEで探してもらったことがあったんだ」
「え?」
突然の日野の告白に、鷹明は驚き、目を見開きながら日野を見た。
「弟は見つかったんだけど、帰ってこなかった…帰りたくないって、帰るくらいならこの世界でも死ぬって」
「そんな…」
「弟は、家族思いで、普通の優しい子だった。だから信じられないくて…2度目の調査を頼んだ。その時、無理を言って俺も連れて行ってもらった。弟は俺たち家族を見捨てるような奴じゃないって信じてた…でも、弟は戻らなかった。俺の顔を見た途端、激しく怒りだして…二度と顔を見せるな、帰れって…。俺から見て弟は、何不自由なく、家族にも恵まれて、幸せに生きているように見えた…だけど俺が知らない間に、きっとひどく傷つけられたりしてたんだと思う」
何も言えなかった。返す言葉が見つからなかった。
「だから、弟の二の舞を出さないために、俺はここで働き始めた…。頑張ってるけど、連れて帰らない人もやっぱりいる。だからさ、東谷さんって本当にすごいんだ。あの人、この仕事始めてから、連れ戻せなかった人、一人もいないんだ。俺も、東谷さんみたいに、回収者を、みんな元の世界に連れ戻したい」
日野が目を輝かせながら言う。
鷹明は、少し恐怖を覚えた。元の世界に帰ることがすべてではない。それは浜村照美のケースで学んだ。日野は、鷹明よりも多くのケースを経験してきたというのに…日野は弟が帰らないという経験をしたのに…。この人は、【回収者】のことなんて考えてない。【依頼者】やその他周りの人間のことを考えているんだ。
「ん?なんだ向井君?俺のこと凝視して」
「い、いえ、なんでも」
目をそらした。こういう人もいるんだ…。これも、間違いではない、のだ。自分の心が日野の言葉を否定しても、責めることなど、到底できない。
日野が夜空に目を向ける。
「真鍋千鶴も、普通の女子高生にみえるけど、きっと傷を抱えてる。誰にも気づいてもらえないけど…けどそれも、元の世界に戻ればなんとかなる。周りの人が彼女に手を差し伸べてくれるはずだよ」
鷹明は日野に背を向け、体を丸めた。そうしてくれる人がいたなら、真鍋千鶴はこの世界に転移しなかったと思う。どれだけ周りに優しい人がいても、救われないときもある。日野は、それを知らないのだ。
本当にこの人は、真鍋千鶴を救えるのだろうか。鷹明の胸に不安がよぎった。
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